走る少年とメロンパン
文は下手ですが、見てくれるとありがたいっす!
「あんた達さ~そんな小さい子いじめて楽しいわけ?」
金髪の少年が数人の男に問いかける。
男達の中心には中学生ぐらいだろうか、気の弱そうな男の子がいる。
「はぁ?ちょっと小遣い貰っただけだろうが、つか、てめーに関係ないだろーが」
一人の男が少年を恫喝するが、それに彼はひるむ気配も無い。
「う~んまぁそうなんだけどさ?これで関係あるよね?」
「あ…?」
少年はいつの間にか男の目の前に来ていた。しかもその手には男の財布が握られている。
「あれ?俺のも無い!」
「俺のも!」
「俺もだ!!」
そして無くなった男達の財布は全て少年が持っていた。
「ほ~ら!これ!取り返さなくていいの~?悔しかったら追いかけてみなッ!」
そう言い、少年は男達に背を向け走り去っていった。
「取り返せぇえええええーーー!!」
男達は中学生ぐらいの少年には目もくれず金髪の少年をドタドタと追いかけて行く。
後に残された少年は、ただ呆然とするだけであった。
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背後から先程の男達が追いかけてくる。
馬鹿だなぁ…俺に追いつけるはずなんか無いのに。
そうだ!このままわざと、ぎりぎり追いつける速さで走ってやろう!
どこまで付いて来れるかな~?
タッタッタッタッ
道路を小気味良いリズムを刻みながら少年は走り抜けて行く。
追いかけている男達は早くも苦しい顔をしているが、金髪の少年は涼しい顔をしている。
「ほ~ら、こっちこっちィ!!」
振り向きながら男達に叫ぶ。
「待てやあああああああーーーーーーー!!」
必死であいつらは追いかけてくる。ああいう奴らをおちょくるのは気分が良い。
ドンッ
誰かに肩がぶつかってしまった。
「おわッごめん!」
あーメロンパンがー!という声がしたが、止まってる暇は無い。
ごめーん!!ともう一度叫んで少年は走り続ける。
「あそこだぁあああああーーーーー!!」
やばい見つかったかな?複数の足音が聞こえる。続けざまに、さっき人にぶつかった所から、あああああああああーーーー!なんて事をー!と声がしたような気がしたが気にしない。
もう来たんだ…以外に速いな…
よっし!もっと飛ばすか!
ペースはどんどん速くなる。
ーーーさぁ追いかけて来い。
風早燐太は追いかけられていた。
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「う~む…こっちの店のメロンパンもなかなか…」
ーーまた君はこんなに買って…太るぞ?--
「メロンパンは別腹だから太らない!」
ーーそっ…そうかね…ーー
今日は真の店、天儀屋は休みだ。
元々、そんなに忙しい店ではないので臨時休業もざらにある。
それでもちゃんと成り立っている所が凄いと思う。
リサイクルショップとは銘打っているものの、高そうな品もあるので、それの恩恵だろうか?
「へぇ~ガラス工房だってさ」
歩きながら色々な商店などを見る。
石動市には三月に来たばかりなので、まだ見ていない所も多い。
それを考えると、ほぼ三ヶ月も自分の住んでいる場所を全く知らなかった事になる。
なんにせよ休みは休みなのだ、とりあえず葎は石動市内を見て回る事にした。
「にしても…やっぱ、いないな…」
あれから全く二重存在を見かけない。情報さえも殆ど聞かないのである。
平穏であるのは良い事だが、葎はなんだか拍子抜けしてしまった。
真曰く、全ての人が二重存在になるわけじゃないから、だそうで。
確かに、全ての人に二重存在が出来てしまったらそれはもう大変な事になるだろう。
これも真の受け売りだが、二重存在が発生する人達はそれなりに発生する原因があるそうだ。
とは言っても、自分はただ交通事故に遭っただけだしなぁ、と彼は思ったりする。
ーー悪霊や浮遊霊ならばかなりいるのだがね?ーー
「確かになぁ…」
ガラの言う通り悪霊や浮遊霊は意外にどこにでもいる。
ガラの目を通すとそれが良くはっきりと分かってしまうのだ。
大半は灰色の浮遊霊である、黒い悪霊はいる事はいるのだが、数は多くない。
悪霊と言っても、人に害を為すほどの悪霊は滅多にいない……というよりも葎は見かけた事は無い。
何にせよ、誰かに危害を与えないならば、放っておいて問題は無いだろうというのが彼の弁である。
「栖小埜さん?」
肩を叩かれ振り返る。
そこには、葎が初めて見た二重存在である‘アリカ‘の宿主、南屋灯が笑顔で立っていた。
前に見た時と同じ制服だ。
「南屋さんか。無事に退院できたんだね」
「いや~お久しぶりでっす!今日はどうしたんですか?」
「休みだし、散歩でも…ね?一個いる?」
葎は持っているビニール袋からメロンパンを一つ取り出し灯に差し出した。
「ありがとうございまっす!
