そのカラクリ人形は⋯⋯⋯
展示会に出す出し物は決まった。
しかし問題がある。”あれは”確かに”そうなの”だが以外にしっかりした代物なのだ。
鍛冶長と大工長、ファウンダーズ最高の技術者を巻き込んで”それ”の設計図を作り上げてゆく。
はじめ二人はその機械の目的を聞いたとき、『出来るわけがない、そんなものは神話にすらない』と言ったが、わたしが出来る理由を語ると難渋を示しながら『それなら⋯⋯できるか?』と言った。
求められる特性は、人が分解しなくても運べるサイズである事、恐ろしく趣向を凝らして見えるカラクリの構造。そしてそれらが完全に動作することも重要だが。
一番重要なのは、インパクトだ。
「人形のデザインは骸骨なんてどうですか。だれもスケルトンがそんな事をできるとは思わないですし」
「う~んいいけど。本当にスケルトンだと思われて叩き壊されない? カラクリで売り出す以上”賢いスケルトン”ではなく”スゴイからくり”だと思わせたいじゃん」
「はは、流石にスケルトンと骸骨の人形を間違える粗忽ものはいませんよ」
「よし、それじゃあデザインはスケルトンにしよう」
「動作パターンはどうする?」
「周囲の機械は何かに使えないか?」
設計が固まり製作に向かって進み、三人はカラクリを作るというより何か悪だくみでもするように闇夜の中”それ”を作り上げてゆく。
『カラクリ製作中! 関係者以外立ち入り禁止!!』と書かれた部屋の前にシオンがいる。
彼女は製作関係者ではないので中に入ることが出来ないのだ。
今夜マオに呼ばれたのに部屋に来ないので、最近入り浸っているこの部屋にやって来たのだがノックしても
誰もいないようだ。
「むう~それにしてものけ者にされているようで面白くありませんわね」
扉に手をかけると鍵がかかっていない。
「あら?」
中に入っても大丈夫ですわよね? うん、これはマオさんを探すために仕方なく入るんですわ。
「中に入りますわよ~」
などと自分に言い訳してカラクリ製作室に入ると、天井から光が差す場所に机がありそれに一体化するように誰かが座っていた。机はガラス張りで中にある精巧な作りの歯車やクランクの集合体が良く見える。
あれがだすカラクリですの? もう完成しているのかしら?
正面に回るとそれは着飾った骸骨だった。
「ひっ⋯⋯いやこれはただの人形ですわね。まったくマオさんも趣味が悪いですわ」
死体との違いは直観的にわかるし、スケルトンを見ると死者が動いているという違和感を嫌でも感じる。
マオさんの前では言わないが正直、死霊術が自体好きではない。
だが”これ”はただの人形だ。骸骨をモチーフにするのは結構有るがやはり悪趣味と捉えられるのが普通だ。
しかしこの人形は海賊のような恰好をして、どこかコミカルな作りをしている。
人形がシオンの存在を認めたのか、オーバーアクションな動きで挨拶するように動き机に置かれているものを指し示す。
そこにおいてある物。それはチェス盤と一そろいの駒だ。
人形はシオンに席に着くように動きで急かす。
「ふふ、なるほど。チェスを指す人形ですの」
紙に字を書く人形などが昔あったと聞く、それと同じようにチェスを指す真似事が出来るという事だろう。
※10分後
「あっあり得ませんわ⋯⋯人形に負けるなんて⋯⋯」
人形は恐ろしく強く、ベネクではそれなりに強かったシオンを簡単にあしらってみせた。
チェス指し人形は余裕の動きで肩をすくめてみせる。
「ぐぬぬ。もう一局! もう一局ですわ!! ひゃあ!!」
いきなり後ろから誰かに抱き着かれて、思わず声が出てしまう。
「シ~オ~ン、この部屋に入っちゃダメって言ってたでしょ」
「いや、それはマオさんい呼ばれたからで⋯⋯⋯ずっと気になっていたので思わず入っちゃいました! すみません」
「素直でよろしい。それで対戦した感想はどうだった?」
「いや、この人形は一体どうなっているんですの? どんなカラクリで動いているんですの!?」
「フフフ、それほど驚いてもらってもらうと苦労した甲斐があるってものよ」
「それで一体どんなカラクリですの?」
マオは大きく息を吸うと、セールスマンが自慢の商品を説明でもするように大きな声で言った。
「コイツは何と! 歴史上はじめて登場する! 考える機械なのよ!!!」
それをきいてシオンはしばらく考える。コンピューターなどといった高度な機械を知らない人間が物が自分の意志を持つが如く発言を消化するのは難しい。理解には数分を要した。
「それはつまり、この人形がチェスの駒を見て、私の手を見てどう打てば良いか考えて対局したというのですの?」
「その通り!」
この時代の人間にとってチェスの対戦AIなど想像することも出来ないだろうが、現代知識があって優秀な技術スタッフを抱えるわたしにとって、この程度チャメシインシデントである⋯⋯⋯メッチャ苦労した。
「それでこのカラクリは完成ですの?」
「う~んもう少し信頼性を高めなければいけないし、もう一工夫がいるかな?」




