曇天
連続なんてっ…
無理でした…
それにしても、昨日の夜は地震大きかったですねぇ
ビビリました(笑)
「風早君はその、柳葉藍子って子を庇って事故に遭ったと…」
校門にいた葎と合流した灯は、学校で藍子に聞いた事を簡単にだが、話した、葎はそれを今聞いている最中だ。
「でも柳葉さんの話からすると、風早君はそんなに事故の事は気にしていないみたいですね…」
「確かに。昨日会った時もそんな感じはしなかったよね?」
「そうですねぇ…どっちかってゆーと柳葉さんの方が辛そうな顔してました…」
灯はついさっきの彼女を思い出す。自分の身代わりに轢かれ、それを苦にしていない彼---対象的に自分のせいだと重荷を感じている彼女---どちらも辛いはずなのに…彼女だけが……
「うーん…その柳葉って子は、彼が走っていたのは知らなかったんだよね?」
「信じられないって言ってました」
「じゃあ、やっぱり当人に聞くしかないか…」
「いやぁ…お役に立てず、スイマセン…」
「ううん…無理に頼んだこっちが悪いんだから」
「まだ時間ありますけど、私も一緒に聞きに行きましょうか?」
「いや、いいよ。多分だけど見つけるのに時間掛かりそうだからね」
「む~…そうですか…」
灯が不満そうな声を出す、彼女としては不完全燃焼なのだろう。
それでも、遅くまで女子高生を連れ回す訳にはいかない。
「風早君について分かったらメールで教えるからさ、とりあえず今日は…ね?」
「…………絶対ですよ?」
「うん。絶対…かどうかはわからないけど…」
葎がそう言うと、灯は了承したらしく、表情を柔らかくした。
「…じゃ!私は帰りまっす!栖小埜さんはどうします?こっちで探すんですか?」
「昨日見たのが石動だからなぁ…俺もあっちで探すかな」
「だったら!途中まで一緒に行きましょう!旅は道ずれでっすよ!」
灯は明るく言うと、校門の外に飛び出して行った。葎もその後に続く。門を出て彼女を探す。
まったく…もうあんな所まで…。
「栖小埜さーん!早く!」
「南屋さん!前見ないと転ぶよ!?あっ…!………言わんこっちゃ無い…」
--楽しい子だな--
愉快そうにガラが葎に呟いた。葎は苦笑いでそれに応じる。
「だな…」
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気分が少し沈んでいる。今日あいつの話を聞かれたからだ。別に聞いてきたあの子が悪い訳では無い。だって悪いのは、私なのだから---
「………………………………………」
そういえば、あの子が言ってた、燐太が走っていたっていうのは本当なのだろうか……
…それは…そんな事はありえないと分かっているのだが、頭のどこかでそれを信じたい自分がいる。
嫌になる。私は楽になりたいのだろう。だって、あいつが本当にまた走れるようになっていたら、自分の中の鉛のように重い罪の意識が救われる。また昔みたいに、あいつと冗談を言い合える。他愛のない会話が出来る。
でも…やっぱり---ありえない。
たとえ、足が治っているとしても、私が自分自身を許しきれるかわからない。
あいつは気にしていないと言った。それは本当なのかもしれない。それでも私は自己を許せない以上、今みたいに彼の事を避け続けてしまうと思う。そう考えると、やはり私は馬鹿みたいだ。
何時までこの一人相撲をするのだろう----
--うふふふふふふふふふふふふふ
「……?」
気のせい…か?
誰かが見ていたような……
振り返ってみるが、後ろには誰も居ない。
やっぱり、気のせいか…
--ふふふふふふふふふふふふふ…みーつけた
「……ッ!?」
今…誰か…居た?
背中に悪寒が走る。もう一回振り返ったが、やはり誰も居なかった。
自然と歩調が早くなる。
早く帰ろう。私の気のせいに決まっている。
「ねぇ、君」
「え……?」
肩を叩かれた、藍子が振り返ると、そこには中年の男が居た。
男は影が顔に差していて、表情が窺えない。
「あ…え…と何でしょうか…?」
「……………………」
藍子が不審がりながら男に質問したが、男は何も答えない。
何だ?この人は?男は藍子に徐々に近づいてくる。彼女もそれを感じ取り、後ろに下がった。
夕焼けに男の顔が照らされ、その表情が明らかになる。
そうだ---あの顔は----
バッ!
「ヒッ…!」
それが当然かのように目の前の男は藍子の首に両手を伸ばして来た。寸前で避けられたが、尻餅をついてしまう。藍子は急いで立ち上がり、背後も見ずに駆け出した。
あの顔は、昨日から、学校で注意を呼びかけている----連続殺人犯…!!
「…待てよ」
「きゃ…っ…っくはっっ」
両手で首を絞められる。ぎりぎりと指が食い込む。
息が…出来ない。
眼の端から黒色が視界を覆っていく。
やだ…こんな…の……は…っ…
意識が遠のく。
ガリ
「っつう---!!」
藍子は精一杯の力を振り絞り、男の右手に噛み付いた。男の手が少し緩み、彼女はすかさず手から抜け出す。
「ごほっ!……っはぁ…!……はぁ…はぁ…はぁ…」
暗くて良く分からないが、おそらく男の手からは血が出ているのだろう、手を押さえている。
今の内だ…!!早く---早く逃げなきゃっ……!
男はこちらを睨みながらゆっくりと口を動かした。声は聞こえなかったが、その意味は分かってしまった。
こ・ろ・す。
殺す。
彼女は無我夢中で走った。
「はぁッ…はぁッ…!」
後ちょっとで、人気のある所にでられる………!
