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duplices  作者: rakia
48/71

交錯錯綜


 やります。やります――――! やり……(以下略



 うっとおしい霧の中を駆け抜ける。深く濃い水の粒子が体に纏わり付いてくる。

 あれらの存在は今まで以上にざわざわと心を煽り、嗚咽にも似た怒りが自分の内に湧き上がる。

 許さない。これは――――この霧の中から感じるのは、奴らから感じられる空気そのものだ。奴らがこの霧の原因なのか。ともかくこの中に奴らは居る。どうしてこんな事態になっているかは知らないが、掴み掛けた平穏を奴らが壊すというならば、その前に奴らを消してやる。

 「怪談」から生まれた虚像。実体の無い幻影から生まれた影なんて存在してはならないんだ。

 あいつらは何もかもを奪っていく。今はもう取り返しの付かない日々も。光の当たらない真実も。大切な友人達でさえ。そんな奴らがのうのうと我が物顔で存在していて良い筈が無い。

 視界は悪い。奴らを探すには気配を探るしかあるまい。ここから先は自分の領分ではない。

 丁度霧も出ている。こんな時の為に入れておいて良かった。ひやりとした感触を服の上から感じる。 

 存在しない者は存在しない者のまま、消えるのみだ。「ヒーロー」なんて何処にも居ない。怪異に襲われる人間を助ける者なんて存在しないのだ。どんなに助けを求めても、話の中の様に「ヒーロー」は助けに来ない。現実には悲惨な結末が待っている。

 あの時自分が助けを求めても、自分だけの所にしか(、、、、、、、、、)「ヒーロー」は来なかった。引き裂かれた友人たちの亡骸も、その骸から流れ出る血液の赤さも未だに忘れられない。最後に自分を助けた‘彼‘の表情も網膜に刻み込まれている。

 あんな悪夢を繰り返してなるものか。奴らなど、一片残らず消し尽くしてやる。

 また背中の後ろから死んだ友人達の声が聞こえる。痛くて痛くて堪らない。

 大丈夫ちゃんと殺すから。晴れない無念はあいつらを殺して償うから。 

 だから――――もう許してくれ。

 首の後ろでだらんと垂れ下がっているフードを頭に被った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 間違いない。今のは伊織さんだった。昨日と同じ格好で(、、、、、、、、)歩いていた。

 追いかけてどうするんだ私は。追いかけて。それで。それで――――。

 いや、そうじゃない。私は私があの子と話したいから追いかけているんだ。

 おかしな奴だと思われたって良い。勘違いだって良い。だけど泣いている友達(、、)をそのままにして置くなんて事は出来ない。あの子は昨日泣いていたんだ。その理由を私は知りたい。少しでもあの子の負担が軽くなるなら。あいつ(、、、)みたいに強引でもあの子に近づきたいんだ。

 我侭だと思う。伊織さんの心を無視しているかも知れない。だけど、程々の距離を取って当たり障りの無い関係を続けるぐらいなら当たって砕けた方が良い。その結果自分が傷ついたとしても私は後悔しない。自分に嘘を吐くよりずっと良い。

 短いコンクリートの橋を抜けた。五メートルもあるか分からない程短い橋だ。

 …………やっぱり見えない。

 白かった霧は何だか灰色みたいな色に変わり始めている。そのせいで視界の悪さに拍車が掛かっている。眼を凝らしてもあの子の姿は見付からない。あの子どころか、通行人の影すらも無い。

 私は後ろを振り返り、上を見上げた。

 石橋の上には、もう一つ橋がある様に見える。あの上には電車の線路が通っているのだ。

 私達が帰った時は電車も普通に出ていたが、この霧だ。おそらく一時的に停まっているのだろう。だからこんなにも人影が無いのだと思う。

 ……? 何か寒気がする……。

 少し先に小さな影が見えた。何か――――妙に小さい。あれは……人か……?

 それにしては小さ過ぎる。そう、まるで小さな人形だ。


「あの……誰か其処に居るの……?」


 返事が無い。私はその影の方まで歩み進んだ。

 徐々に影の形が確りと分かる様になってきた。ああ、あれは――――。

 ――――本当に人形じゃないか。

 セルロイド……というのだろうか? 蝋燭に似た樹脂で出来た肌が目に付く人形が、地面に立っている。それは女の子向けの着せ替え人形で、ヒラヒラとしている所々泥染みの付いた白いゴスロリ調の服装に身を包み、変化することの無い固まった微笑を湛えていた。そして左眼を長い薄汚れた色の金髪で隠している。

 何故こんな所に人形が置いてあるのだろう……? 誰かの忘れ物……?

 忘れ物にしては汚れている。まるで何日間も放浪したかの様な風貌だ。忘れ物だったらここまでは汚れていないだろう。忘れ物じゃない……だとしたら何なんだ……? 故意に誰かが道に置いた……? 不安定な点字ブロックの上に? 第一人形を二足で立たせるなんて面倒な真似をするのか。あの小さな足では立たせる事も難しい。それにあの人形……。

 私は人形の方をじっくりと観察する様に見た。雰囲気柄どうも不気味に見えてしょうがない。人形は同じくセルロイド製だと思う茶色の革靴を履いている。そしてその足で地に立っている。

 それが私には、自らの意思できちんと自立している様に見える。

 人形の口が開いた。


「私――――」

「…………!?」


 気のせいではない。確かに人形は喋ろうとしている。

 私の頭の中に聞き覚えのある「怪談」が浮かび上がってきた。

 メリーさん。昔の――――怪談話がたくさん載っている児童書の中の話だ。

 子供に棄てられた人形のメリーさんは、自分を棄てた子供の家に電話を掛ける。


 ――――私、メリーさん。今ゴミ捨て場に居るの。


 メリーさんを棄てた子供はその電話に怯える事になる。


 ――――私、メリーさん。今あなたの家の前に居るの。


 次第にメリーさんは自分を棄てた子供の家に近づいていく。


 ――――私、メリーさん。今あなたの家の前に居るの。


 反復された恐怖感は、転がした雪玉の様に膨らみ――――。


 ――――私、メリーさん。今、あなたの後ろに居るの。


 その言葉に子供が振り返り、メリーさんを棄てた子供がどうなったかの説明はされないまま終わる。

 ……思い出してしまった。燐太が私を怖がらせようとして、この話を聞かせてきたのだ。そして私は彼の頬を思いっきり殴ったのだった。

 まさか……これはその……メリーさん……?


「私……メリーさ――――」


 駄目だ。私はこんな所で止まってる暇は無い。止まる訳にはいかないんだ……!

 私は目の前の人形を素早く掴み、近くの川に全力で投げた。


「――――ん……。あっ」


 ぽちゃんという水音の余韻が空気を揺らす。メリーさんだと思う人形は私によって川に投げ落とされた。

 ……どうにかなった……。……恨まないでね……。 

 心臓がバクバクと脈を打つ。怖かった。怖かったけど――――どうにかなった。

 私は、伊織さんを追わないといけないのだ。悪いとは思うが、邪魔をするなら退いて貰う。

 …………やっぱり怖かった……。メリーさんを投げるなんて体験があるとは……。

 胸に手を当てると、心臓の激しい音が手に伝わってきた。

 息を深く吸って、吐く。激しい波が次第に収まってくる。うん……大丈夫だ。

 そういえば――――何であんな所にメリーさんが居たのだろう? いつもああいうの(、、、、、)と一緒に居るから不思議には思わなかったが……。

 周囲に視線を巡らせる。この白い霧は今更だが、何だか気味が悪い。

 まさか……この霧が関係しているの……?

