絶望の攻城戦 前編
長くなりそうなので二部に分けて投稿します。
マオはペラの町からスレイジの軍勢を見下ろす。
一見すると我々が包囲され不利な状況に置かれている様に見える。
しかし実態は全く違う。
我々はファンダーズやシュガーローフなどの生産拠点からすぐに物資を補給できるのに対しスレイジ軍は
この山だらけの丘陵地帯を馬車を押してやっと軍団の食糧、飼葉、武器弾薬を補給できるのだ。
馬車と言えば、こちらの輸送手段は馬車よりも大量に効率よく輸送できる。
豊富な鉄材を使用した蒸気機関による鉄道輸送。馬車などとは文字通り桁の違う輸送手段である。
輸送手段の格差はそれそのまま戦場に投下できる火力の差となる。
6千VS最小6万、1人あたり10人のキルレート。
剣と弓の時代なら驚異的なキルレートであろう。
だが、硝煙と鉛玉の時代には別に驚異でも何でもない日常的なキルレートだ。
当たり前に勝つといったのは間違いではない。
彼らにどれだけ突撃精神があるか見せてもらうか。
ガッツがあれば防衛線のいくつかは突破できるかもしれんぞ。
―――突破できるだけだがな。
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スレイジ公からの命令はファウンダーズを包囲してクルルベラへの増援を阻止することだ。
だができるなら占領しろとも考えているはずだ。これまで対帝国で活躍してきた。息子のバール様を呼び戻しこの戦に従軍させたのもそのためだろう。
目の前の都市を陥とすのは容易いことではない。
鉱山都市ペラ、見たところあの町に城壁は築かれていないようだが。
部下に偵察させたところ町の周囲を囲むように奇妙な柵が作られているらしい⋯⋯⋯
あの国は大量の鉄材を輸出している、とんでもない工業力だ。どんな仕掛けがあるか分かったものではない。だが町自体は包囲すれば簡単に陥落しそうではある⋯
何とか補給路を維持してはいるが、あまり長く持たすのは難しそうだ。
この周囲の村落から食料を徴集しながらの戦争になるだろう。
この戦いは都市攻略などという代物ではない。
ファウンダーズ攻略のため目の前に立ち塞がるペラという城門を崩すための戦いなのだ。
部下に命じて部隊の展開と攻城兵器の組み立てを行わせる。
従来のカタパルトやバリスタの他に大型の平衡錘投石機。
そして新型の攻城兵器がある。
兵数ではこちらが上なのだ。
攻城兵器の支援を受けながら前進すれば勝てるだろう。
バールの副官をしてだいぶたつが彼の目から見てこの戦場は奇妙奇天烈なモノであった。
防衛の常道である柵がある。しかしそれ以外の一切が見当たらない。敵兵の侵入を跳ね返す防壁も掘りも見当たらない。ただ奇妙な柵と何やら椀を返したような巨大な物体が斜面にポツポツ見えるだけだ。
単に敵は戦のイロハも知らん阿呆。そう切り捨てれば楽になるのだが⋯⋯⋯
長年の戦働きがこの戦場の形には敵の意志が明確に存在していることを彼に知らせていた。
狡猾な狼が馬鹿な人間を罠にかけようとしているような感じだ。
副官が嫌な予感を振り払うように頭を振っていると大将であるバールが近づいてくる。
「よお、お前はどう思う。この敵の陣形を」
「あっこれはバール様。まあ正直、嫌な予感しかしませんね」
「だいたい、敵はどのぐらいいるんです? ここからでは何も見えない。敵の部隊の旗も見えませんがそこに部隊がいないと考えてもいいんですか?」
マオの陣営のところどころに旗は見えるが、防衛線内に掲げられた旗は少ない。
軍隊の進軍と指揮において旗は何より重要だ。
合戦の怒号と混乱の中で兵士はただ太鼓の音に従い自分の部隊の旗を目指して進軍するからだ。
