マカイの統治問題
マカイ連王国の聖都レンダック。
スレイジ公が治めるヘルグラードの西、大陸の中央に位置する遥か昔から存在する古都だ。
マカイの正式の支配者である、魔王クルルベラの居城がある場所なのだ。
”魔王”という称号は魔族にとって特別な意味を持つ。
遥か昔、神話の時代の英雄の系譜でその権威のもつ強さは計り知れない。
だからこそマカイ最強のスレイジ公はクルルベラを殺さずにおき聖都の運営を実質支配することで、自分に有利な勅命を出す様に仕向けているのだ。実際にはマカイで発される命令全てがスレイジの意向に従って発せられているののは暗黙の了解ではある。
ぶっちゃけるとマカイの貴族たちは魔王も含めて”紳士的な野生児”であるスレイジなんて味方だと思っていないし、まして自分たちと同じ貴族だなんて思っていないわけだ。でも帝国との戦いでスレイジの戦力は欲しいといういささか都合のよい悩みをマカイの諸侯は抱えていた。
そんな中、マオは聖都レンダックを進んでいた。
貴族たちの晩餐会というより、からくり好きの魔王が催す商品見本市というか。
からくりの展示会があるのだ。それに倣って貴族たちが定期的に同じような催しをしている。
将を射んとするならまず馬というが、マカイという国は馬が暴走状態の国なのだ。
将を強くして、鶴の一声でケリをつける方がよろしい。
しかし、馬の手の者が将に余計な虫が付かないように神経をとがらせている。
表の外交ルートでは無理なので、直談判同然に一気に関係を持とうという訳だ。
幸い、魔王クルルベラはカラクリ展示会に足しげく通っているらしい。
展示の席にレガリアの名義でカラクリを展示して目に留まれば急接近のチャンスだ。
だが、問題は何を展示するかだ。
来て気付いたのだが、カラクリ技術に関しては江戸時代と遜色のない物がいくつか展示されているのだ。
茶飲み人形やら、茶運び人形なんて精巧な作りの物まである。
単純にスゴイ機械を展示しても、見る人が分からなければあまり意味はない。
今回釣り上げる鯛は自身で展示会を催すほどのカラクリ狂いである。強烈なインパクトが必要なのだ。
悩むマオを尻目についてき来たシオンは展示会を堪能しているようだ。
「おおう、マオさん。この展示会はやはりいつも盛況ですわね。マカイの人の細工にかける情熱には感じいる者が有りますわ」
「シオンさん。ずいぶん楽しんでいるようだけど、ここで魔王さまの目に留まる物を出せないとファウンダーズにとってプラスにならないのよ」
「まあまあ、落ち着いて。最悪レンダックでの販路獲得は可能ですし、何やかんや魔王さまですもの、スレイジ公も見張りの人間を用意してますし気に入られても一筋縄ではいきませんわよ」
む~、またハードルが高くなった気がする。
つまり、うまく魔王さまに取り入ってもすぐにスレイジ公にバレるわけだ。
そしたら間違いなくまた文句を言ってくるだろう『マカイ中央と関係を持つな。OK?』って具合だ。
仲良くなるにしてもバレないように魔王さまに接近しなければいけないわけだ。
最悪、接近がばれても知られないように密会しなければいけない。
流石に魔王さまの居室まで見張りの者はいないらしいので、そこまで気づかれずに接近する方法を見つけなければいけない。という訳だ。
もううまく行ったらダンボールでも被って王城に潜入するか?
あのゲームでも007みたいに皆殺しにしてるしな~、わたしではダンボールがランボールになるだけだ。
悩んでいるわたしに気を利かせたのかシオンがチェスを持ってくる。
この世界でもチェスのルールは殆ど変わらない、といってもわたしは前の世界でやった事など殆どないが。
この体になってから持ち主がチェス狂いだったのかゲーム全般が恐ろしく強くなっている。
前に大富豪したときも誰が何を持っているかだいたい分かったしどう動けばよいか直観的に分かった。
シオンには悪いが考え事をしながらでもシオンの相手をすることが出来る。
カラクリ、カラクリ⋯⋯⋯誰も思いつかない、それでいて複雑すぎない代物⋯⋯
いや違う、構造が複雑でもいい目的が単純でれば⋯⋯
うまく行ったときに王城に潜入する用意も必要。
魔王様に潜入を手伝ってもらうぐらいはできるか?
気付いた時にはシオンは詰んでいてわたしは勝っていた。名案は浮かばず。
「むう、やっぱマオさんは強いですわね。考え事をしてる時なら勝てると思ったのですけど⋯⋯」
悔しそうにしているシオンをみて何となく聞いてみた。
「そういえばクルルベラ様はチェスは得意なのかな?」
「かなり強いらしいですわよ。結構の高齢と聞きますし遊戯に餓えておられるらしいですわ」
「ふ~ん」
チェス、カラクリ、人形、ダンボール⋯⋯⋯
その瞬間、この問題にピッタリのモノが思い浮かんだ。
まさに天啓だ、ピッタリのものをわたしはしっていた。
それ一台でこの問題の全てが解決するのだ。
「ありがとう、シオン、早速準備しなければいけないわ!」




