解放
牢に入れられて、7日が経った。
尋問はセレーナとの面談した日から行われていない。
これからどうなるんだ?やはり死刑になるのか。しかし、セレーナが死刑にはならないと言っていたから大丈夫なはずだ。と半ば自分に言い聞かせるようしていた。
こんな考えがずっと頭の中をよぎっていた。
その日の昼過ぎだろうか、ゼニスが牢の前にやってきた。
「もう一度だけ話を聞く。ついてこい。」そう言って牢の鍵を開ける。
尋問室では前回と同じくセレーナが待っていた。
「どうぞ。座って。」そうセレーナに声をかけられる。
「もう一度話を聞かせてもらえるかしら?」
「前回と同じですよ。どうしたらいいかこっちが困ってるんです。このまま殺されるなんて嫌ですよ。」とこちらが嘘をついてないことをどうにかわかってもらおうとする。
「大丈夫よ。このまま死刑にはならないと思うわ。そうならないためにももう一度話を聞かせてほしいの。」とセレーナは諭すように言った。その言葉に少し安堵して、
「わかりました。それで何を話せばいいんですか?」とセレーナに問いかける。
「もう一度あなたのいた世界について話をして。」とセレーナは言った。
こうして、前回と同じように今までいた世界の話をした。その後セレーナからの質問に答える。かなり細かく元の世界の話を質問される。
後ろにいるゼニスは前回と同じようにこちらをじっと見ているだけだ。観察されているのだろうか。
「わかりました。ではここまでにしましょうか。」そういってセレーナが話を打ち切ろうとする。
「これからどうなるんですか?」俺は思わず不安に駆られ前回と同じように問いかけてしまう。
「今の時点ではなんとも言えないですが、私個人はあなたをスパイではないと考えています。ですからある程度は安心してもらっても大丈夫だと思いますよ。」と曖昧な答えが帰ってきた。とりあえず極刑はないということなのか。それならと思い。
「そうですか。それなら解放してもらえるんですか?」とセレーナにきいてみた。すると
「その可能性も高いと考えていただいて大丈夫だと思います。」とセレーナがこたえ、こちらの退出を促した。
牢に戻り考える。
セレーナは大丈夫と言っていたがどうなのだろうか。仮にセレーナの言うとおりここから解放されたとして、どうすればいいのだろうか。自由になったとしても、元の世界に帰る方法もわからない。帰る方法があるとしても簡単ではないだろう。そうするとここでしばらくは生きていかなければいけないが、いきなり放り出されては寝る場所はおろか日々の食事すら確保できるとは思えない。
そんなことをぐちぐちと考えていた。やがて、ここでいくら考えてもどうしようもない。とりあえず流れに任せるしかないか。と結論付けた。セレーナの話が本当なら何らかの動きがあるだろうし。
その翌日、昼過ぎになりゼニスがあらわれた。
「また尋問ですか?何を聞かれても同じですよ。」そうゼニスに声をかけると、
「いや、今日は違う。よかったな、お前のスパイの疑いは晴れたようだ。」と言われる。あまりに早い展開だ。「それって、ここから解放されるっていうことですか。」ときくと、
「そうだ。ついてこい。」といって牢の鍵を開けた。
どうやら想像以上に結論が早くでたらしい。
ゼニスについて牢を出て、街の入り口に案内される。
そこにはなんとセレーナが立っていた。
「では、あとはお願いしますセレーナ様。クガハラ君もまた機会があれば。」そう言ってゼニスは戻っていく。それを見送って、セレーナに声をかけた。
「わざわざ見送りに来てくれたんですか?」
「まさか。そうじゃないわ。異世界から来たという話が本当なら、いきなり放り出されても困るんじゃないかと思って。これからどうするか決まってるんですか?」とセレーナは言う。その問いに「いいえ。」と正直に答える。まさかこんなに早く解放されるとは思っていなかったこともあり何も考えていなかったのだ。そのことを気遣ってくれたのか、
「でしょうね。なら、私についてきなさい。面倒を見てあげる。」とセレーナが提案してくれる。
「えっ本当に?」おもわず声が上ずってしまった。これからどうしたらいいか本当に困っていたのに、いきなり面倒を見てくれるというのだ。しかもセレーナはかなりの美人だ。それにスタイルもいい。そんな人が助けてくれると考えると喜ばずにはいられない。仮に俺を騙すためだとしてもそんなことをするメリットがあるとは思えないし。
そんな考えを見透かされたのかセレーナは
「私を疑がっているかもしれないけれど、とりあえずあなたがここで生きていけるように今後の生活の目途が立つまでは面倒をみるつもりよ。」と微笑む。
どうせ、どうしようもないのだ。セレーナの言うことを信じるしかない。そう考え、
「わかりました。よろしくお願いします。」と返事を返すのだった。
「よろしいではついてきて。私の家に案内するわ。」そう言ってセレーナは歩き出した。