別の話
さて、何時までこれが続くのか?。
ご安心を、これを含めて後三つです。
ご期待に副えるかどうか分かりませんが、今回の七話目、出来るだけ頑張りたいです?。
怖い。
友人だったものが地へと赤い鮮血を撒き散らしながら転がっている。血の重苦しい香りが鼻を刺激し、その匂いに吐き気が止まらない。酸っぱくて苦い液体が喉を焼く。目の前の獣は、曇り空に更なる陰影を落とし、その姿を赤と黒の二色のみで形作る。
先生は何故来ない。
倒れている友人達から流れ出る血の川は、地面に吸われる事無く浮いている。
獣は友人の死肉に喰らい付き、ミチミチという肉が千切れる音を出しながら、自らの食事に夢中になっている。
手遅れだ。今喰らわれている者は既に息が無い。誰か生きている奴は居ないか。必死の思いで近くの友人を起こす。駄目だ。下顎を残しているばかりで、顔の上半分が無い。
嗚咽が止まらない。少し吐いた。
他に、他は。
ああ、駄目だ。あっちは喉を裂かれて、白目になっている。あっちは腸が飛び出ている。
獣は死体より、生きている人間を優先的に狙い、襲い掛かっている様だった。
………居た。一人、生きている奴が。そいつは金網で作られている扉の向こう側に居た。
頭から血を流し、苦悶の表情を浮かべている。良かった、それ以外に怪我は無い。
急に静かになった。あれの食事が終わったのだ。
こちらへと砂を踏みしめる音が聞こえる。
もう-―――駄目だ。自分は此処で死ぬのだろう。せめて、あいつだけは。あいつだけは生き延びさせなきゃいけない。恐怖よりも義務感の方が勝った。
開いたままの扉を残っている力で、出口に向かう。扉に寄り掛かる様に、扉を押さえた。
逃げろ。早く逃げろ。自分など見捨てて良いから。何で逃げないんだ。
血を流しているのに何でこっちに来る。そんな暇があるなら逃げろ。
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犬を拾った
友人達と一緒に拾ったのだ。それは愛らしい姿をしていた。
友人の一人がたまたま見掛け、拾ってきたのだ。
自分はそれを飼う事にはあまり乗り気では無かった。不気味――――不気味な事には不気味だったのだろうが、本音を言うと、自分は生き物を飼うのが得意で無かったからである。殺すのが怖かった。突然死んでしまった時の喪失感ときたら、それはもう形容し難いものがある。
だから、とりあえず反対した。しかし、友人達はそれを気に入った様で、押し切られる形で飼うハメになってしまった。飼い主を探そうなどという気は全く起きなかったらしい。
問題は何処で飼うかという事だった。それぞれの家はペットが禁止だったり、家族が動物が駄目だったりして全滅だった。そんな時誰かが言った。
――――学校で飼えないか。
無理だと思った。学校には飼育小屋はあるが、学校がすんなりとそれを貸してくれる可能性は少ない。それにその飼育小屋には兎など他の動物も居るのだ。
それでもとりあえず聞いてみるだけ聞いてみようと、自分達の担任に聞いてみた。返事はきちんと世話をして、他の動物の世話もついでに看るなら良いとの事だった。その次の日から、それは学校の小屋で飼われる事となった。
小屋に連れて行くのは明日だが、今日は誰かが面倒を看なければならない。誰の家が良いか。
自分は当然断った。少し嫌な予感がしたからだ。説明するには難しいが、それの眼がとても怖かった。その日は結局、友人の一人が仕方なく家に連れ帰るという事で落ち着いた。
その日の夜、友人宅の隣で飼われていた猫が死んで見つかった。
カラスにでも襲われたのだろう。
翌日から、飼育小屋の状況と、拾った犬の観察日誌を書く事となった。
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―月―日火曜
今日から犬を飼う事になった。とても不細工な犬だ。犬なのかどうかも怪しい。もしかして猫とか。
運良く学校の飼育小屋を使わせて貰う事になったが、他の動物の面倒も見なきゃいけない。放課後がまるまる潰れそうだ。部活の合間を見て、友達と交代で世話をする。…めんどくさい。
それと一緒に観察日記を付ける事にした。強制では無いし、誰かに見せるものでも無いけど、こうして何かしらの記録を残したかった。ただそれだけ。三日坊主にならなきゃ良いけど。
とりあえず、何を書けば良いのか分からないから、動物の数でも書いとく。
・ウサギ 五匹
・カナリア 三匹 一匹逃げそうになった。
・犬? 一匹。
・ニワトリ 三匹 怖い。
今日は以上。
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―月―日金曜
