再開発の兆し
やがてゴブリンたちは村に人口がないことに気が付いた。
だからこそ、こんな無茶が通ったのだ。同時にいろんな疑問が首をもたげてくる。
ゴブリンたちは”この奇妙な領地”に留まることは果たして安全なのか計りかねていた。
リーダーのトリルもゴブリンの衆が考えている事には共感できる。
”あの大量のスケルトンはどこからやって来たのだろう?”
”何故、この村には誰もいないのだろう?”
だが冬越えを考えたら、もうすぐにでも支度をしないと凍死者を出してしまう。
この地方の冬は長く厳しい、トリルはこの問題に対して悩みに悩んだ末に決断を下した。
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「マオ様、村の使用されていない畑なのですが我々に貸していただくことは出来ませんか?」
「うん、それはわたしからお願いしようとしていたところよ」
「それで、税の方なのですが⋯⋯⋯」
「今年は納めるのは無理でしょう、収穫のいくらかを上納するだけでいいわよ」
「それは助かりますが⋯⋯⋯それでよろしいのですか?」
「何が?」
「いえ、マオ様がそれでいいのならこちらは何もありませんが」
麻央は執務室から退室するトリムを怪訝な顔で見送る。
脇にいる彼女だけにしか見えない従者に声をかける。
「なあ、コンヒューマ。あいつは税を安くすると言われてなんでそんなにうれしそうじゃなかったんだ?」
「マオ様、彼らは貴女のメリットが見えてこないから不安なのですよ。この村にはスケルトンばかり自分たちも同じようにされるのではないか、と不安になっているのでしょう」
「つまりわたしは信用されていないという事なの?」
「いきなり”よその人間を信用しろ”という方が無理な話です」
「税を取れば信用してもらえるものなのか? そんなに作物を貰っても腐らせるだけで意味がないし」
「まぁ、それはおいおい考えるとしましょう」
「う~ん統治という物は良くわからないわね」
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ゴブリンたちは冬ごもりのため出来るだけ村の再建を始める。具体的には農耕の再開だ。
木を切り倒し、その根を掘り返すという最も重労働の部分はすでにスケルトン達が済ましているので、土を耕し畝をたて種を捲くだけで良い。
重労働はスケルトンが行うので長旅で消耗しているゴブリンたちでも問題なく行うことが出来る。
彼が植えるのはジャガイモとビートというカブに似た野菜だ。
ビートは味がよくなく家畜に喰わすような物だが確実な収穫が見込めるので植えているそうだ。
ジャガイモとビートは冬が来る前に収穫できるそうだ。
しかし、考えるまでもなくこの村単体で生活をしてゆくにはかなり苦労が多い。
第一に海に面しておらず岩塩の採掘も期待できない現状では絶望的に塩が不足している。
このような山塊では塩分などのミネラルはそれらが含まれている岩や土を舐めるか、動物から摂取するしかない。しかし当然ながらそれでも不足しがちなものだ。
手空きのゴブリンたちは森に分け入り狩猟や採取によって当面の食糧を賄うつもりらしい。
元々、山で狩りをしたりしていたのでそれなりに弓の扱いもうまいようだ。
ゴブリンの一人が一頭の鹿を仕留めてきた。
「久しぶりの獲物だ、早速解体しよう」
「待て、周辺の森は領主であるマオ様の物でないのか?」
「しかし、毛皮で防寒着も作りたいしもう3日は何も食べていないぞ」
「少し待て、マオ様に確認をとってくる」
トリムは底の知れない不気味さをマオに感じているものの、単純な暴虐加減ではかなり穏健な人間だと辺りを付け始めている。
そして思った通り彼女は獲物の一部を上納するだけで毛皮を自分たちで利用することを許してくれた。
かなりグダリが厳しい感じなので次回少々ご都合主義を発揮します