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duplices  作者: rakia
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番外編 苦離栖魔守



 俺……何書いてんだろ……。ort

 



 自分の置かれている状況を整理してみよう。

 俺の傍らには寧さんが居る。寧さんは真っ赤のお鼻のトナカイそのままなコスチュームを着ている。しかも狐のお面を着用で。見るからに仮装パーティーの様相だが、生憎これはクリスマスパーティーだった(、、、)筈だ。

 そんな寧さんの目の前には何やら禍々しい漆黒のオーラを纏った世紀末覇者も吃驚な鎧の人物が。

 鎧の人は小さいサンタ服の人物を何処から持ち出したのか、分厚い布団で簀巻きにして天井に吊るそうとしていた。サンタ服の人物は為されるがままに布団に巻かれ、力無く軽くウェーブの掛かった長髪を元気が無くなったトウモロコシの髭の様にぶら下げている。異様な空気も相まって非常にホラーチックな光景である。ところで、壁を突き破って外に上半身を突き出している空鉦さんはどうしたら良いんだろう。 俺は右隣に視線を動かした。俗に言うミニスカサンタというコスチュームを着ている柳葉さんが満足そうな顔で椅子に座っている。手には大きなビールジョッキが。中には琥珀色の液体が並々と注がれている。余談だが彼女の顔は真っ赤だ。

 うむ、ここまでは至って普通に近い光景であるが、着眼すべきは彼女が座っている椅子である。何とあの椅子――――生きている。あれがかの有名な人間椅子と言うものなのか。

 これも余談であるが人間椅子の名前は風早燐太と言う。軽度の馬鹿だ。これは悪口などではない。れっきとした周知の事実なのである。

 その馬鹿は今にも泣きそうな顔で、柳葉さんの尻に文字通り敷かれている。まぁ……あれはあれで幸せそうだから何の問題も無い。人間椅子がこっちにちらちらと助けを求める様な視線を感じなくも無いが、気にしない気にしない。

 俺はあんまりにも見るに耐えない――――じゃなくて幸せそうな時間を邪魔したくなかったので、反対側の方向を見た。そこには俺の顔にくっ付きそうなぐらい接近した南屋さんの顔があった。

 あれぇ? おかしいなぁ? 南屋さんはさっきまでソファーで寝ていた筈なんだけどなぁ? 何でその彼女が阿修羅の様な壮絶な顔で俺を睨んでいるのかなぁ? うんうん分かっているんだ。あれ……南屋さんだけど南屋さんじゃない。だって南屋さんはあんなに凶悪な表情は出来ないもん。

 え? 暇だから何か一発芸をしろ? ちょっとそれは勘弁してくれ。俺は怖過ぎるので前方を向いた。

 ……あっちは平和だな。特に変な事は無い。伊織さんが六号のケーキに挑戦しているけど全然変じゃない。口直しなのか、そのケーキの横には馬鹿みたいにドでかいフライドチキンが食べかけの状態で置いてあるけど全然変じゃない。よくあるよくある。それを見ている秋庭君はこの世の終わりみたいな表情になっているけど、それもよくあるよくある。

 ……!? おや、伊織さんの手が止まったぞ、どうしたんだ? ギブアップか? いや……そうじゃない……。ただ単に秋庭君にケーキを勧めただけだ……! まだ……! その手をッ……! 止めないだとォッ……!? しかもあのケーキッ……! 何と二個目だァァァ!!

 …………あの子はフードファイターでも目指しているのだろうか?


「………………ふう……」


 俺は全ての状況を確認し、熟考した。どうしてこうなった――――と。


 それは数時間前に遡る――――……。




--------------------------------



 寧「あのう……クリスマスパーティーとかってしないんですか?」


 葎「苦しみますパーティー……!?」


 寧「何ですか、その血生臭そうなパーティーは。そうじゃなくてクリスマスパーティーですよっ!」


 葎「寧さん……。寧さん……。サンタクロースはね……死んだんだよ」


 寧「死んだ!?」


 葎「ああ……俺を庇ってさ。あいつ……無茶しやがって……! クソっ奴らめっ……!」


 寧「奴らって誰ですか。っていうか嘘ですよね」


 葎「はい、勿論ですとも」


 寧「何で嘘を吐くんですか!」


 葎「だってクリスマスなんてイベント、世のカップル達の為だけある様なものじゃないかッ! 人目も憚らずねちゃねちゃしやがる!」


 寧「納豆みたいに言わないでくださいよ! そんなに粘着質じゃないですから!」


 葎「じゃあさ、寧さんはどうなんだよ! 見ていてイライラしないか!? それとも見られる側だったとか!?」


 寧「そんな訳無いでしょう! クリスマスは従業員一同で忘年会と大差が無いパーティーをやってましたよ! 皆年上だから凄く息苦しいんですよ、あれ!! お酒臭いし! 分かって言ってるのーっ!?」