 今まで見ていた幻想的な白さが、一気に黒色に近くなった気がする。

 ……とにかく……追おう……。

 念の為に川に向かって手を合わせ、私は再び走り出した。

  



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 体を反り返らせ顔を逆さにした長い髪の女が四つん這いで、中年の男性に迫っている。

 周囲には霧が出ており、男性以外の姿は見受けられない。

 霧は深く、一寸先すらも見る事が困難である様な有様である。

 その中を逆さになった女が蜘蛛の如く動き回る。四肢を器用に使い、人間とは到底思えない動きで男性の後を追う。

 勿論男性はそれから逃げている。たるみ切った体を揺らし、異様な風貌の女を振り切ろうと、全力で走っているのだ。だが、女はそれ以上の速さ(スピード)で男性に迫る。

 逆さになっている女は、男性を細い路地の階段下まで追い詰める。男性は体勢を崩し、石段に背中からもたれ掛かる様に倒れた。

 

「な、何だ……! こいつ……。こ……こっち来んな……!」


 男性は近づく女に、自身の持っている手提げ鞄を投げつけた。

 しかし、鞄が当たろうとも女は怯む気配が無い。女は男性を逆さになった顔でしげしげと見詰め、乱れ髪で殆ど見えなくなっている口を開いた。


「う……ああ゛……ううう゛……アアア゛……」


 黒い線の中で動く乾いた唇からは、唸り声の様な声しか出ていなかった。

 そう。女は声らしき声は発していない。ただ唸っただけだ。 

 唸るだけ。それだけでも男性の恐怖を煽るには十分なのである。理解の出来ない事。正体が分からないモノ。経験した事の無い経験。そういうものに人間は恐怖を感じるのだ。

 男性の恐怖は新たな「怪談」を生み出そうとしていた。

 

「ああ゛……アアアァ゛…」


 擦り切れた声が響く。


「あっ……た、助けて……誰か……誰か居ないのか! おい! 誰か!」


 逆さまになった女の()が男性に因り出来上がっていく。女の体は男性から発せられる恐怖を糧に成長していくのである。

 元々、この女は漠然と逆さまであるという属性を持っているだけの話でしか無かった。

 女は「怪談」としてはまだ未完成(、、、)なのだ。男性に目撃され、男性が他人に話し、それがまた誰かに伝わり、新しい属性を付与して語られていく。憶測で、面白半分で付け足された女の「怪談」が感染(、、)の連鎖を繰り返す事で、逆さまの女という「怪談」は完成する。

 その筈だった。


「あーっはっはっはっは!!」


 おかしな笑い声は霧中に木霊する。何とも言い難い場違いそのものである声だ。

 突然のその声に、恐怖で体を竦ませていた男性は口をぽかんと開けた。

 白い膜の向こうで黒い()が動く。その影に首は無かった。無かったというより、太過ぎて無い様に見えるのである。

 ――――何かを――――頭巾の様なものを頭に被っている? と男性はそう理解した。

 

「こんな所でまた変なのが人を襲っている。まぁこれはどう考えても――――ヒーローの出番だ!」

「…………は……?」


 男性はその声が言っている意味が解らず、助けを求める事すら忘れて呆けた表情になった。

 逆さまの女でさえ、その影を凝視している。

 影は徐々に近づいて来る。 

 影を見ていた逆さまの女は、突然現れ、自分の邪魔をした影に飛び掛った。


「ウぁあバああァァ! し……ネ……ジャマするナ」


 聞き取り難い片言の言葉を、女は始めて発した。

 女は飛び掛るのと同時に、体の支えにしていた両腕でその影の首の辺りを掴もうとした。

 しかし、女の腕はその影を捕まえる前に両方とも千切れ、吹き飛んだ。


「だからヒーローと言っているだろう」


 腕を失い、地べたに這う格好になった女に黒い影が近づく。


「わたシは……マだ……サか――――」

「お前の事なんて聞きたくないそうだ(、、、、、、、、、)


 黒い影の足が女の頭部を踏み潰した。 

 ぐしゃりと嫌な音がその始終を見ていた男性の耳に入る。


「ひィ……!!」


 紐の切れた人形の様に倒れた、頭部の無い女の体は、風に解かされる砂の様に消えた。

 男性の視界には最早その、ヒーローと名乗る不鮮明な黒い影しか見えない。

 霧の中で黒い影がゆらりと揺らぐ。

 殺される。そう思った男性は頭を抱え、瞼を閉じた。

 ――――…………。…………?

 男性が眼を閉じてから、十秒は経っただろうか。痺れを切らした男性は、瞼をゆっくり開けた。

 そこには誰も居なかった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 

「……ああ。分かっている」


 白い覆い(ヴェール)の先で微かな声が聞こえる。それは呆気に取られている男性の耳には入らない小さな声である。静かであり、先程のものと同じとは思えない落ち着いた声だ。


「……ちゃんとやるさ。俺はお前の理想の(、、、、、、)ヒーローだからな」


 黒い影は次なる獲物を探しに、白い隠れ蓑に身を隠した。

 その声は台本通りに台詞を言う役者の様だった。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 街の中に「怪談」が溢れている。こんなにも喜ばしい事は無い。

 世の理が反転しているだなんて。××達は確かに此処に存在している。黒にも白にもなれない灰の××達は此処に生きているのだ。そうだ。そのまま総て曖昧な灰色になってしまえ。線引きされた‘線‘など無くしてしまえば良い。嘘が真実に真実が嘘に。それこそ××達が望んだ世界だ。

 どうだ? この灰色はお前達にも心地良いか? この深い霧に呑まれて、お前達は××達の「怪談」に組み込まれるのだ。とても愉しい光景だろう? さあ、××達を見て。見て――――見ろ。

 見ろ。お前たちが生み出した××達を見ろ。「怪談」を××達をもっと見ろ。

 総ての準備は整っている。あっち(、、、)の方にも、相応しい怪談を用意した。一応××達の産みの親でもある。それなりのもてなしをしなくてはならない。

 ああ嫌だ。まだ逃げるの? 何処まで逃げても××は××から逃げられるはずが無い。

 やっぱりあいつを殺さなきゃ駄目か。あいつ――――あいつはどうしようか。時間はまだ存分にある。ゆっくりと探し出すとしよう。

 ××には心を開かなかったのに、あいつの優しい囁きには耳を貸した。そんな××を××は許さない。あいつを目の前で××自身の手で殺したら××はどんな顔をするだろう? 愉しみだ。

 ××はやっぱり逃げている。逃げても無駄だというのに。どうせもう直ぐ追いつくのだから諦めれば良いのにどうしてここまで足掻き続ける? 受け入れてしまえば楽になる。なのに。