犬? はエサを良く食べる。動物達にはそぼろみたいなエサをあげているけど、こいつだけは減りが早い。体も大きくなってきた。順調に育っている様だ。
太ったら嫌だな。今みたいに抱き抱えられない。今日抱いてみて明らかに体重が増えていた。
…散歩でもさせる…かな…。
ウサギ達は犬が怖いみたい。ニワトリもあまり近づかない。嫌われているのか?。
その他変化なし。以上。
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―月―日月曜
カナリアが一匹消えた。また脱走したのかもしれない。探そうにも探しようが無いのであきらめた。先生からは怒られた。
犬はまた大きくなった。太るのかと思ったら、筋肉質になってきた。そういう犬種?。
エサを食べるのが早過ぎる。下手したら、他のやつのも食べているんじゃないか?。
そしてウサギやニワトリの方をしきりにじっと見ていた。寂しいのだろうか。
今日は以上。
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―月―日木曜
今度はウサギが消えた。地面には血みたいなのがいっぱい付いていた。
先生に言ったら、変質者かもなって言われた。そうだったらかなり怖い。用心しよう。
また犬はウサギを見てた。こいつ見た目まで厳つくなってる。もう抱えられる大きさじゃない。
気分がすぐれない。今日は以上
追記 ウサギ見つかった。殆ど骨で、カナリヤやニワトリが居る個別の部屋の外の地面に埋まってた。
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―月―日火曜
今度はウサギが全部消えた。何が起きているんだ。
近隣に不審者情報を求める事になった。鍵は掛けていた筈だ、何故居なくなる?。
犬は大型犬に近い大きさになった。学校もこれ以上飼えないと言ってきた。来週一杯で保健所が引き取りに来るらしい。残念だし、自分勝手な理由で生き物をまた殺すのかと思ったら、泣きたくなった。
これを書くのも後少しで終わりだ。以上。
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―月―日木曜
明日で最後。残念だ。
一つ気になる事を聞いた。犬が鍵の掛かってる方の小屋に犬が居たと。昼休みに見に行く。
犬は小屋の中には居なかった。外の方で唸っていた。
小屋の中がやけに静かだったので、良く見たらカナリヤが全部消えていた。
もう残っているのはニワトリだけだ。ニワトリも何かに怯えている。何なんだ、一体。
以上。
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―月―日金曜
朝だから眠い。また妙な事を聞いた。ニワトリが全て消えたらしい。
…あいつが食べたんじゃないか。最近自分はそう思っている。
でも小屋には鍵が掛かってる。それこそ幽霊でも無い限りは無理だ。
残念な気持ちが半分、安心した気持ちが半分。正直あの犬が怖い。あれは本当にただの動物なのか?。
今日の放課後、最後に小屋を皆で見に行く事になった。
これを書いた後に行く。最後ぐらいしっかりしよう。自分達が世話した動物達だ。
…と言っても、もう犬しか居ないけど…。
以上。終わり。
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最初から拾わなきゃ良かったんだ。
逃げろ。ただひたすらに、その言葉しか叫べない。
自分と同じ形のエナメルバッグを投げ出し、金網の向こうから自分が今押さえている扉を開こうとする。馬鹿か。そんな事をしたら共倒れになる。
見捨てろ。お前だけは助かれよ。そう言ってもあいつは動かない。
扉を正面から押さえているので背後で何が起きているのか分からない。
犬が来る。さっさと行けよ。
足を噛まれた。引き摺られていく。
肉が齧られる。
痛い。
痛い。
力が抜ける。
ああ、もう痛くない。
声が出ない。声まで犬に喰われてしまったみたいだ。
逃げろ。もう扉は押さえてないんだぞ。自分の次はお前だ。逃げなきゃ殺される。
何かをあいつが大声で叫んだ。
…こいつと友達で良かった。最期まで見捨てないでくれた。
だけど、頼むから逃げてくれ。お前がどうにか出来るもんじゃない。
赤い地面に引き倒される。砂利の感触が背中に伝わる。振動だけで後は何も感じない。
逆転した視界の端にあいつのバッグが映る。
…そうだよな。ああいう風に助けに来てくれないよな。
こういう時は来てくれるんじゃないのかよ。俺とあいつを助けてくれよ。
その瞬間真っ赤な口と生臭い息、そして黄ばんだ歯が見えた。
それが最期の光景だった。
ご意見ご要望等ありましたら、お気軽にどうぞ!。
それではまた自戒! じゃなくて次回!




