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極寒の冬そして⋯⋯⋯

 シュガーローフ村の冬は厳しい、厳しいというか無茶苦茶である。

雪は吹き荒れ、積もる雪の厚さは1m近くにもなる。

元の世界ではこれほどの雪を見たことがない、精々3㎝ぐらい積もれば休校するような地方で

冬の東北だの北海道だのを大変だな~とテレビを見ながら思うだけであった。


まさか北国の労苦をその身をもって味わうはめになるとは⋯⋯⋯


 ゴブリンたちは手際よく屋根から雪を降ろしているようだ。

屋根が終わったら畑に埋もれた野菜を引き上げている。

この極寒の中でも凍らない野菜とは一体何なのだ? 

ライ麦は雪の先からしっかりとその穂先を突き出している。

ライ麦は元々雑草が栽培種に変化したらしいがこの環境でも問題なく成長しているようである。


雑草パワー恐るべし。



※※※※※ ※※※※※ ※※※※※ ※※※※※



 わたしは手空きになったのでこの砦の書物庫の本を見直す。

かなりボロボロの物が多いがそれなりの量の本が保管されているのだが、これまで時間がなかったのでこの間に見返すことにしたのだ。

魔法などについても分かることが増えれば何かの助けになるかもしれない。


 

 読める本から見てゆくと炎の魔法や土の魔法という物はあるが、かなり効果は限定的なのでそれほど使い勝手のよい物ではないようだ。

火炎瓶を投げつけるぐらいの火力を発生させるのに長々詠唱を唱えなければいけないし、火炎瓶違って精々木の板に穴をあけるぐらいにしか役に立たない。

死霊術のように訓練を続ければ即座に出せるのかもしれないが⋯⋯⋯


ぶっちゃけ、そんな苦労するぐらいなら火炎瓶使って投げた方が早くない?


 そんな感じで書庫にはすぐに役に立つような本はあんまりなかった。

この体の持ち主はそうとう頭が良かったらしい、明らかに違う文字を全く違和感なく読むことが出来る。

一体なにリンガルなのかわからん。


 

 一休みに書庫から出るとシオンとトリルが会話をしている。

そういえばシオンとゴブリンたちが会話をしているのを見たことがなかった。


「タライナイ、モノ、アル?」

「私は今の生活に不満はありませんね。まあ酒が全く手に入らないのが堪えているのは何人かいますね」

「オサケ、アルナイアルヨ、ルール、ウルOK?」

「えっと⋯⋯酒の取り扱いについて聞いてんのかなコレ⋯⋯俺に言われても知らんよそんな事⋯⋯⋯」


 どうやら2人の間には言語の壁があるらしい。

体の持ち主は言語能力が高すぎて同じ言語で喋っている様にしか聞こえなかった。


 すごいけどコレやばくないか? 

相手が煙に巻くために別の言語で喋ってんのに、無意識にその言語で返す可能性があるって事だ。

『ワタシ日本語わかりませ~ん』とかほざいていきなりフランス語で喋り出す外人にそのままネイティブさながらのフランス語で会話に踏み込む⋯⋯かっこいいけど相手はキレるよね、これ。

自分自身ではあんまり喋らないようにしよう。



 シオンのマーケティングにうんざりしている様子のトリル。

彼はやれやれと周囲を見渡すとわたしを見つける。

これで厄介ごとから解放されるといった感じの表情だ。


「あっマオ様。この人間の商人の相手をお願いします。何を言っているのかさっぱりで」 


 それだけ言うと彼は逃げる様に部屋から逃げ出してしまった。


うぉ~い、わたしにめんどくさい話題を押し付けるなよ~


「それで、何の話をしていたのかしら? お酒がどうとか聞こえたけれど」

「ふふふ、マオさん。商人たるものいかなる時でも金になりそうな話は探らないといけないのですわよ」

「トリルはこの村でお酒が手に入らないのが不満なのかしら?」

「まあ、土地ごとや領主ごとにお酒などに対してどう考えているか全然違いますからね⋯⋯⋯マオさん的にここでお酒を取り扱うのは大丈夫ですの?」


 お酒か~ビールやら何やらお酒は古くから人間と共に歩んできた友。百薬の長だ。そういえば最近飲んでないよな~お酒。


「勿論いいけど、あなたがここで売るのかしら?」

「流石にここに店を構える気はないですが、お酒を飲みたい人が多いのなら酒場を作っても採算は取れるはずですよ」

「別にわたしは禁酒法なんて制定する気はないし自由に売れば良いと思うけど」


 思えばこの村はそれなりの規模になって来たしそろそろ本格的に交易をおこなう事も考えた方がいいのかもしれない。しかしそうなると問題になるのは村の防衛能力だ。


 現在はせいぜい狼がうろつくぐらいでスケルトンを囮に矢玉を浴びせれば簡単に撃退できている。

しかし相手が本格的な軍隊ならこんな簡単にはいかないだろう。


 この村の始めから糞尿はしっかり使い回すべく溜め込んである。

目的は肥料用と軍用の2種類だ。まともな肥料が手に入らないこの村では糞尿も立派な資源だ。

糞の汲み取りなど誰もやりたがらないのでスケルトンの中から専門の物を用意して行わせている。

肥料用の物は発酵も進み春先には使ってもの問題なさそうだ。


 港の規模を拡大するとなると、そこにも防衛用の砦を造った方がいいかもしれない。

防衛地点の策定のために雪であろうと地形を見わたす日々だ。



冬前の準備によって今年の冬は誰も死なずに越すことが出来た。 

前ふりが長くなってしまった。

やっと一年目が終わり他国の情勢がちらほら出てくるようになります。

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