 まぁ良いさ。あっちでも、もうじき始まっている頃だ。

 苛められっ子は苛めっ子に逆らえない。苛められっ子は苛めっ子を殺せない。だがこの理が崩れた世界なら、苛められっ子は苛めっ子に逆らえる。苛めっ子は苛められっ子に殺される。

 「怪談」は自由になる。

 自由になった「怪談」は現実を蝕み、数珠繋ぎに繋がっていく。

 此処だけではない。既に××と一緒に生まれた「怪談」達も動いている頃だ。

 月夜に現れ、鏡の中へと消える、日々歪に変化(、、)していく道化師。

 黄昏の時間に老教師の過去を繰り返す(、、、、、、、)、異形者達の教室。

 引き摺られ、引き摺り返す、苛めっ子を殺せないという「怪談」自体の制約(、、)を解いた女の子。

 そして××――――。

 最初に「怪談」を始めた人間がどうなるかって? それは――――。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 あいつ等何処に行きやがった? くそっ全然見ねぇ。

 何処も彼処(かしこ)も霧だらけだ。こんな中で二人も人を探すとなると骨が折れる。

 どうして藍子はああまで血相を変えて飛び出したのだろうか。それに正一も様子が変だった。

 ……下痢か? いや……でもそんな感じじゃなかったと思うなぁ……。

 人も何だかまばらだし……。この霧が何か関係してたりして。……無いか……。

 中年の化粧が濃いおばさんが俺の脇を通る。どうにも不安そうな表情をしている。

 俺は前方へと視線を伸ばす。うっすらとした複合ショッピングモールの巨大な(シルエット)が聳え立っている。多少形は角張っているが、こんな中でだと大きな山に見えない事も無い。

 トイレ借りにこんな所まで来るわきゃねぇな……。だけど近くの公園にあいつ等が居そうな感じはしないしな……。せめてメール返すか、電話してくれれば良いのに……。

 第一、トイレ内にあいつ等が居るにしろ、正一はまぁ良いだろう。男同士だったら問題無いし、公衆便所なら尚の事だ。だがしかし、藍子はどうする? まさか女子トイレに入る……とか?

 ………………いやいやいやいやいやいや……それは駄目だろ……。俺は良いんだけどさ……。あれ? 違う違う良くない良くない。……俺は何言ってんだ……。

 にしても藍子の野郎……心配させやがって……。


 ――燐太さん――


「ん? 何だアシ?」


 ――この霧……おかしいですぜ……。どうにもあっしと同じ匂い(、、、、)がします――


「同じ匂いィ? それって二重存在か? だったら葎じゃねーの?」


 ――葎さんも居るとは思いますが、それ以外にもう一人居ますね。それとあっしら二重存在に似ている(、、、、)のが一つ。他にも奇妙なやつらがこの中には潜んでますねぇ――


「葎以外の二重存在っていうと、伊井都さんぐらいしか知らねぇぞ? つーか奇妙な奴らって何だよ」


 ――さぁ――


「分かんないのか……。だとしたら余計に心配だな……」


 ――藍子さんですかい?――


「そりゃあ心配だって。あいつはある意味俺以上の馬鹿だぞ」


 ――という風に藍子さんに伝えて置けば良いんですか――


「やっぱ無し! 今の無し!」


 ――いやはや、燐太さんは藍子さんに頭が上がらないんですねえ。弱みでも握られてたり?――


「んな訳無いだろうが! ……あんまりにも引っ込み思案だから見ていられなかったんだよ……。あいつ、気が強そうに見えるけど結構弱いからな……手ぐらい引っ張ってやんないと」


 ――ヒューヒュー――


「うるせぇよ!? そんなんじゃねぇからな!?」


 ――でも真っ先に正一さんじゃなくて、藍子さんの名前が出たじゃないですかい――


「うう゛っ……そ、それは……あ……あ、藍子の方が付き合いが長いからしょうがないだろ!」


 ――素直になれば楽になりますって――


「お前が期待している様な事は無い!!」


 ――そうですかねー。……! ……燐太さん、気を付けて下さい。何か居ます―― 


 足に力が入る。それだけアシが警戒しているという事だ。

 何か、というと、さっき言っていた俺達以外の二重存在の事か? 

 背後で水が滴る様な音が聞こえた。

 

「あ? 何だこの音……?」


 水を吸った布が地を濡らしている如き音だ。その音は段々俺の方に近づいて来ているのが分かる。

 のんびり振り返るのも、どうかと思うので一気に振り返る。

 振り返った先には、今では子供ですら持っていない様な古臭い女の子向けの人形が立っていた。

 高そうな人形だ。以外にこういう人形は高いのだ。昔藍子がそう零していたのを覚えている。

 服装は薄汚れていて、擦り切れ使い古された印象を持つ。

 持ち主らしき子供は居ない――――となると、人形が家出した……? 毎日振り回されて、強制的に服を脱がされ着替えさせられ、たまに俺みたいな奴に下から覗かれ、夜には放り出されるという悲壮な生活に疲れた人形が家出したのか……!? 


「ひ、非行人形……!?」


 ――型に嵌った生活に嫌気が差したんですよ。きっと――


「あーそういう事か」


 そうか……生活に疲れて逃げ出した熟年夫婦タイプじゃなくて、まだ見ぬ世界を見ようと外へ飛び出したお嬢様タイプだったか。


「…………?」


 人形は俺の言葉に少し首を傾げた。

 なるほどなぁ。こいつも苦労したんだな……。

 人形は開かない筈の口を小さく開いた。


「私……メ――――」

「…………!?」


 違う……!? こいつ違う……! この人形は行儀の良い生活にうんざりしたお嬢様じゃねえ……!

 思い出してきたぞ……! こいつは、昔俺が学校で借りてきた本に載っていたメリーさんとかいう奴だ……! 知らない内に背後に回っていて、「後ろががら空きだ……」っていう妖怪じゃん……!

 確か藍子を怖がらせようとしつこく話していたら、我慢の限界に達した藍子にぶん殴られた曰く付きの話……!! こんな形で巡り会うとは……! 

 やばい……。どうしたら良いんだ? 名前を名乗られ、後ろに回られたら負けだと聞いた事がある……! 既に名前は言い掛けている。伝承通りだと人形はこの次に俺の背後に回るだろう。そうなると俺の敗北が決定する……! 

 …………!! そうか……! こんな時は――――!