 葎「お、おお……ごめん……」


 寧「だから今年こそはと……。り――――いや……皆で祝おうと……! そういう事ですよッ!」


 葎「今、何て言いかけ――――」


 寧「細けー事は良いんですよ! とにかくやりますよ! はい、御一緒に、れっつぱーりー!」


 葎「れ、れっつぱーりー……」


 寧「気合が足りない! れっつぱーりィィィィィ!!」


 葎「れ……れっつぱーりィィィィィ! ……何か愉しくなってきたかも……!?」


 寧「そうでしょう! これがクリスマスです! クリスマスは戦いです……気合を入れましょう!」

 

 葎&寧『れっつぱーりィィィィィィィ!!! うおおおおおおおおおおお!!』


 燐太「あの二人、何で叫んでんだ……?」


 藍子「さぁ? 寒いからじゃない?」


 灯「熱い情熱を感じまっす……!! これがパッション……!」


 燐太「いや、違うだろ」


 

 そうそう、これが事の発端だったんだ……。それから真さんと空鉦さんが来て……。

 


 真「クリスマスパーティー?」


 寧「そうです! ケーキ食べて、クラッカー鳴らしてどんちゃんやりましょう!」


 真「そういう事なら『天儀屋』の空き室を使って良いよ。此処無駄に広いし、それぐらいしか使い道は無いからね」

 

 寧「ホントですかー!? やったぁー! これで会場は確保しましたよーっ!」


 空鉦「俺チキン買ってくるな! でっかい奴な!」


 真「近恵さんはいいんですか?」


 空鉦「あいつとはイブじゃなくてクリスマス当日に一緒に過ごすって約束してるからなぁ。つってもやる事は変わんねえけど」


 真「でも住職は仏教徒では?」


 空鉦「坊主だってなぁー! ケーキ食いたいんだよ!」


 真「仏教の教えとは執着を捨てる事では?」


 空鉦「どうしても参加させたくないの!? 遠回しに拒否してない!?」


 真「いや、そんな事は無いですよ。ただ……若い子達が集まるから住職が肩身の狭い思いをするんじゃないかな――――と」


 空鉦「やめて! 俺だってまだ若いの! まだいけるの!」


 真「現実って時に非情ですよね」


 空鉦「ああああああ!! 聞こえないー! 聞こえないィィィ!」



 そんで、遅れて秋庭君と伊織さんが来て……。



 正一「はあ、パーティーですか」


 葎「うん。君達もよかったら参加しない?」


 理沙「わたしなんかが参加しても良いんですか……?」


 葎「勿論! 遠慮なんかしないでよ!」


 理沙「でも……」


 正一「どうせだから参加しようよ。楽しそうだしさ? ね?」

 

 理沙「……うん、そうだね。それじゃ……わたし達もヨロシクお願いします。お手伝い出来る事があったら何でも言ってください」


 葎「ああ、よろしくね! えっとじゃあ……買出しと飾りつけに分かれて貰うんだけど――――……」


 理沙「買出しで」


 即答ならぬ、瞬答であった。


 葎「えっ」


 理沙「買出しで」


 葎「えっ、何それこわい」


 彼女の瞳は紅蓮の食欲に燃えていた。ついでに躊躇いがちな口調は何処かに家出していた。


 正一「……あの……僕、心配だから伊織さんについていきます……。嫌な予感がするんです……」


 葎「奇遇だね……俺もちょっとだけ寒気がしたんだ……。伊織さんの事を頼むね……」


 