ここのパン屋さん美味しいから、私の学校人も良く学校帰りに寄るんですよね~」
「へぇ~そうなんだ。俺も今日初めて来たけど確かに美味しいと思うよ。
ちょっと買い過ぎちゃったけど」
葎が持っている袋にはメロンパンだけが大量に入っている。
灯はそれを見て眼を丸くした。
「そんなにいっぱい買ったんですか?みんなで食べるんですね!」
「違うけど?」
奇妙な沈黙が訪れる。
「えっ?じゃあそれ…もしかして…全部お一人で?」
「そうだよ」
「マッ…マジですか……人体の神秘ですね…」
彼のどこにこの量のパンが入るのだろうか?
人は見かけによらない。灯が今日学んだ事である。
ーー嗚呼…彼女の今の気持ちが良く分かる…--
ガラは人知れず呟いた。
「それより、南屋さんは?今日学校無いの?」
「あったはあったんですけど…なんか連続殺人犯がどうとかで、今日は早く帰されたんでふよ」
葎から貰ったパンを食べながら灯が答えた。
「連続殺人犯?えらく物騒だな、それは」
「何でも市内に逃げ込んだとか……
でも、警察が総動員で張り込みしてるらしいですから、大丈夫ですよ!」
「まぁ心配してもどうにもならないしなぁ」
そういえば、と灯は話題を変える。
「栖小埜さんって大学生なんですか?」
「俺は…あ~分かるかな?天儀屋ってリサイクルショップで働いてるんだわ」
「知ってますよ!そこ!変な物がいっぱいあるので有名なお店ですよね?
……ってちょっと失礼でしたね…」
言い過ぎてしまったかな?と葎の顔色を窺う。
「ハハッ、まぁ間違っちゃいないな…気にしないでいいよ」
「そうですか?あっ!そうだ!栖小埜さんこれからお暇ですか?」
「暇だよ?何もないからね今日は」
「良かったらこれからちょっと付き合ってくれませんか?
この前のお礼もしたいですし…どうですかッ!?」
「お礼なんていいのに…」
「メロンパン奢りますよ?」
「よしッ!行こう!」
まだ食べるんだ…冗談で言ったんだけどなぁ…。
灯は苦笑いを浮かべた。
「じゃ…じゃあ行きますか!……………ん?」
まてやあああああああああーーーー!!
大きな声がする。誰か追いかけられているのだろうか?後ろを葎達は振り返った。
ドンッ
葎の肩に誰かぶつかった。
その拍子にバランスを崩し、持っていたパンの入った袋を落としそうになった。
「おおっっと!?あー!メロンパンがっ!!」
とっさに袋の端を掴む。
かろうじて葎は袋を落とさなかった。
「おわッごめん!」
ぶつかって来たのは髪をうっすら金髪に染めた少年だった。灯と同じ制服を着ている。同じ学校だろうか?
少年は急いでいるらしく、葎にもう一度ごめーん!と叫ぶと再び走り去って行った。
「あっ危なかった…!」
「大丈夫でしたかっ!?」
あそこだぁああああーーーーー!!
「あれ?今の金髪の人---どこかで---」
「うっ……うん…うん?…ん?あそこ?どこ?」
後方より大勢の人が走るような音がする。
葎は嫌な予感がした。
次の瞬間彼は走ってくる男達によって、前に突き飛ばされた。
「栖小埜さーーん!!」
灯の声が頭に響き。葎の持っていたメロンパンの入った袋が空中に投げ出される。
葎は先程と同じように手を伸ばしたが、無情にもその手はビニールの袋を掴む事は無かった。
そしてそのまま落下したパンの袋は、直後に通り過ぎた男達により無残に踏み潰された。
「ああああああーーーーーーー!!なんて事をーーーー!!」
「うるせえ!邪魔だ!」
「危ないなぁ!もうっ!怪我無いですか!?…栖小埜さん?」
「………………………………………………………」
葎は踏み潰されたパンの袋を見て黙ったままだった。
灯は無言の彼から静かな怒気を感じ取った。
「えぇ…っっと栖小埜…さん?」
「メロンパン…」
「え………?」
「俺の…メロンパン…」
「しっ…しっかり?」
葎が頭を急に上げた。その眼はある意味、狂気が走っている。
そしてさっきの男達の走り去った方角へものすごい速さで駆け出して行った。
「待てえええええええええ!!めーーーろーーーんーーーぱーーーんーーー!!!!」
「栖小埜さん!?栖小埜さああああーーーーーーーん!!