「うぉぉおおおおぉおおおぉ!! 飛んでけ! この野郎!」


 俺は多分メリーさんだと思う人形を、足で蹴り飛ばした。

 

「――――リーさ……あっ」


 人形は自分の名前を最後まで言い切る事が出来なかった。

 二重存在の力で尋常じゃない力を得た足をまともに受けた人形は、矢の様に霧を切り裂いて飛んでいく。そして見えなくなった。相当の力を入れて蹴ったので、相当遠くまで飛んでいっただろう。


「おっしゃ! やったぜ!」


 ――ホ~ムラン――


「やっぱ何事も先手が大切だという事だな!」


 ――そうなんですかい?――


「だってよ、後ろに回られていたら負けてたぜ? ……あれ? でも最初の時点で後ろに居た様な……」


 ――退けたんですから良しとしましょうや――


「だよなー。……うわっと! こんな事してる暇じゃねえ!! 行くぞアシ!」


 ――はいはい――


 一時はどうなる事かと思ったぜ。まさかメリーさんが出てくるとはなぁ。

 ……何かおかしいな? どうしてメリーさんが歩いてんだ? 野良メリーさんとか……? まぁそれよりもこっちだ。さっさと見つけねぇとな。

 霧がもっと深くなる前に。

 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 駅前まで来てみたが、凄い霧だな。うっかりすると道に迷ってしまいそうだ。

 「都市伝説」の妖怪か……。本当にそんなの居るのか……? 

 視線を巡らせてみても、見えるのは浅黒い霧ばかり。まばらに人が通っているだけでそれらしい影は見当たらない。この時刻だとこんなものか。だけどそろそろ帰宅ラッシュが始まる筈だけどな。 

 俺は駅のホーム下まで歩いて行った。やっぱり人気(ひとけ)は皆無と言って良い程少ない。

 ああ、そうか。この霧じゃ電車は止まるよな。という事は風早とかも足止め喰らってんのかな。

 ガランとしたホーム下には、数人の人達が携帯電話を弄っている。大方、家族に迎えに来て貰おうとしているのだろう。こんな中じゃあバスも出まい。見通しが悪過ぎる。山道に慣れている運転手ならば何とかなりそうだが、下手に運転しようものなら事故を起こしかねない。危険性(リスク)を冒してまでこの中を来ようとする者は少ないと思う。

 俺はもう一回ホーム下へと視線を遣った。学生が多いが、仕事が早く終わったのだろう、会社員の姿まである。その中に見覚えのある姿を見つけた。

 人の良さそうな童顔。少女というより少年の様な雰囲気を纏っている。髪は茶髪に一見見えるが、聞けばあれは地毛だと言っていた。陽射しを浴びすぎて脱色したらしい。

 寧さんみたいに室内でゲームの鬼と化すのもどうかと思うが、彼女の様に少年達に混じって外で遊びまくるというのもどうなのだろう? 人間程々が良いという事か。

 どうやら俺の視線を感じてか、その少女――――南屋灯はこちらを向いてニコニコと笑い掛けてきた。

 歩み寄りながら、俺も人から言わせれば引き攣った笑顔を顔に浮かべる。 

 先に口を開いたのは南屋さんだった。


「栖小埜さん! いや~皆どっかに行っちゃったから心細かったんですよ!」


 心細そうな声には到底聞こえないのだが。彼女はそう言った。

 彼女の周りには、彼女を囲む様にして三つの学生鞄が置いてある。ボストンバッグ型の、紺色で収縮性に乏しい素材で出来ているどこにでもあるスクールバッグだ。

 一つは南屋さんのものだと判る。彼女の鞄には、キノコのキーホルダーやら、南米のお面にそっくりなキーホルダーなど訳の分からない物がいっぱいくっ付いているから直ぐに判別出来る。

 もう一つは柳葉さんのものだろう。彼女のは簡素で何かを付けている訳ではないからそれで判った。唯一彼女の個性を表している物と言えば、風早から貰ったと言っていた不機嫌そうな熊の小さいぬいぐるみのキーホルダーが持ち手近くの金具に紐で括り付けているいる事ぐらいか。

 あまりこういう悪口は言いたくは無いが――――風早死ね。

 目の前でいちゃいちゃしやがって。いい加減うざったいからくっ付けば良いのに。

 柳葉さんとあいつとのやり取りは眼に毒だ。見てると精神的に消耗してしまう。

 消去方でいうと残るは風早の鞄となる。こいつは南屋さんのよりも判り易い。何故なら鞄にでかでかと痛々しい単語の羅列が見られるからだ。こんなに鞄を汚してあいつはどうしたいのか、俺には一寸(ちょっと)解らない。これでは自己アピールではなく、事故アピールだ。

 とりあえずさっさと柳葉さんとケリを付けて、早々に死ね。それなら思い残す事は無いだろう。


 ――葎よ、他人は自分を映す鏡だという言葉は知っているかね?――


「……? 知っているけど? それがどうした?」


 ――いや……知っているなら良いのだよ――


「…………?」


 ガラは一体何の話をしているんだ? 

 意味が解らなかったので、ガラの言っている事は流す事にした。

 

「あのー栖小埜さん? どうして一人でぶつぶつ喋っているんですか……?」

「えっ!?」


 またやっちまった……。

 南屋さんは不思議そうに片眉を高く上げている。どうして俺は、こうも似た様な失態を繰り返してしまうのだろう……。


「コ、コレハァ……フクワジュツノレンシュウダヨ……! ボクガラ! イケスカナイヤロウナンダ!」


 精一杯の裏声で俺は誤魔化しに掛かった。

 鏡が無いから何とも言えないが、今の俺の顔はヤバイと思う。

 俺の偽腹話術を見た南屋さんは、両手を軽く合わせる様に叩くとああ、と納得した表情になった。

 

「そうだったんでっすかーっ! 年末での隠し芸の練習ですね! 今から楽しみだなぁ!」


 ……喜んでくれて何よりだ。そのせいで俺は腹話術の練習をしなくてはいけないが……。

 良い子なんだよ……ちょっぴり少年テイストが入っているだけで……。

 これ信じちゃうか……。大体さ、いきなり腹話術の練習する人間は居ないって……。

 

 ――もう面倒だから私達の事を言ってしまえば良いのではないか?――


「それはアリカ(あいつ)が癪だから嫌だ」


 ――彼も難儀な性格だね。灯みたいな子だからこそ言い難いというのもあるのだろうが――


「言い難かろうが、ちゃんと言って貰う! じゃないと何発もあいつに殴られた俺の気が済まない!」


 ――根に持つタイプか君は――


「そりゃそうだ! 俺には言うだけ言って置いて格好付けやがって! あのシスコンがッっ!!」


 ――はたして君はそれを本人が出てきた時に目の前で言えるかな?――


「言えないから今言ってるんだろ!!」


 ――へタレめ。その口でよくシスコンとか言えるな――


 だって真っ向から言ったら死んじゃう。っていうか殺される。

 ガラと話していた俺に南屋さんが声を投げ掛けた。


「栖小埜さん!」

「はい!?」


 またやっちまった……!!

 南屋さんはキラキラした眼で俺を見ている。無垢な瞳は、凶暴な奴(アレ)が中に潜んでいる事を思わせない輝きっぷりだ。あんまりにも眩しいので俺は思わず眼を逸らした。

 あぁ……これは本気で腹話術だと思ってるみたい……。

 気まずい表情になっているであろう俺に対して、彼女は興奮した口調で捲くし立てた。


「わぁ凄いなぁ! どうやってやってるんですか!? これから裏声を出したりするんですね!」

「ソウダヨ。ボクガラクン。イヤミガイキガイノ、ムナクソワルイエセシンシナンダヨ」


 ――根暗でへタレのメロンパン阿呆に言われるのは、甚だ心外だ――


「おおう……中々濃い設定ですね……! あ、そうだ。ところでシスコンって誰です? それも設定に盛り込んでるんですか?」


 こ、この子は何という答え難い質問を……! 君の中の荒くれ者だとは口が裂けても言えない……!

