街へ
いったいどういうことだ?
さっきまで図書館にいたのに?
気付けば周囲には草原が広がっていた。
何の冗談だと考えつつ周囲を見回すと、周囲にはやはり草原が広がっている。
携帯を見てみると圏外になっていた。ためしに友人に電話してみる。つながらない。何度か相手を変えて試してみるがやはりつながらない。
どうしたらいいんだ。途方に暮れつつ、周囲によく目を凝らす。
草原の向こうにかすかに街のようなものが見えた。
とりあえずあそこに行ってみるか。ここにいてもしょうがないし。そう考え歩き始める。
歩いてみると草の竹は膝下くらいの長さで歩きにくい。そうやってしばらく歩いていると、草むらが揺れていることに気付く。
風のせいかと何気なくそこを通ろうとすると、そこには前足に鋭い爪が生えているウサギのような生き物がいた。しかもそのウサギが何かほかの生き物の肉を食べているのだ。
ウサギって草食じゃなかったっけ?そう思いつつも、本能的にその生き物に気付かれないように避けて先に進もうとした。
しかしそのウサギに気を取られるあまり、足元への注意が散漫になっていた。草むらに足を取られて転びそうになる。
危なかった。そう思いつつ後ろを振り返ると今の音で先ほどのウサギが気付いたようだ。
ウウッ 低いうなり声をあげてこちらに向かって威嚇するような素振りを見せていた。これはまずいと思い、ウサギに背を向け一心不乱に逃げ出す。
そうやってしばらく走ってから後ろを振り向くと、先ほどのウサギの姿が見えなくなっていた。
何とか逃げ切ったようだ。安堵しつつ再び街に向かって歩き出す。
しばらく歩くとまたウサギに遭遇した。今度はさっきよりも慎重にウサギを避けつつ進む。そうやって幾度かの遭遇を繰り返しつつ進んでいくと道のようなところに出る。
街道だろうか。道自体は人が4人くらい通れくらいの横幅だが、足元は土が踏み固められただけのものだ。そして道の先には目的地の街が見える。このまま歩いていれば誰かに遭遇できるかも。などと考えつつ街へと歩く。
そうして、日が傾きかけた頃だろうか、誰に遭遇することもなく街の入り口に到着した。思ったよりも遠かったようだ。
街の周囲には人の高さの倍くらいの城壁が張り巡らされていた。その入り口には大きな門があり、その左右にはそれぞれ鎧を着こんで槍を持った衛兵らしき人が立っていた。門は閉ざされており、入れそうにない。困ったなと思いつつ衛兵へ近づく。すると、
「おいっ。お前は何者だ?どこから来た?」と衛兵に話しかけられる。
言葉は理解できる。よかった。と思いつつ「何者といわれても。」と答えた。
「なぜこの街道からやってきた?」とさらに詰問するように言葉を投げかけられる。
そうは言われても何も分からない。どうしたものかと考える。その様子をみて
「おかしな服を着ている。これは報告したほうがいいんじゃないか?」
「そうだな。見たこともない服を着ていることといい、この街道を歩いてきたことといいもしかすると、セレスタからきたのかもしれない。」と衛兵同士が相談をはじめた。おれは慌てて
「セレスタ?ちょっと待って。よくは分からないが、怪しくないから。」と変な誤解をされないように説明しようとする。その言葉を無視して。
「俺は報告してくるから、こいつを見ててくれ。」そう衛兵の一人が言うと門へと向かっていく。
「わかった。お前はここでおとなしくしてろ。」そういって、もう一人がこちらへ槍を向けながらそう言ってきた。
どうやら言うとおりにするしかないようだ。どうせ中に入ってもどうしたらいいかわからないし、成り行きにまかせようと、あきらめにも似た心境になった。
「大丈夫です。おとなしくしてます。何もしませんだから、槍をこっちに向けないでください。」そう答えた。
やがて、先ほどの衛兵が人を連れて戻ってきた。どうやら衛兵の上官らしい。こちらをじろっと一睨みするした。
「おいっ。おとなしくついてこい。」そう言われ、後ろに回った衛兵から槍を向けられる。
「何もしないですから。大丈夫です。」両手を挙げてそう答え上官らしき人のあとについていった。