………ありゃ…………行っちゃった…」
取り残された灯は追いかけようかと思ったが、すぐに判断した。
ああ…こりゃ追いつけないな…と。
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風を切り進み、走り続ける。風が頬を撫でる。
この瞬間、この一時が走る事の気持ち良さを思い出させてくれる。
しばらく前までは忘れていた、この感覚。
もう手放したくは無い。
それより…
「そろそろ飽きたな」
いい加減あいつらもバテバテだろう。後ろをチラリと見る。
案の定奴らは疲れている。ここいらでラストスパートといきますか。
彼がそう考えていると、後ろが騒がしくなった。
「うわっ!何か追ってきたぞ!」
追ってきた?追われてるの俺なんだけど?
まったく…一体なんだよ?
「めーーーろーーーーーーんーーーーーーぱーーーーーーーんーーーーーー!!!」
は…?メロンパン?どういう事?
「うわあああああああーーーーーーー!!」
…?何か悲鳴が聞こえるんだけど…?
あれか?妖怪メロンパンとかか?
とにかく、燐太は後ろを見ない事にした。
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--……葎…お~い葎~?…--
「なんだよ!?今忙しいだろ!」
ーー……はぁ…彼らに追いついてどうするんだね?--
「決まっているだろ!!メロンパンに謝らせるんだよ!!」
--…駄目だな…これがメロンパンに取り憑かれた者の末路か…--
追いかけっこは続く。
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「待てゴルぁああああああーーー!」
あの金髪野郎…!くそ速えぇ…!
広田祥吾は苛立っている。
なぜなら自分達の財布をすり取った前方を走る少年に全く追いつかないからだ。
心なしか、余裕にさえ見える。こちらは追いかけるだけで精一杯だというのにだ。
「広田君!なんか変な奴が追ってきてるんだけどっ!?」
横にいる、三崎幸二が何やら言っている。
変な奴?そんなの目の前走ってるガキの方が変だっつー---
「お前達が待てやぁああああああーーーーーー!!」
変な奴だった。
「でも、あの追いかけてくる奴どこかで…?…う…っ!」
思い出した。ちょっと前に石動駅の近くで俺達をボコボコにした女と一緒にいた奴だ。
あの時はマジで死ぬかと思った。思い出すだけでも寒気がする。
あいつがいるって事は…あの女もいんのか!!?
だとしたら………俺達逃げられないじゃん…
「やべぇやべぇやべぇっ!お前ら止まれ!!」
「はぁ?何でだよ?」
「いいから止まれ!死ぬぞ!」
あまりに強く彼が言い張るので、訳が分からないながらも彼らは止まるしか無かった。
それだけ彼は必死だった。
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前を走る男達が足を止めた。
これは好期だと葎は全力で彼らに突撃する。
「お・ま・え・らぁああーー!…何をしたか分かってるんだろうな?」
「はっはい!この間は本当にほんっとうにすんませんでしたーー!!」
男の一人が葎の目の前で深々と頭を下げた
「この前?俺はさっきのメロンパンの事を言っているんだっ!!