暫く走り、後ろを見た。
あの男は---来ていなかった。
「良かった----」
「あのう…」
藍子は背後から声を掛けられ固まった。まさかあの男が……。
「はっっ……!!」
「あっ…ごっごめんね?それより、あなた大丈夫?一体どうしたの?」
声を掛けて来たのは、二十代前後の若い女性だった。藍子の方を心配そうな表情で見ている。
「たっ…!助けて下さい…!あの…!あの男っ…!男がっ…!」
「えっ?えっ?どういう事?」
女性は状況がよく分からない様子で、動揺している。
「とにかく…!警察を……!」
「…分かったわ…ちょっと待ってて」
藍子の言葉から、何かまずい状況だと察しったらしく、携帯を取り出して、掛け始めた。
「はい---はい---わかりました---では…」
「----どうでした?」
「もう大丈夫よ。すぐ来るって。先に帰ってなさいって言ってたわ」
「…良かった----」
緊張の糸が切れたのか、膝に力が入らなくなる。倒れそうになった彼女を女性が支える。
「おおっと!大丈夫?」
「ああ、はい…すいません」
「あなたも災難ね?」
「ハハ……そうですね…」
「途中まで送って行くわよ?」
「いや…でも…」
「いいのよ。遠慮しないで?」
にっこりと微笑み女性は言う。
…?今の笑顔何か---
「じゃ…じゃあお願いします…」
「それじゃあ、行きましょう」
段々と暗闇が降りてくる。
--うふふふふふふふふふふ……
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「先輩!これですよ、これ!」
「うわっ…何だこりゃ…」
石動市の外れの閑静な住宅街で犯行が行われた。
血なまぐさい、魚が腐ったかのような臭いがたちこめている。
臭い。春だから良いものの、夏だったらどうなっていた事か…
村家霧人は自分は冷静な方だと思っている。
じゃなければ、警察なんてやってられないだろう。
生活安全課や少年課ならまだしも、自分のように頻繁に死体を見る部署もある。
交通課ですら死体を見る機会はあるのだ。被害者に対して何か思わない事も無いが、ある程度は流さなければこちらの精神が持たない。
そうは思っていても、嫌な事に変わりは無い。
瞳に光が無い。そして、人形のように生白く、体温が感じられないのだ。
それが霧人には堪らなく我慢出来なかった。
まぁ…瞳と言っても、今回の死体には---
「眼が…無い…な」
「ですねぇ…ぞっとしますよ…両目をくりぬくなんて…
しかも損傷の仕方から素手でやったみたいですね…」
「……死因は?」
後輩の佐藤翔太が手帳を開きながら喋る。
「え~と……どうやら、出血死ですね。
被害者を押さえつけて、首を鋸のような鋭利な刃物で切り付けたみたいです」
「鋸ィ?ナイフとか包丁じゃなくてか?」
「ええ、それが…首の損傷の仕方が鋸で引いたみたいになってるんですよ。
痛かったでしょうね…僕は嫌ですわ…鋸で死ぬなんて」
「そりゃまぁ…何と言うか…猟奇的だな…」
「ホント嫌ですねぇ…」
「あのーほら、最近石動に逃げ込んだ連続殺人犯---なんつったけ?
あいつとは関係無いのか?」
「歯端ですか?何か違うらしいっすよ?殺害方法が」
「あいつは絞殺だけっか?」
「そうですね」
「じゃあやっぱ違うのか…」
そうなると石動市内には最低でも二人も殺人犯が居る事になるのか……
厄介だな…
「ほらっ!聞き込み行くぞ!グズグズすんな!」
霧人は空を見上げる。昼までは晴れていたはずなのに、雲が少しづつ増えていた。
彼はそれを見て何故か気分が悪くなる。
嫌な---天気になりそうだ---
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「それでねぇ…真さんに聞いたらそれは呪いの人形だって………嘘だと思うけどね?」
「のっ呪いの人形でっすか!
…アレ?でもそれ本当だったら、栖小埜さんかなりヤバイんじゃあ----?」
「えっ!ちょ…ちょっと南屋さん!怖い事言わないでくれない!?」
「……夜中にその人形が…栖小埜さんの枕元で----」
「あーーー!あーーー!聞こえない!聞こえないっ!」
--葎…怖がり過ぎだぞ……?--
葎は石動まで、灯と他愛の無い雑談を交わしていたのだが、彼女は聞き上手なのか、会話が弾んだ。
本当は駅を出たら、すぐ風早燐太を探しに行くはずだったのだが、今もこうしてグダグダと会話をし続けている。
「じ~と栖小埜さんを----」
「キコエナイヨ…ワタシナニモキコエナイヨ…」
葎の反応が面白いのか、灯はカラカラと笑いながら彼を脅かしにかかる。
これではどちらが年上かわからない。
--……!--
同属か…!
ガラはこの近くに自分と同じ者が居る事を感じ取った。
--おい葎、片言になってる暇は無いぞ…--
「ドウシタノ…ガラ…?」
--近くに二重存在がいる--
「……風早君か?」
--そこまでは…--
「分かった……。
……南屋さん……俺…そろそろこの辺で…」
「あっ!わっかりました!こんな所まで付き合って貰って、ありがとうございました!」
「それじゃっ!またね!」
「はい!また!」
葎は灯から身を翻すと走り去っていった。
「ありゃ…栖小埜さん…もう行っちゃった…もしかして風早君見つけたのかなぁ?」
気にはなるけど、今日はもう帰ろう。天気も悪くなって来たし。
何か雨降りそうだな…
傘---……まっ…大丈夫か。
本降りになる前には帰れるだろう。
あれ?三話だったはずが…増え過ぎ…だと…
…なんとか頑張ります…
感想待ってますね!




