エルシェの評価
エルシェの魔法の修行はかなりスパルタだった。
エルシェがまず魔法を発動させる。それを真似して実際にやってみる。出来なければできるまで何度もやり直す。これをひたすら繰り返した。
気付けば日が傾いて夕方になっていた。セレーナが出かけるのも気付かないほど集中していたらしい。家に戻るとセレーナはいなかった。
「そういえばセレーナはもうそろそろ戻ってくるのか?」そうエルシェに声をかけると、
「今日は帰ってこないはずだ。今回は明日の夕方くらいになると聞いたぞ。」と返事をした。
それを聞いてもしかして今夜はエルシェを2人だけってこと?もうそんなに信頼されてるのか。と考える。それが顔に出ていたのか、
「どうした?そんなにセレーナが心配か。」とエルシェに声をかけられた。
「いや、そうじゃない。」俺は思わずどもってしまった。
その様子に俺が何を考えているのかエルシェが気付いたようだ。
「今夜は2人だが、変なことを考えるなよ。まぁ、カズヤに何かできるとは思えないが。」
その言葉にむっとする。
「いやいや。そんな油断してると危ないぞ。」と脅かしてみる。すると、「そうなのか。ならカズヤは危険なのか?」そう問い返されて言葉に詰まる。
「いや。そういうつもりはない。」
「それならよかった。しかし実際のところカズヤは大した魔法も使えないし、体も鍛えてないだろう?だったら今の私に何かをできるとは思わないが。それにカズヤはそういったことはしないと思う。セレーナの人を見る目は確かだ。もしカズヤのことを危険だと思えば面倒を見ようなどとは考えないだろう。」という。
「そうなのか?それはある程度は信頼されているのと思っていいのか?」と疑問を口にした。
「それは分からん。私もセレーナもまだカズヤと会って間もない。どういった人物かはわからないことも多い。だから信頼しているというとそれは嘘だろうな。だが、信頼してもいいとは思っている。だからこそ、こうしているということだ。実際私も話を聞いただけではどうかと思ったが、こうやって話をしてみてカズヤの面倒を見るくらいはかまわないと思ったぞ。」と言ってくれる。
「そうか。」それはそうだ。まだ初めて会ってから間もない。俺も2人を完全に信じているかというとそこまでは思えない。
「なら期待に応えるよう頑張るよ。」との返事に
「ああそうしてくれ。」と言ってエルシェは微笑んだ。
翌日の夕方セレーナが帰ってきた。その夕食の席で
「ごめんなさい。いきなりカズヤの面倒をお願いしちゃって。それでカズヤの魔法はどう?」とエルシェに謝る。エルシェは
「かまわない。それでカズヤの魔法だがかなり筋がいい。魔力もかなりある。魔法使いの素質がありそうだ。」と俺を褒める。
その言葉に驚く。昨日今日とエルシェに教えてもらっていたが、魔法を発動できないことも多々あったからだ。
「そうなのか?自分では覚えが悪い方なんじゃないのかと思ったんだが。」というと、その言葉をエルシェは否定する。
「そんなことはない。魔法を学び始めて1日2日でこれほどできるのはかなり稀だと思う。それに1日中できるということは魔力もかなりある証拠だ。」とさらに肯定する。
少し照れる。その様子を見てセレーナが
「カズヤが照れてるわ。あまり褒めない方がいいかもね。」とおどける様に言った、俺は慌てて「いやいや。俺は怒られるよりは褒められて伸びるタイプだ。だから、どんどん褒めてくれ。」と胸を張っていった。
それを見て「調子に乗るな。」そう言いながらエルシェは笑った。