 

「っていうか、シスコンって何ですか!」


 …………おおっと、それ以前の問題だった様だぞ? 

 これはチャンスだと思った俺は、取り乱した表情を修正して南屋さんに向かって聊か慇懃にも取れる声色で説明した。……勿論嘘の情報を。


「シスコンはね! あれだよ! コーンフレークの一種だよ! なんかね、今物凄くそれが食べたい気分なの!! ああ、もうサクサクと!」


 ――流石にそれはないだろう……――


 ガラは呆れたのか、萎む様な声を発した。


「まあ見てろって……」


 予想通りなら彼女はこんな突飛な事を言ってもすんなりと受け入れる筈……!

 

「シスコン? あ~あれ。だったら――――」


 俺の言葉を聞いた南屋さんは、下に置いたままの自分の鞄の中を探り始めた。

 一寸待て。彼女は何をしているんだ?

 あったー! と明るい声を出した南屋さんは、大きな四角い箱を両手で俺に差し出した。


「はいどーぞ!」


 南屋さんが俺に渡してきたそれは、紛れも無く‘シスコン‘という言葉に類似しているコーンフレークの箱であった。あまりにも南屋さんが嬉々としてそれを差し出しているので、俺はついつい自分でも無意識に近い状態で箱を受け取っていた。

 

「これは……」

「いやぁ~良かったです! 偶然(、、)コーンフレークが鞄の中にあって!」


 いえいえ、良くないです。どうして鞄の中にコーンフレークの箱が偶然(、、)入っているのでしょう?

 俺は南屋さんの鞄と、コーンフレークの箱を見比べた。入らない事も無いだろうが、中は相当に狭くなる。無理に入れたらその他の勉強道具やら何やらを圧迫しかねない。

 つまりこれはどういう事かというと、明らかに南屋さんの鞄はその外見からは想像も付かない収納力を兼ね備えている――――という事になる。彼女の鞄は四次元構造にでもなっているのか。

 予想外の事態に俺の心に訪れかけていた平穏は、脆くも崩れ去った。そして、苦し紛れな言葉で場を繋ぐ。


「あ、ありががっとうう? で、でもさぁ……やっぱ牛乳無いと……だ……だから……これは返す……」

「そうですか……。そうですよね……。牛乳ですか……。今日は(、、、)持ってきていないんですよね……ゴメンナサイ! 栖小埜さん!」

「え……あ――――こっちこそごめんなさい……」


 南屋さんは残念そうに、頭を下げた。

 …………待てよ? おかしいぞ……。今日は(、、、)ってどういう事だ……。いつもは入っているのか……? 牛乳が……? はははは……。…………えー……? どういう事かな……?


「そうだ! 栖小埜さん、藍子ちゃん達捜すの手伝ってくれませんか!?」

 

 南屋さんは思い付いた様な顔でそう言った。

 

「……良いけど――――逸れたの?」

 

 そういえば、どうして風早達が居ないのかまだ聞いていなかった。

 そうなんですよ――――と言いながら南屋さんは俺の質問に困った表情で頷いた。


「皆トイレに行くって言って、何処かに行っちゃったんですよね……。もう結構時間経っている筈なのに……」

 

 彼女にしては珍しく曇った表情だ。一人取り残されて不安感を感じているというよりも、友人の身を案じている様子である。第一に友達の事を考える所が彼女らしい。

 

「……うん分かった。じゃあ――――俺も一緒に手伝うよ」

「ホントですかーッ!? ありがたや、ありがたや!」

 

 俺がそう答えると、南屋さんは顔を綻ばせた。

 こういう子だから見捨てられないのだ。何というか保護者というか……彼女の兄にでもなった気分だ。

 

「荷物はどうする?」


 俺は風早達の鞄を見た。

 

「そうですねぇ……置いていくと不味いですかね……」

「端の方に置いておけば大丈夫じゃない?」

「んーでも……」

「大丈夫だって盗まれないよ。特に風早のは」


 そんなガッチガッチに改造(カスタマイズ)された鞄なんて絶対に。


「それは――――そうですね。ううん……置いていきますか。荷物持って探しに行くのもどうかと思いますし……。また戻ってくるなら――――……」

「メールとか送ってみた?」

「送ったんですけど、返事が来ないんですよね――――秋庭君はまだアドレス交換してませんし……」

「秋庭君……? ええっと――――」


 聞き覚えの無い名前だ。また増えたのか……?

 俺の表情を察したのか、南屋さんはその‘秋庭君‘なる人物について説明してくれた。


「秋葉君は……むむっ……風早君の対極にいそうな人ですよ! 背は私より少し高いぐらいで、眼鏡掛けてます!」


 風早の対極というと……。がさつでなく……。常識を持っていて……。厨二病にも罹っていなくて……。静かで……。繊細な――――君だから男だよな……? 

 ――――繊細な少年か。何だ素晴らしいじゃないか。


「……そっか。そんじゃ、早速――――捜そうか!」

「はいっ! でもその前に鞄ですよ!」

「あ……そうだった……」


 とりあえず、俺と南屋さんは風早達の鞄を安全な所まで運ぶ事から始めた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 逃げなくちゃ。でも何処へ? 逃げ場なんてあるのか。何処まで逃げても逃げ場など無い。

 いつも(、、、)追いつかれてしまう。嫌だ。もうこんなの嫌だ。

 どうしたら良い。どうすれば逃げられる。あぁ――――来る(、、)。水面に一粒の雫を落とした様に、自分の中に波紋が広がっていくのが分かる。時間が無い。

 此処で足を止めても、進んでも大した違いは無いだろう。実体の無いモノに追われているのだから逃げても逃げ切れる筈が無い。それは自分の影なのだ。自分が居る限り自分とそれ(、、)は切って離す事が出来ない。何処に居ても自分の後ろ付いて来る。

 だから――――これは追われているのでは無いのか。自分がそれを後ろに付けているだけで、影は自分の後を追って来ているのでは無いのか。

 嘘だ。それは着実に迫りつつある。黒い影は現に此処まで伸びて来ている。ジワリジワリと踵から登り、背中に広がる。そして首に絡み付き、肌を覆い始めている。覆われた肌が焼ける様に痛い。融かされているのか。黒い影が皮膚に代わり体表を包み込む。肉に食い込み体に染みてくる。

 影が――――自分が――――自分とは誰だ? 影か――――自分? 自分とは何だ? 自分は最初から影では無いのか。影は自分で自分は影――――益々解らない。影は誰だ。自分か。両方とも自分なのか。違う。別だった。じゃあ何時(いつ)からこうなった。それも解らない。

