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尋問

衛兵に連行されて牢屋に入れられた。そこは石組の牢屋で、簡素な寝床がついていた。

その寝床で横になっていたらいつの間にか眠ってしまっていた。

目を覚ますと、牢についている窓の外は暗くなっていた。そこから外を眺めると夜空には2つの月が昇っていた。

どうやらかなり疲れていたらしい、当然か。何が起こったかはよくわからないが、やはり異世界に来てしまったらしい。あるいは悪夢を見ているかのどちらかだ。

仮に異世界にきてしまったのだとすれば帰れるだろうか。


改めて周囲を見回すと、野菜のようなものが入ったスープとパンが乗った皿が置いてあった。

どうやら眠っている間に置いてくれたものらしい。それを見た瞬間に空腹なのを自覚した。

用意された食事は冷めかけているようだった。毒は入っていないことを願いながら、恐る恐る口にした。

パンはパサパサしており、スープは薄い塩味だった。囚人用の食事だろうか。うまくはないが、食べれないわけでもない。


食事が終わり、再度横になるとまた眠くなってきた。

あれこれ考えてもしょうがないし、いきなり殺されはしないだろうなどと出来るだけ楽観的に考えつつ、また眠りについた。


「おいっ、起きろ。いつまで寝てるんだ。」そう呼ぶ声で目覚めた。

周囲を見回すとやはり牢屋の中にいた。ああやっぱり夢じゃないんだ。などとぼんやり考えていると、

「おいっ、目が覚めたならついてこい。」と衛兵が怒鳴っている。

「起きるよ。」思わずそう答えると、衛兵が牢屋の鍵を開けているのが目に入った。

どうやらどこかへ連行されるらしい。もしかして尋問されるのか。そう考えながら衛兵の指示に従ってついていく。


石組の通路を進み、部屋に入れられる。

そこには簡素な木製の椅子が2脚と机が1卓あった。その椅子に座らされる。

机の上には昨日連行された際に取り上げられたカバンとその中に入れておいたものが拡げられていた。

そこに男が入ってきて、向かいの椅子に座った。身なりはここに連れてきた衛兵よりも立派なものをしていた。

「私はここの守備隊を任されている、ゼニスというものだ。君に幾つか質問するが、それに正直に答えてくれるとありがたい。」と男は名前を名乗った。

「分かった。」と頷く。

「よろしい。まず君の名前は?」

「クガハラ カズヤ。」そう正直に答える。

「どこから来たのだ?見たこともない恰好をしている。おまけにここにある荷物も見たことのないものだが。セレスタから来たのか?」と聞いたこともない地名のことをきかれる。

「セレスタ?いったい何のことです。気付いたらここにいただけで。そもそもここはどこなんです?」と思ったことを口にする。

「ここはヴェネトのリードだ。わかっているのだろう?ふざけているのか。」とゼニスはいらだちを見せながら言った。

「ヴェネト?リード?どちらも初めて聞く地名です。俺は日本という国から来たんです。」

「ニホン?聞いたことがないな。まぁいい。それでは、目的は何だ?何をしに来た?」

「言ったでしょ。気付いたら近くの草原だったんだ。それでこの街が見えたからここに来たんです。ここがどこかわからないからとりあえず人がいるんじゃないかと思ってここに来たんですよ。人がいるなら何か分かるかもしれないと思って。」

「なぜここにいるかがわからないだと。ふざけているのか。その上、聞いたことのない国から来ただと。そんなわけがあるか。」とゼニスはさらにいらだちを見せる。

「なぜそんなわけがないと言えるんだ?本当のことを言ってます。」

「もう一度聞くがどこから来た。なにが目的だ?」

「何度聞かれても同じですよ。ここがどこかさえわからないんだ。」同じことを繰り返してこちらも徐々にいらだってくる。

「話にならんな。もういい。また話を聞く。その時には正直に答えろ。さもないと命の保証はできないぞ」そう言って、ゼニスは尋問の打ち切り、再び牢へ戻るように指示をした。



牢でさらに一晩明かした後、昼を過ぎた頃だろうか。再び尋問室へと連行される。

尋問室に入ると今度はは、ゼニスと共に若い女性が待っていた。

その女性の年齢は自分と同じくらいだろうか。輝くような金髪は腰くらいまでの長さがある。瞳はエメラルドのように透き通った緑色。顔だちも整っていてかなりの美人だ。体つきは服の上からでもわかるくらい胸は豊かだが、全体としては痩せているというよりは締っていてモデルのような体形だ。思わず見入ってしまった。

「私の顔が何か?」と声をかけられ席に座るように促してくる。

その指示に従い椅子に座る。向かいにはその女性が座った。ゼニスはその奥にある椅子に座る。

「今日はあなたが相手ですか?」と女性に問いかける。

「ええ。私はセレーナといいます。まずあなたの名前はクガハラ カズヤでいいですか?」とこたえた。どうやら昨日の尋問のことを知っているらしい。

「ええ。」そう応え頷く。

「では、質問に正直に答えてください。」とセレーナが話を続ける。その言葉に

「正直に話をしろと言われても困ります。昨日した話が全てです。どこから来たとか、目的は何だと聞かれても答えようがないです。」と昨日の話が嘘ではないと伝えようとする。

「そうですか。では、あなたの話が仮に本当だとして、どうやってここまで来たのですか。詳しく話をしてください。」とセレーナはこちらのことを半ば疑うようにして話をする。

わかりました。と俺は答え、本の質問内容とそのやり取りはぼやかしつつここにたどりついた経緯を詳しく説明した。その話が一段落すると、今度は日本についてに質問や以前の生活についても詳しく説明を求められた。

そうして一通りのことを説明した後にセレーナは、

「そうですか。あなたの話の通りであれば、あなたの以前いた世界には魔法はなく、代わりに科学というものが発達した世界ということですが、本当に魔法は使えないのですか?」とまるでここでは魔法が使えるのが当たり前のような聞き方をしてきた。

「魔法なんてものはありません。少なくとも俺のいた世界ではそんなものはなかった。ここでは魔法があるんですか?」

「魔法はありますよ。あなたの話が本当だとしたら、ここはあなたの今までいた世界とは全く違う世界ということになりますね。」そう言ってセレーナは話を打ち切り、ゼニスに合図をしてともに部屋を出た。

しばらくして二人して戻ってくる。どうやら何か相談していたようだ。

「とにかく今日はここまでにしておきましょう。ゼニスお願いします。」とセレーナが指示を出す。

「わかりました。今日はこれで終わりだ。牢に戻れ。」とゼニスが命令する。

「ちょっと待ってください。まさかこのまま死刑とかですか?」このまま殺されるのではと不安に思い思わず問いかける。その疑問に

「それはないわ安心して。」とセレーナが答え、再度部屋を出るように指示をした。

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