 準備をしていたら瑞樹神さんが来て……。 



 広尾「真ぉ! 来たよーっ! プレゼントは、ワタシだッ!!! 受け取ってくれ!!」


 真「速やかにお帰り下さい」



 ……もうこの時点でかなり変だな……。それからそれから――――。


 寧「皆集まりましたね!? それじゃ衣装を決めたいと思います! この割り箸を一本引いて下さいね!」


 葎「衣装?」


 寧「クリスマスと言ったらコスプレ、クリスマスじゃなくてもコスプレです!」


 葎「それ、何か違わない? というより君の性癖じゃ……」


 寧「まぁまぁ……。とりあえず、ハイ。葎さんからどうぞ!」


 葎「お? 赤色……」


 寧「おめでとうございます! サンタですよ!」


 葎「じゃあ俺主役かあ……。喜んで良いのか? これ?」


 寧「サンタのくじはいっぱいあります! 何故ならあたしも一度着てみたかったから! はい! 次灯ちゃんッ!」


 灯「そのまま……?」


 寧「残念……。それははずれなの……だから灯ちゃんはそのまま……」


 灯「そうなんですかー……。家になら着ぐるみはあるんですけどねぇ……」


 寧「次は藍子ちゃん!」


 藍子「みに……すか……? サンタ?」


 寧「大当たりぃぃぃぃぃ!! やったね! 藍子ちゃん!」


 藍子「これって……着なきゃ駄目ですか……?」


 寧「駄目! 着なきゃ駄目!」


 燐太「そーだ! そーだ!」


 藍子「燐太はうるさい。……しょうがないか……。はぁ……」


 寧「続いて空鉦さん!」


 空鉦「そのままかー」


 寧「ええ、空鉦さんはそのままでも笑えるって事ですね!」


 空鉦「そういう意味なの!?」


 寧「次! 理沙ちゃん!」


 理沙「……そのまま……です」


 寧「え~……理沙ちゃんのコスプレ可愛いと思うんだけどなー……。気を取り直して、秋葉君!」


 正一「僕もそのままですね」


 寧「これで三連続! 次こそは! 真さん!」


 真「サンタクロース……?」


 寧「サンタですか! やりましたね! 衣装はどうします!? 一応、用意してきましたけど?」


 真「ああ、大丈夫だよ。自前のがあるんだ」


 寧「自前とは気合が入ってますね! じゃあ次は……。次は……み、瑞樹神さん……」


 広尾「ああっ! その怯えた顔も堪らないッ! こっちにおいで!! お姉さんとイイ事しよう!」


 真「瑞樹神さん?」


 広尾「はい、以後口を慎みます……。御迷惑をお掛けしてスイマセンでした……」


 寧「ひっ……。さ、最後は私ですね……。くじは残り三本。どれが当~た~る~か~なっと! 出たー! トナカイ! ……トナカイ? あれ、あたしこんなくじ入れてたっけ……? トナカイ……?」


 葎「寧さんはトナカイに決定っ!」


 寧「決定じゃないですよ!? 無効です! こんなの誰かの陰謀ですよぅ!」


 葎「トナカイにッ! 決定ッ!」


 寧「そんなーッ! やり直しを――――!」



 で、衣装が決まって。いよいよ始まろうとした時……。



 トナカイ寧「みんなぁー……着替えましたねー……」


 サンタ葎「テンション低っ!?」


 トナカイ寧「どーせトナカイですからねー……。真っ赤のお鼻で笑いものなんですよーだ……」


 サンタ葎「いじけるなよ!? ……ってこれはどういう事だ……!?」


 鎧真「着替え、これでも良いかな?」


 サンタ葎「真さん……それ何ですか……」


 鎧真「これかい? これは、魔王鎧装(サタンクロース)だよ」


 葎「サタンクロースって何っ!? そもそも根本的に違うし! 真さん! サタンじゃなくてサンタですよ!?」


 鎧真「そうなのか……ごめん、今度から気を付けるから今回はこれで我慢してくれ」


 サンタ葎「わ、分かりました……。おや? 柳葉さんは――――」


 サンタ藍子「どうも……」


 サンタ葎「うん、似合ってるよ。……ところで風早は、何て言ってる?」


 サンタ藍子「まあまあだな……って……」


 サンタ葎「頑張れ! 俺は応援してる……!」


 サンタ藍子「頑張ります……!」


 サンタ葎「これで終わりかな……」


 サンタ広尾「終わってねーよ! ワタシがまだだよ!」


 サンタ葎「あぁ……瑞樹神さん」


 サンタ広尾「何だその反応は! 褒めろよ! 悲しいだろ!」


 サンタ葎「あーウン。カワイイデスネー」


 