 脳まで達した影が嫌な記憶(、、、、)を引きずり出して――――。そうだこれが原因(、、)だ。

 止めろ止めろ止めろ止めろ。そんな記憶を穿り出してどうする。そんなのは思い出したくない。苦しい。息が――――出来ない。涙が滲む。(まなこ)が燃える様に熱い。嗚咽が洩れる。

 それはもう終わった記憶だろう。終わった――――終わったんだ。

 悪寒と共に神経にまで影が滑り込む。血液に混じり体の中に流れていく。気持ちが悪い。段々影は自分に近くなっている。いいや自分が影に近くなっている。

 ごめんなさい。ごめんなさい。謝るからもう許してください。もう止めてください。

 体の内側を自分のものにした影は、喉から溢れてきた。苦しい。影に溺れてしまう。これ以上行き場など無いのにまだ溢れるのか。要領など当に超えているのに。まだ。僅かに残っている自分の表面(、、)が消えてしまうではないか。

 自分が――――消えていく。あれ(、、)が来る。消えていく。消える。

 誰か助けて。あ――――助けて。消えたくない。せっかく――――。

 来た――――。

 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 葎と灯は駅前の通りの一角を共に歩いていた。駅前公園内など、目ぼしい場所は調べ終わったが矢張り燐太達の姿はその何処にも認められなかった。

 燐太達を捜そうにも捜す当てが無い。このば見通しの言い場所へと移動した所で徒労に終わる。だからと言ってじっともしていられないので、葎と灯は二人でうろちょろと駅の近くを歩き回っているのだ。

 灯はふう、小さな吐息を零し、疲れた様子で膝頭を両手で押さえた。それを見た葎は彼女を気遣う様な表情になり立ち止まった。


「疲れたでしょ。何か飲み物でも――――何が良い?」


 身長が大きい葎は歩幅も大きい。その点灯は身長も小さければ歩幅の狭い。その二人が同じペースで歩いていれば、当然と言って良い程歩幅の狭い方が疲れてしまう。それでなくとも先程から歩きっぱなしなのだ、葎は休憩の意味合いも含めてそう言った。


「良いんですか!? あ……でも……」


 灯は遠慮がちに眼を伏せた。


「良いの良いの。遠慮なんかしなくて良いって」

「それじゃあ……カオスコーヒーのブラックで出来ればカフェイン五十倍配合のやつを。あ、でも無かったら何でも良いですよ。奢ってくれるだけで満足なんで!」


 ――――それは……本当に売っているのか……?

 カフェイン五十倍配合という文句からしてその危険性が窺える。名前も尋常ではない。

 葎は念の為に、灯にもう一度訊いてみた。


「南屋さん? そんなに急いで大人の階段を駆け上がらなくても良いと思うよ……? 無理してブラックを飲むならカフェオレとかの方が……」

「いいえー! あの混沌とした苦さが癖になるんですよ!」


 ――――混沌とした苦さって……何……!! カオスってそういう意味だけどさ……!!

 文字通り口の中が混沌と化すのだろうか? 葎はえげつない想像をして勝手に身を震わせた。


「わ……分かった……か、買ってくる……」

「この辺りで待ってますね~!」


 手を振る灯に見送られながら、葎は霧の中を進んだ。

 見通しが悪いにも程がある。煙でも焚いたかの様に凄まじい濃霧だ。

 葎は少し右手を横に振って霧を払い除けてみた。霧は纏わり付いてくるだけで、払い切れない。流れは少しだけ変わった様だが元々滞留しているので意味は無い。

 無論そんな事をしても霧が晴れる訳が無いのは葎だって解っている。気分的な問題なのだ。霧とは言えど、細かい雨と変わらないそれはしっとりと体を濡らしてくる。次第に黒くなりつつあり、不穏な予感さえ感じさせる霧に包まれるのは、気分が良いとは言えないのである。

 葎は首を左右に動かした。

 駅前には自販機が少ない。その代わりにコンビニエンスストアは多い。

 つまり駅を利用する客層に対応しているのだ。多様化しているとはいえ、基本的に飲料しか売らない自販機よりも、ある程度のものなら殆どが手に入るコンビニエンスストアの方が需要がある。駅を利用する客層は会社員か学生が大半を占めるので、出勤前や通学前などに何かと揃えることが出来るコンビニエンスストアの方が重宝されるのである。 


「コンビニ行くか……」


 葎がそう呟いた時だった。

 湿った音が黒いアスファルトの地面を濡らす。ガリガリというプラスチックを引っかいた様な音も同時に響く。何か居る――――葎は身構えた。


 ――これが真の言っていた「都市伝説」の妖怪かな――


「かもな……。うー……いかにも『怪談』って雰囲気だな……」


 ――怖いかね?――


「意外と怖くないな……。まあこういうもんだろ。んじゃ、ガラ頼むぞガラ!」


 ガラと葎は入れ代わった。

 じめじめとした音は背後から来ている様だ。

 状況としてはあまり好ましくない。背中を取られているという事は何時(いつ)襲い掛かられても不思議ではないのである。だが、ガラの表情に焦りの色は無かった。

 葎と入れ代わったガラの背後からは、西洋風の人形が忍び寄っていた。明るい金髪は汚水を被っており、軽く汚れが付いていただけの白いワンピースは泥が付着し、水を吸って重くなっている。

 本来は薄汚れている不気味な人形と言った所なのだが、川に投げ込まれ蹴り飛ばされた結果、この様な大分汚れていて、今にも壊れそうな悲惨な姿に変貌してしまったのである。

 メリーさんは泣きそうになっていた。どうして自分は悉く怖がらせるのを失敗するのかと。

 怖がらせるのが使命であるのに一度も怖がらせられないどころか、名前さえ最後まで言わせて貰えなかったのだ。最早、メリーさんの精神は限界を迎えていた。そんな折、漸く良い感じで怖がりそうな人間を見つけたのだ。身長が高く後姿には高圧的な印象を受けるが、そういう人間程怖がり易い。 

 この自分(、、、、)に人を怖がらせた経験は無い。しかし『怪談』自体の経験としてはある。

 二回も失敗したのだ。今度こそはと、メリーさんは名乗りを挙げようとした。

 ――――…………?

 声を発する直前にメリーさんは自分が書き換えられるのを感じた。

 ――――苛めた人間を……殺せ?

 どういう意味だろう。まぁこれも自分の目的の一つになっただけだ。

 メリーさんは自分の名前を言った。


「私……メリーさん……今あなたの後ろに――――」


 何時の間にか目の前に居た筈の男が消えている。

 おかしい。自分は目を離していなかった。消えた――――?

 メリーさんの後ろから、秋には冷た過ぎる涼しい声が飛んできた。


「――――私はガラさんだ。今貴様の後ろに居る」


 ――何をやってやがりますかー。この野郎……――


「ま、負けタ……」

「ふむ……これは相手の背中を取ったら勝ちなのかね?」


 ガラはメリーさんの後ろに立っていた。

 ――――また……駄目だったの……ッっ!

