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SEASONS~桜~ 6

 スーパーに着いて店内を回るにつれてお米は10kgもいらないし、ミネラルウォーターを買ったところで置き場所に困る、と冷静な思考が戻ってくる。地味な嫌がらせは自分に帰ってくるとわかった瞬間から、カートに乗せたカゴの中身は結局いつもと変わらないラインナップになっていた。

 夕飯を一緒に食べるつもりだったけど、そうすると浅見も長く居座る羽目になってしまう。ここは予定変更で昼ご飯分に回してしまおう。昨日の今日で私も疲れているから夜は私の為の自由時間だ、決定。

 コロッケとサラダと後なんだ?いっそお惣菜でも適当に見つくろえばテーブルの上だけは華やかになるでしょう。お湯を注ぐだけのインスタントスープでも置いとけば昼食としての面目は立つ。悪いが今回は手抜きさせて貰うわ。今の私の精神状態はあんまり宜しくない。

「持つよ」

「別に大丈夫だから、気にすんなって」

「でも重たくないか?」

「平気平気。俺に良い格好させろよ」

「そうか?なら頼むな」

 わぁ、楽しそうな会話。同棲カップルとか新婚さんがスーパーでする会話であって、同性カップルの会話ではないよね。この二人はカップルですらないのにね。畜生、あんまり買い物しないとは言え、カート借りて来た方が何倍も気が楽だったわ。

 米10kgは買わないけど5㎏は買おう。ミネラルウォーター1ケースは買わないけど2Lペットボトルを2本買おう。


 結果、物は少ないけどそこそこ重たい荷物は男共二人が仲良く手分けして運んでくれましたとさ。

 なんだろう、私のこの空気っぷり。




「二人は一緒に飯食べること多いの?」

 アパートへ続く道。駅前から外れてしまうとあまり人通りのない道路を三人仲良く並んで歩く。車道から一番離れたところを歩かせて頂いているのは大変光栄なことなんだけど、なんで私の隣が浅見なのかしら。チッ。

「一年の時に家が隣同士だって知ってから、山岸が誘ってくれるようになったんだ」

「三食ぜんぶが梅屋の牛丼って知ったら、放っておくわけにも行かないでしょ」

 松戸の食生活は偏りまくりかつとっても荒れていた。主に胃が。口角が痛んでいるのを見て心底呆れたのを今でも覚えている。

 正直に言おう。

 出会った当初の松戸を見て『こいつはBLゲームの登場人物じゃない』と安心していました。

 だってあのぽっちゃり君が18禁BLゲームの攻略キャラになるわけないじゃん。受けと攻め、どちらと考えても致す際に前者は主人公(浅見)が四苦八苦する様が容易に想像出来るし、後者は主人公が潰される。だから安心して仲良くなれる男の人だと信じて近付いた。まぁ、その先は転がるように松戸にハマって行ったわけだけど……

 もし、松戸があの時と変わらぬ体型だったとしたらどうなってたんだろう。そもそもゲームでは浅見はどこで登場してたの?相も変わらずおぼろげな記憶を探るも答えは出てこない。

「沙世ちゃんは優しいね」

 えぇ、貴方以外には。


 浅見を間に介しての会話は浅見と松戸の昔話やそれぞれの中学、高校時代の話と今更聞けない内容のものばかりで少し新鮮だった。

「浅見と山岸は中学が同じなら、家も近所だったとか?」

 素朴な疑問と言った感じの松戸の言葉。その点に関しては私も詳しくは知らない。親しくもない異性の同級生の家なんて覚えてないでしょ、普通。

「近いよ」

 浅見が口にした地名は実家の最寄り駅を挟んだ隣町。うん、歩いても10分かからないくらい近い。

「幼稚園も同じだったし、幼馴染みたいなもんだね」

「浅見君は幼馴染が沢山いるみたいね」

 ほとんど会話もなく、同じ園舎・校舎に通ってるだけで幼馴染ならお前の幼馴染は100人超えるぞ。

「沙世ちゃんは覚えてないかも知れないけど、幼稚園の時に一緒に遊んだこともあるよ」

「運動会?遠足?クラスが別でも皆で出掛けたりしたもんね。園庭広いし一緒に遊んでたかもね」

 一切記憶にないけどな。

 私の返事に眉を八の字にするけど、そんな顔したって覚えてないものは覚えてない。

「思い出したら教えてね」

 無理。そんなに思い出して欲しかったら自分で全部話せばいいのに。そしたら辛うじて記憶の底から拾い上げなくもない。

 あぁ、面倒臭い男だ。


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