 それで乾杯をして……。ここからだ。ここから始まったんだ……。

 長々と思い出しているが、崩れるのは……そう一瞬だった。



 寧「かんぱー……い」


 一同『かんぱーい!』


 藍子「この麦茶美味しいわね……。おかわり」


 灯「そうですか? 何か苦くて……ふぁ~あ……。眠く……なって……」


 燐太「これウイスキーじゃねえか! 誰だこんなの買ってきた奴は!」


 藍子「……燐太ぁ……」


 燐太「な、何だよ……。おまっ……顔近いし赤いぞ!?」


 藍子「……ひっくっ。椅子になあれ」


 燐太「…椅子……?」


 藍子「椅子」


 燐太「……マジで……?」


 女王「やれ」


 正一「あの……伊織さん……。始まって五分も経ってないけど……この辺りにあった大量のオードブルはどこへ……?」


 理沙「え? 食べたけど……」


 正一「全部……?」


 理沙「だ、ダメだった……!? 秋庭君も食べたかった……!?」


 正一「いや……そういう問題じゃなくて。……魔法とかじゃないよね」


 理沙「ま、魔法……?」


 サンタ広尾「灯ちゃんが眠っている! これは襲うチャンス! 今お姉さんが行くからねーっ!」


 空鉦「待て待て……。てめえは何をしようとしてい……」


 サンタ広尾「因達羅、あれ邪魔」


 空鉦「おべろッ!?」


 サンタ葎「空鉦さんが死んだ!?」


 サタン真「瑞樹神さん……? ちょっとこっちに来てくれますか……?」


 サンタ広尾「ええー……。ま……真ぉ……そんな情熱的な眼で見られたらワタシ死んじゃう――――ぎゃーッ!!!」


 トナカイ寧「トナカイ……。トナカイ……」


 サンタ葎「寧さん、しっかりしろーっ!?」


 サンタ女王藍子「っしっしっし……。りんら~すわり心地が悪いのら~。へんけーしろ」


 椅子「変形出来ねえよ!?」


 サンタ女王藍子「やーれーよぉ~」


 椅子「酒臭いから顔を近づけんな!」


 サンタ女王藍子「いやなのか~? んー?」


 椅子「近い近い近い近い……!」


 サンタ女王藍子「いやなのかよぉ~?」


 椅子「嫌じゃないけど……」


 サンタ女王藍子「じゃあへんけーしろよ~。っしっししし」


 椅子「『じゃあ』の使い方おかしくね!?」


 トナカイ寧「トナカイが一匹……。トナカイが二匹……」


 サンタ葎「な、何だこれ……何が起きたんだ……!? さっきから見ていたけど、何が何だか、全く解らない……!?」


 灯? 「オイっ」


 サンタ葎「南屋さん……? 寝ていたんじゃ……」


 灯?「……相変わらずシケた面してんな、てめえ……」


 サンタ葎「げ、げ……お、お前……あ、アリカ……」


 灯?「何か食わせろ。肉、肉を持って来い」


 サンタ葎「へ、へい……。がってん承知……」



 こうして今に至る訳だ。


 

 トナカイ寧「トナカイが五十六匹……。トナカイが……はぁ……トナカイはあたし……」


 サンタ葎「いい――――」


 トナカイ寧「トナカ――――」


 サンタ葎「いい加減にしろっ! 寧さん眼を覚ませ!」


 トナカイ寧「……だってトナカイじゃないですか……」


 サンタ葎「トナカイがどうした! いいじゃないかトナカイ! カワイイじゃないかトナカイ! 何がそんなに不満なんだ!? サンタだけが主役なんじゃない……! 主役のサンタを運ぶのはトナカイじゃないかッ!」


 トナカイ寧「葎……さん……」


 サンタ葎「君のその格好……実に似合っている! まるでトナカイそのものの様だ! ああ、素晴らしきかなトナカイ!」


 トナカイ寧「そ、そこまで褒められると照れます……」


 サンタ葎「だからさ、君はもっと胸を張って良いと思うよ! 自信を持とうよ! 自分がトナカイである事にッ!」


 最早トナカイ「あたし……間違っていたんですね……! 決めました……あたし自信を持ってトナカイとして生きていきます!」


 サンタ葎「ああ! その意気だ! …………それじゃ俺は外で涼んでくるんで後よろ――――……」


 トナカイ「それとこれとは話が別です。逃がしませんよ?」


 サンタ葎「いやーッ!」



 その狂宴は明け方まで続いた。一部を除いた殆どの人間はかの夜の出来事を思い出したくないと語る。

 一方葎達を傍観していたヒーロー。そしてアシ。ガラとひきこMKⅢなどは穏やかな聖夜を過ごしたそうな。


 

 




オチなんて無い! 

 

 とりあえず、今からサンタを一狩りしてきます

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