 ガラの声を聞いたメリーさんは自分がまた(、、)失敗した事を悟った。

 瞬間、メリーさんの中の、何か大切な糸がぷつんと切れた。


「ううっ……うああああぁああぁぁぁん!!」


 泣き声の様な叫びを残して、メリーさんは走り去っていった。


「おやおや、どうしたのか」


 ――お前、あれ多分メリーさんだろ!? 泣かしてるんじゃねえよ! 可哀想だろうが!――


 葎は何処へと消えたメリーさんが不憫でならない。ガラに苛められた同士としての同情である。


「そう言われてもね。隙だらけだったので、つい勝ってしまった」


 ――だとしても、そこはメリーさんに形だけでも勝ちを譲ってやれよ!! 彼女泣いてたぞ!? ――


「真剣勝負に譲るも何も無い。……それはそうと妙だね……。あれに私を殺そうとする意思は無かった」


 ――ん? ……無害って……事か?――


「まぁ――――そういう事だね」


 ――何だよ……じゃあ真さんの勘違いか……? このおかしな霧も――


「いいや……そうでも無さそうだ。アレを見ろ」


 ガラは前方に指を指した。彼の指の先には黒い影が二つ――――。一つは長い髪の毛が影になっているので女性だと判る。もう一つも体の線からして細いので女性だろう。


 ――あれがどうした……?――


 遠目には女性二人が向き合っている様にしか見えない。

 ――――あれ……? でも……これって……。

 そこでその光景の歪さに葎は気が付いた。二つの影の内の一つが、もう片方を避ける様に後ろに下がっている。その影はもう片方の影に迫られているのだ。

 後退していた影が尻餅をついた。

 

「……殺そうとしているな」


 ――はぁ!?――


 ガラは二つの影の方に飛び出していった。

 霧は消えないが、視界は明らかになっていく。

 女性が二人――――片方は学生だ。薄い化粧にセミロングの茶髪。灯とは違って染めたものである。その表情には恐怖が窺える。

 もう片方は伸ばしっ放しの黒髪。顔は見えない。そして――――ボロボロの袋を右肩に担いでいる。

 その袋に葎は見覚えがあった。

 ――――ひきこさん……!?

 あれは自分とガラが一度倒した筈ではないのか? それに服装が違う。自分が遭ったひきこさんはもっと汚らしい――――。

 黒い髪の女はシンプルな黒いブリーツスカートの下に長いタイツを着用しており、上半身は桑染くわぞめ色のニットワンピースで固めている。

 どう見ても以前のひきこさんではない。葎の記憶ではひきこさんは浮浪者に近い格好をしていた。

 黒い髪の女は尻餅をついている女子学生の腕を掴んだ。女子学生は抵抗して、黒い髪の女の腕を駄々をこねる様に叩いたが、黒髪の女の手は依然として学生の腕に張り付いたままである。


 ――お洒落に目覚めた……!?――


「そうかもね――――っと」

 

 ガラは女子学生と女の間に割り込み、女の腕を掴み取った。


「その袋に入れるんだろう? 懲りないね、君も」


 長い髪の奥から女の顔が現れる。


「……整形でもしたのか? 以前はそんな顔ではなかった気がするのだが――――」

「……どこかであったかナ?」


 女は歪な笑みを浮かべてガラの腕を振り払い、飛び退いた。


「ははあ……あれとは違うのか? 念の為に聞いておこう。貴様は誰だ?」

 

 立てない女子学生の前に立ち、ガラは黒髪の女と向かい合った。


「ひきこさん。私はひきこさン……!」

「案の定というか当然か……。ひきこさんにメリーさんね……。何とかさんばっかりだな」


 溜息でも吐きそうな様子でガラはぼやいた。


 ――こ、この前の奴とは違う……!? ――


「らしいね。何にせよ――――」


 ガラはへたり込んでいる女子学生を肩越しにちらりと見た。


「どうして殺そうとしたのか聞かせて貰わないといけないな。綺麗綺麗、吐いて貰おうか」


 ――綺麗綺麗にしてどうすんだよ……普通は洗い浚いだろうが……-―


「そうとも言う」


 ガラは自分が正しいとでも言わんばかりに胸を張った。


「……どうして殺そうとしたか? そんなの決まってル……」


 狂った様な笑顔で、黒髪の女はガラの後ろに居る女子学生を見詰めた。

 表情とは合わない声――――憎らしげな声で女は言う。


「私を苛めたからダ」

 

 女――――ひきこさんは眼を大きく開いた。精気の無い暗い色調がガラを捉える。

 霧が更に深くなり始めていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「ふぅ……皆何処行っちゃったんでしょうねえ……」


 灯は呟きながら、歩道の端にある車両侵入防止用の先が丸くなっている短い鉄柱に腰を下ろした。

 口には出していなかったが、灯は相当に歩き疲れていた。言わなくてもその疲労感が体から滲み出ている程だ。前日に徹夜で夏、最後の甲虫(かぶとむし)捕り修めを決行したせいもあるのだろう。

 しかし、幾ら疲れているとはいえ、灯は自ら疲れていると言う事は無い。葎が彼女の様子に気が付かなければ、何も言わないまま灯は帰っていた。彼女はそういう人間なのだ。

 鉄柱に座りつつ、灯は片足で小石を転がした。葎はまだ戻ってくる気配が無い。こんな異様な情景の中で一人待っているのも何だか空寂しい。

 ――――栖小埜さん……早く帰ってきて欲しいなぁ……。

 見えない空を灯は見上げた。彼女は思い出した様に携帯電話を出した。

 藍子からの返信もまだ無い。いつもはまめな藍子がメールを返してこないなんて珍しい。立て込んでいるのかも――――と灯は視線を鬱々とした霧の方に向けた。

 赤い輪郭が揺らいでいる。白色一面の中で赤い色はやけに目立つ。

 それは灯の方に向かって来ている様だった。

 霧の中から赤いコートの女が出てきた。今日は少し肌寒いが、まだコートを着るには早過ぎる。現に灯は夏服なのだ。それに着る人間を選ぶ真っ赤なコートを着用しているというのも、この界隈では中々見ない異様な佇まいだと言えよう。

 背の丈は真ぐらいである。女性にしては高い方だ。毛糸の様に縮れた長い髪の毛が女の肩に掛かっていなければ、灯も男性に見間違えていただろう。

 赤いコートの女はだらりと力の抜けた様な手にギラギラ光る何かを持っていた。

 ――――すっごい格好ですね……サンタさん……? でも……クリスマスには早くない……?

 女の顔が少しづつではあるが見えてきた。赤いコートの女は顔全体を大きなマスクで覆っている。

 灯はそれに何となく見覚えがあった。


「くく……口――――!」


 赤いコートの女は人間とは思えない速さで灯に近づくと、彼女を地面に押し倒した。

 突然の事に灯は声も出ない。いや――――出せないのだ。灯は口を押さえられている。


「むご――――ッっ!」

「ねぇ――――?」


 女は大きなマスクを外していく。


「――――ッ!!」

「私……綺麗ィ?」


 耳まで裂けた赤い口。濁った黄色い眼球。手に握っているの巨大な鋏。

 それはまるで「怪談」の中の――――。

 灯の口を押さえていた手が外れる。


「口裂け女――――」


 灯がそう叫びかけた刹那、彼女の顔に鋭い鋏が突き立てられた。

 バキッ、と何かが折れる音が歩道に響いた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 矢張り無理があったか。一向に理沙は見付かる気配が無い。

 往来の激しい駅前だ。彼女は既にこの周辺から移動している可能性もある。だとすれば自分が捜している意味など無いに等しいではないか?