お前達が踏みつけて行ったメロンパンだっ!」
「へ?メロンパン?」
彼らが呆気にとられていると、探しましたよぉ、という声がした。
「こんな所まで来ていたんですね。探すの苦労しましたよ~?近道使ったり…」
「あっばっ…!おっお前ら逃げろおおおおーーーーー!!」
「はい?えっ…?」
男達は騒がしい足音を残して、逃げていった。
「あの人達って…この前の…」
「言われてみれば……気付かなかったな…
おっと!それよりもごめんね。南屋さん置いて行っちゃって…」
「いえいえ、私は大丈夫ですよ~
…ところであの人達が追いかけていた金髪の人はどこ行っちゃったんでしょうね?」
「そういえば…あの金髪の奴どこ行ったんだ?………確か南屋さんの学校の制服着ていたよね?」
「はい、多分……うーん…見覚えがあるような、無いような…」
灯は首を傾げる。
「いや~助かった!助かった!ありがとよ、えっと…怪人メロンパンマン?」
「…!さっきの金髪!」
物陰から男達に追いかけられていた少年が姿を現した。
そしてその顔を見た灯は思い出した。
「あなたは、二組の風早君じゃないですかっ!」
「おおっ!そういうお前は、え~と?南屋だけっか?」
「やっぱり同じ学校だったんだね。君達」
「はい!…でも…風早君、あなた歩けないんじゃーーー」
「いっいや?そんな事ないぜ?」
燐太は誤魔化すかのように、目を逸らす。
「そんな事よりさ、とにかく今日は助かったよ!あんた!礼は今度するからよっ!」
んじゃ!
彼はそう言うと再び走り去っていった。
「忙しい奴だな…ところで南屋さん。車椅子って?」
「ああ、はい。それなんですけど…彼、陸上部だったんですけど、一年生の頃、事故に遭ったらしいんですよ。それが原因で陸上部辞めちゃったらしくて…」
「そうだったんだ…それで車椅子…か」
「今は、走るはおろか歩く事すらままならないって聞きました…でもさっきは…」
「うん…走っていた。しかも凄く速く」
どういう事だ?葎の中で疑問が膨らむ。
何故、彼は走れた?無理をしている様子も無かった、息を切らしてすらいない。
何か気になる…まさかとは思うが…
「南屋さん。明日学校は?」
「明日ですか?確か明日も早く帰れるって先生が言ってました!」
「じゃあさ、無理なお願いなんだけど……明日学校でそれとなく、彼の事、聞いてくれないかな?」
葎は駄目元で灯に頼んだ。知り合っても間もない人物がこんなお願いをするのは、自分でもどうかしてると思う。きっと断られるだろう…と彼は考えていたのだが---
「おおっ!謎の金髪少年の秘密ですね!わかりました!聞いてきまっす!」
とても元気の良い返事が返って来た。
「ええっ!?本当にいいの!?」
「私も正直気になりますし!面白そうじゃないですか!」
灯が瞳を輝かせる。
「何かわくわくしますね!」
自分の事を棚に上げてなんだが、彼女も大概変人なのだろうか?葎は内心苦笑する。
「…何か違うけど、まぁいいや…」
連絡先を教え、明日は灯の学校の前に集まる事にしてから解散する事になった。
「それじゃ!頑張って調べてきますね!」
灯が手を振る。
「張り切り過ぎないようにね…じゃあまた明日」
灯の姿が見えなくなったと同時に葎はガラに訪ねた。
「なぁガラ。あいつ…風早って奴は二重存在が中にいたか?」
--いや、彼に二重存在の影は見えなかった…足以外は--
「足以外?」
--………少し考えさせてくれーー
静かになった。もうすぐ日が暮れる。すでに太陽は沈みかけている。
ガラは考え込んでるようだ。
---足以外とは…どういう事だ?
疑問は膨らみ続ける。
キーンコーンカーンコーン
五時の合図だ。
そして日は沈む
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---やぁ今夜は楽しかったね
男が一人たたずんでいる。薄暗い湿り気のある場所だ。街灯が無ければ、殆ど何も見えないだろう。
そして男の傍らには髪の長い女性が寝ている。
---君の眼は本当に綺麗だ
女性からは返事が無い。
---今夜だけとは言っても、君は本当に良かったよ
‘道具‘を仕舞いながら男は笑う。そして服装を整えながら、女性に語りかける。
---だからこれは君との記念に貰っておくね?
女性からは相変わらず返事は無い。男はその彼女との‘記念の品‘を懐に入れる。
---嗚呼こんなに汚してしまった。後でシャワーを浴びなければ
呟きながら男は支度を終えた。
---じゃあ俺は行くよ
懐に入った女性との‘記念の品‘を触りながら、歩いていく。
最後まで女性は一言も喋らなかった。
何故なら---彼女は死んでいるのだから。
---次は…誰にしようか?
懐の女性の‘記念の品‘を手で確認するように撫でながら、男は闇へと消えていった。
歪んだ欲望はすぐそこまで来ている。
メロンパンを連呼し過ぎ?
そーゆーつっこみはなしだ!




