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未来の痕跡  作者: 沙羅咲
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第四夜  長い長い夢

 その夢の中で、私は友達といた。高校時代の教会に通っていたころの…その教会の娘と遊びに来ていた。

 実際、彼女とは教会で顔を合わせることはあっても、遊びに行くほど親しくなかったし、なぜ彼女と遊びに来ていたのか分からない。

 とにかく街中で、そして買い物をしているときに、大きな音がした。

 低く飛ぶ飛行機の音。

 とっさに私は夢を思い出した。後ろを振り返れば、いつも夢に出てきていたデパートがある。


「逃げなきゃ!」


 とっさに彼女の手を掴んだが、彼女は要領得ずに立ち止まる。


「ダメだよ。爆弾が落ちるから」


 そう言うのに、彼女はわからないのか、混乱しているようで動かない。


「早く! 一緒に逃げて」


 そう言ってひっぱったが、彼女は動かずに、私は恐怖から離れた彼女の手をそのままに、デパートの中へ飛び込んだ。

 そして全速力で走る。螺旋階段を下りて、地下についたところで、ドーンという音がした。電気が消えて、悲鳴が聞こえる。

 閃光は見なかった。


 多くの人が、次から次へと螺旋階段を降りてくる。最初は数人だったが、段々と押すな押すなという状態になり、そしてけが人が混じるようになった。

 ケロイド状の皮が垂れ下がり、真っ黒な顔をし、手をだらんとたれ下げた人々が目の前を通りすぎていく。

 そして、友達が現れた。周りの怪我した人たちの中で、ちらちらと見える彼女の顔は擦り傷などは見えるものの綺麗だった。


 良かった。

 助かったのだ。


「よか…」


 良かったと言って走りよろうとした私の足は途中で止まった。


 人々の切れ目で見えた彼女の身体は真っ黒だった。手は焼け爛れていて、そしてべろんとした皮が垂れ下がっていた。

 声も出せずに後ずさる。


 私は…。

 友人を見捨ててしまったのだ…。


 うわーっと声を出したところで、目が覚めた。

 そこはどこかのオフィスで、どこかの司令部みたいなところだった。


「目が覚めた?」


 そう聞かれてあたりを見回せば、周りは忙しく動く制服を着た人で一杯だった。

 私のほかにも傷ついた人がたくさん寝かされていたが、あまり重症でなさそうだった。せいぜい骨を折ったり…その程度だ。真っ黒になった人はいない。

 窓が見えた。

 ふらふらと窓に近寄れば、そこから見えた風景は、焼け野原だった。

 青い青い海の底に船が沈没しているのではないかと思う。

 暗い空の中で、ところどころ飛び出ている細長い柱。

 動くものは何もない。

 うっそうとした黒い空。

 爆弾が落ちたのだ。

 人が死んだのだ。

 青とも黒ともいえない暗い中、遠くまで瓦礫が見える。

 内部のざわめきに反して、外は静かだった。




 何も言えずに胸が詰まったところで、目が覚めた。



 どこまでが夢?

 何が夢?


 分からないままに、そばにいた人に声をかける。


「戦争は?」


「戦争?」


 その人は知り合いのお兄さんで…どうやら私はその人の部屋で転寝したらしい。


「どうしたの? 寝ぼけたの?」


 優しい声に励まされて、私は今見た夢を語った。

 戦争が起きたこと。

 爆弾が落ちたこと。

 紺色のような群青色のような、青い夜の暗闇の中にあった瓦礫の山のこと。


 話を聞いてから、お兄さんは少し考えた。


「その夢には意味があるのかもしれないね。夢占い師のところに行ってみる?」


 私は素直に頷いた。



 お兄さんに連れられて、繁華街を抜けていく。

 もともと方向音痴の私には、一体どこに連れられているのか分からない。

 ごみごみとした街の中、線路下のトンネルを抜けて、路地を抜けた古ぼけたオフィスにその女性はいた。

 小さな占いブースに通されて、その女性の前で、お兄さんに話したことを繰り返す。


 話が終わって、その女性は言った。


「これは、その話を皆にしなさいってこと。皆が聞いてくれれば、戦争は避けられる。でもそのままにしていたら、その未来に進む」


 じっと女性が私を見つめる。


「話をしなさい」



 そこで目が覚めた。


 私には知り合いのお兄さんなんていない。

 占い師は夢だ。

 繁華街も夢だ。

 その前の司令部も夢。

 その前のデパートも夢。

 夢の中で、夢が重なる。


 今、この起きているのは、本当に目が覚めているのだろうか?



「話をしなさい」


 

 こんな中途半端な話をして、何が変わるというのだろう。

 分からないまま…でも私は思いついて、そして現実に話をする代わりに、こうして書いた。


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