新都市ファウンダーズ
各種工場地帯とそれに直結した巨大な港湾を持つ新都市が完成した。
名前はファウンダーズと名付けた。鋳造者という意味だ。
この町はペラから運ばれる反熱石を用いて鉱物を大量に加工、精製し港で売却することが出来る。
新しい製鉄所の製鉄量は一日あたり10tもの生産量に達している。もはや国内の鉄需要を賄う事など楽勝で可能なのだ。この重くて高額な鉄という資産を売却して金に換えたいものだ。
これだけの鉄を金に換えることが出来たらならどれだけの稼ぎになるのか?
考えただけでウホッ 笑いが止まりませんな
「マオさん⋯⋯⋯それは無理ですわ」
「え~シオン。鉄だよ鉄。鋼鉄もこんなに、これらを他の国売りつけたらどうなっちゃうわけ?」
「⋯⋯⋯マオさん忘れてるのかもしれませんが今うちにある船はあれだけですわよ」
でかい港に泊まっているのはこじんまりとした小型商船が4隻。
以前の湖の港なら気にならなかったがこの新しい港においては完全に漁船である。
一応ベネクの造船所に頼んで大型の船を注文して言るがそれが届くのは3か月ほど後になる。
「⋯⋯コノ船デハ無理デスカ?」
「答えがわかっている質問に答える趣味は有りませんわ」
チキショーメ! 工業が発展しても海運が発達しないと全体の力は上がらんのか!!
即急に新し運搬手段を確立する必要があるのに一から作るとなるととんでもない時間がかかる。
陸での輸送は論外、しかし売らなければ単なる在庫で倉庫の肥やしになるだけ⋯⋯⋯どうしたものか?
その時、圧倒的なひらめきが脳裏に浮かびあがる。餅は餅屋に頼べばいいのだ!
「そうだ! シオンパパに丸投げしよう!!」
「父にですか? いやしかし父でもこれだけの量の捌くのは並大抵ではないですわよ」
「大丈夫大丈夫、商人が絶対に儲かる商談から逃げるわけないって。もうすぐ来るからその時、押し付けてしまおう」
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新都市に作った新たな屋敷でマオ、シオン、鍛冶長、大工長がカードに興じている。
「これで、ウィ~ン」
マオは四枚ぞろいのカードを場に放り、大富豪の玉座を守った。
Kペアの後に起こった革命騒ぎに皆の衆は騒然となる。
「はあ? マオさん、それはあんまりですわ~! だいたい大富豪が革命を起こすなんてあってはいけないことですわ」
「何をおっしゃるシオンさん。大富豪たるもの下々の望みは叶えてやらねばならんのですよ」
一番は諦めて後半で巻き返しを狙って強いカードを保持していたシオンが一番割を喰ったようだ。
それでも何とか平民でとどまるあたりさすがである。
「マオ様、アンドリュー・レガリア様が来られたようです」
「そのまま通してあげて」
新しい執務室は相も変わらずあまり物が置かれていない、どうにも金やら銀を置いてもしっくりこないのだ。壁には一面、新型の銃火器類が掛けられていてゲリラのアジトめいた雰囲気だが、高級感を感じさせる造りの大きな執務机の雰囲気と全くあっていない。
少し広々とした応接用の椅子にアンドリュー・レガリアは腰を下ろす。
マオとアンドリューの二人にゴブリンが2人の間行きかい茶を出す。
こじんまりとしたカップに琥珀色の液体がなみなみと注がれ湯気が立つ。
「やあ、マオ君久しぶりだね。シオン⋯⋯君はしっかりやっているかね?」
「こちらこそお久しぶりです。ちゃんとわたしの右腕として頑張ってくれていますよ。それよりどうです新しい町は?」
「それはよかった。港の事だね。⋯ああ驚いたとも、あんな巨大な港を造ってどうするつもりなんだい?」
「ペラの良質な鉱物で製鉄に精を出したのですけれどいささか作り過ぎてしまいましてね。それを運び出すための港が必要になったのですわ。もちろん砂糖の輸出も続けて行えますので安心してくださいな」
「ふ~ん、それで今はどのぐらいの生産量何だい?」
シオンパパは興味なさげにカップの紅茶を口に運び紅茶を口に含む。
実際問題、彼にとって鉄の製造など文字通り金を失うだけの事業で採算が取れる物とは考えていない。
どの国もそんなに大量に作れるものでないので大量に輸出できる国などないのだ。商人にとっては手間がかかる割に美味しくない商品である。
「鋼鉄を日産10tです」
動きが止まり、しばしの静寂の後にシオンパパは、ゴクリと喉を動かし口の中の紅茶を飲み干した。
日産10t、それも鋼鉄を、あり得ない数字だ。最も効率的な時でも一日に1tの粗鉄を作り出せばよい方だ。
鋼鉄を作るのにどれだけの手間がかかるか分かったものじゃない。それなのに鋼鉄を10t?
あり得ない。あり得ない以上、聞き間違いだ。やれやれ海の人間がこの程度の船旅で疲れを出すとは⋯⋯
「すまない、良く聞こえなかった。ああ鉄を月産10tか。それはスゴクがんばったね」
「いえ鋼鉄を日産10tです」
「はっはっはっは、マオ君、マオ君、半分個人的な時間とは言えあんまり冗談を言うものではないよ。勝手に本気にして履行を求めてくる輩がいるからね」
「いえ、本当の事です、本気です、マジです」
「ははは⋯⋯⋯マジなのかね?」
鋼鉄10t⋯⋯それを捌くことが出来ればどれだけの⋯⋯だが⋯⋯
しかしこれは⋯⋯
「ですが困ったことがありましてね」
「それは何だい?」
「それらを運び出す船がないのですよ。これから更に色々増産してゆこうと思っているのに」
運送のお願いだろうか? だが、この声音、前にもあった。
この娘は恐らく相手に過大な要求をしていると思ったときにどこか嗜虐的な響きを持つのだろう。
「商人として、これだけの儲けの可能性が目の前に転がっているのに手を出さない選択肢はないよ。君の要求は何だい? 言ってみたまえ」
「では⋯⋯⋯レガリアさん、ベネクから活動の拠点をこのファウンダーズに移して貰えませんか?」
「む、それはどういう意味なのだろうか? ベネク商人は皆そうだが商人として行動するだけで政治には興味がないんだ。まあベネクに愛着ぐらいはあるかもしれないが」
「では、主たる活動拠点をこちらに移してもらえるのですか。大丈夫ですあなたが不満に思わない世に港湾施設は整備しますし、商品もしっかり生産させてもらいますわ」
アンドリューは一瞬だけ思考し、意地わるげに提案する。
「よく考えると厳しい条件に思えてきたな。この領地における商品の取り扱いは独占販売でもいいかね?」
「独占はダメですけど、寡占⋯⋯購入優先権ぐらいは差し上げても良いと考えています」
「まあ、それで我慢するとしましょうか」
2人は手を握り合い、将来の発展を約束し合った。
シオンパパはベネク共和国に愛着は有りますが”愛国心”は無い人間で利益優先主義者です。
しかしこのまま行くと『”豊か”は”貧しい”、”貧しい”は”豊か”』ルートに行ってしまいそうです。
どうしたもんかね?