 途方に暮れそうな藍子は小さな溜息を吐いた。彼女の頭に上っていた血が下がっていく。

 何処に行ったのかも分からない。捜す場所も思い当たらない。せめて連絡が付けば――――。

 ――――……そうか……携帯……!

 急に思いついた藍子は自らのスカートを探り、携帯電話を引っ張り出した。

 どうしてこんな簡単な事に気が付かなかったのだろう。最初からこうしていれば良かったのだ。

 藍子は携帯電話の画面を見た。彼女の携帯電話には複数のメールと、一件の留守電が入っていた。

 名前を見ると殆どは灯からのメールであった。一件だけだが燐太からのもある。

 考えてみれば自分は、灯や燐太、それに正一を置いたまま、訳も分からす感情に身を任せこんな所まで来てしまっているのだ。友人達の心遣いが藍子には痛い。

 ――――あとで皆に謝らなきゃ……。……え?

 携帯電話を操作していた藍子の手が止まった。


「伊織さんから……?」


 画面上には理沙からのメールが浮かんでいた。そのメールに題名(タイトル)は無い。

 送られて来たのは三十分ほど前で、丁度藍子が不気味な西洋人形を川に投げ飛ばした時刻と被る。

 藍子は躊躇いながらもメールを開いた。


「たす……? 助けて……?」

 

 メールには単純(シンプル)にそう書いてあった。

 どういう事だ? 助けてとは彼女の身に何かあったのだろうか?

 妙にざわついた気持ちになる。

 とりあえず――――と藍子は理沙にどうしのか、という旨のメールを返送した。

 ――――助けて……? 一体何が……? 電話の方が良いかな……。

 送ってから気付いた藍子は、頭を掻いた。その時、振動音が霧の中から聞こえてきた。

 ――――……?

 近い非常に近くだ。藍子が理沙にメールを送って直ぐである。示し合わせた様に音は鳴っている。

 ――――誰か来る……?

 霧の向こうから人が近づく気配を感じた藍子は、体を硬くした。

 ぼんやりとした人影は、近づくにつれはっきりとした像に変化していく。


「あ――――い――――伊織さん……?」


 近づいてきたのは、先程メールを返送したばかりの人物。伊織理沙であった。


「何だこんな所に居たんだ――――捜したんだよ(、、、、、、)? 藍子(、、)


 理沙は昨日とは全く違う、明るい笑顔。明るい雰囲気のままそう言った。

 

「捜した……?」


 違う。捜していたのはこちら方だ。

 藍子は呆然とした表情で、理沙を見た。昨日逢った時と寸分違わぬ格好である。

 何だろう。昨日の彼女とは別人の様だ。違和感が――――そういえば――――彼女は自分の名前を――――下の名前を呼んだ事があったか? 

 同じ顔。そう同じ顔なのに、別人なのだ。中身がそっくり入れ代わったかの様な――――。


「あなた……伊織さんじゃない……!」


 藍子は思わずそう口に出していた。

 理沙は一瞬無表情になると、からからと笑い出した。彼女らしくない笑い方だ。

 ひいひいと笑いつつ、理沙は髪をかきあげた。髪に隠された大きな眼が露になる。


「ふふふ……よく分かったねー? ……そうだよ。私は理沙じゃない……」


 見開かれた彼女の瞳は綺麗な色ではあったが、どろりと淀んでいた。


「いやあ。自分から来てくれるとは思わなかったなあ……。……ゲームを始めましょうか。ただ殺すのじゃ面白くない。理沙にはもっと悲しんで貰わないとね……。そう――――鬼ごっこが良いかな。鬼に捕まったら殺される鬼ごっこ。捕まえるのは鬼になっちゃった女の子。ふふふ。愉しいと思わない?」


 理沙は両手を広げた。 


「……伊織さんをどうしたの……!? あの子は何処に……!」

「何処も何も此処に居るでしょう。理沙は私。私は理沙。どちらも本物。あ、違うか。もうちょっとで理沙は無くなる(、、、、)んだったっけ。あっはっは……ごめんごめん。私はねぇ……リサ。理沙を――――彼女を苛める人間を殺す……んーそうだなぁ? ヒーロー(、、、、)……かなあ?」

 

 理沙の顔を使い、「怪談」から生まれたそれ(、、)はもう一度大きく口の端を吊り上げた。









 


 おまけ……。おまけ! おま……(以下略




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 寧「出番が無いです!!」


 葎「君は初っ端から何を言ってるんだい……」


 寧「だって無いんですもん!」


 葎「だからぁ……それはどうしようも無いって……」


 寧「葎さん達が色々やっているのに……! あたしは晩御飯を作っているんですよ!? どういう事ですかッっ!」


 葎「ちなみに今日の晩御飯はッ!?」


 寧「肉じゃがですよ!!」


 葎「そうか、楽しみにしてるわ!」


 寧「ええ! 楽しみにしていて下さい!」


 葎「…………」


 寧「…………」


 葎「…………これ……」


 寧「あたし達……何の話をしていたんでしたっけ……」


 葎「俺達が色々やってるって話じゃなかった……?」


 寧「そうかも――――そうですね? そうですよ! 出番下さい!」


 葎「あげません」


 寧「何でですかーッっ!」


 葎「何ででもです」


 寧「そこをなんとか……!」


 葎「諦めなさい」


 寧「……ううぅ……」


 葎「大体さぁ……出番あっても、好んで恐怖体験したくないでしょ?」


 寧「そうですけどぉ……何かこう……寺生まれで、破ぁ! な活躍が欲しいんですよう……」


 葎「そういう事は空鉦さんに言いなさい」


 寧「それに葎さんとガラさん全然怖く無さそうじゃないですか~。むしろ楽しそうっていうか……」


 葎「あーあれはね、ガラが近くに居るから」


 寧「理由になってませんよー……」


 葎「あいつはその場に存在しているだけで空気をぶち壊しに出来る才能があるからしょうがない」


 寧「……今回もメリーさんのお株を奪ったりしてましたね……。ちょっと可哀想でした……」


 葎「俺もさ……最近自分が悪役なのか何なのか訳判んなくなってきていてね……」


 寧「もうやりたい放題ですもんね……ガラさん……」


 葎「はりきって脅かそうとした矢先にあれだからなぁ……」


 寧「ところでこれ――――ガラさんには聞こえてないんですか?」


 葎「これ? 聞こえないよ? メタァァ……な小部屋だから」


 寧「メ、メタァァ……ですか……。じゃあ何を言っても良いんですね!?」


 葎「ある程度は」


 寧「思いのたけをぶちまけても良いんですね!?」


 葎「どうぞ」


 寧「あたしはーッ! す……――――」


 葎「何となく終了!」


 寧「何となく!? あ――――」



       

                

               終了!!


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