よく、『隊旗を絶対に土につけない』だとか『重傷を負いながらも隊旗を死守した』という話があるが、それは単なるお涙頂戴や根性論的な話ではなく、それなりに意味がある事柄なのである。
ともあれマオの陣営には旗の数はとても少ない。
それで二人はどうやって指揮を執っているのか不審に思っているのだ。
「敵の大将は小娘らしいが魔法使いらしいぞ」
「魔法使いですか? あんな火種の代わりにしかならんものがどうしたのです?」
「まあ、これも噂だが死霊術を使うらしい」
「といっても最高でもスケルトンが精々でしょう? そんなモノ恐れる必要もない」
「確かにな。だがピュースが戦い敗北したそうだ」
「ヤツは無能でしたからね。だがヤツ自身はともかく奴の兵は精兵だった。気合入れていくとしますか」
6万の軍勢が一度に攻撃を仕掛けられるような広さはペラ周囲にはない。
そこで副官は3万の軍で敵の陣営に攻撃を加えて様子を見て、決定的な場所に残りの部隊を投入することに決めた。
「お前ら敵は怪しげな武器を使うが気にすることはねえ! 敵の攻撃は鈍重そのものだ、前の奴がくたばったら後ろの奴が突っ込んでとどめを刺せ!」
「ああ、そういえばバール様はペラを陥としたなら3日間好きにして良いと言っていたぞ!!」
「ウヲオオオ! さすがバール様!! 話が分かる!!!」
「突撃!!」
こうしてのちに『血染めの丘』、『マオの骨肉粉砕機』と呼ばれる凄惨な防衛線が始まった。
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スレイジ軍がペラ防衛線に攻撃を開始してから数刻が過ぎようとしている。
まだ戦闘は始まったばかりだが、副官は張り巡らされた有刺鉄線の生垣に苦慮していた。
コイル状に巻かれた鉄線は容易く触れるものを絡め取り、兵士をただの的に変貌させた。
ジグザクに張り巡らされた作りは多くの兵士を絡め取り斜線を一線にまとめ多くを効率的に殺せるように作られれたものだった。
「これは⋯⋯中々に悪辣ですな」
副官は呻く、兵達は皆地に這いつくばり弓や敵から奪ったマスケット銃で攻撃したが、塹壕の中から攻撃してくる敵に対して効果が薄いのは明らかだった。
双方のマスケットライフルの銃火と白煙で戦場が霧にでも飲まれたように白く染まる。
敵の銃兵は練度が高いのかやけに命中率が高い、騎兵も馬を降りて地に伏せながら弓で応射している。
だが、希望はある。敵の反撃はどの戦線でも同じぐらいの物だった。
どこかが突破に成功すれば城壁もない場所だ一気に押しつぶすことが可能である。
既に日も陰っている。初日の攻撃としては上等である。
はじめからこんな攻撃で落とせるなどとは考えていない。
攻城戦は防衛と攻撃の頭脳と精神力の戦いである。
敵がアホのように出てきて勝ったり、都合の良い裏道が無警戒に解放されているなどナイのである。
明日からが本格的な戦闘になるだろう。
バール様には残念だが、この戦いで騎馬の活躍はないと思われる。
剣兵や槍兵も可能な限り飛び道具に兵装させた方が良いかもしれない、精度の面では役に立たないかもしれないが数を揃えれば敵に圧力を加えることもできるだろう。
「あの鉄の棘はどう攻略する?」
「はい、あの鉄線の柵は通常の木の柵より厄介ではありますが上に厚手の布を敷くなどして突破は可能であると思われます」
「そうか⋯⋯全ては明日だな」
スレイジ軍の陣営には工兵が時を惜しんで築き続けた攻城兵器群がある。
カタパルト、バリスタに平衡錘投石機。
そして鈍色に光る鉄でできた猛牛がいた。
(゜∀。)y─┛ ついに始まった、スレイジ軍VSファウンダーズ! 戦列戦をする前に一次大戦に突入しちゃったが⋯⋯⋯気にするな!




