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duplices  作者: rakia
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車内ではお静かに

毎度の事ながら、遅くなりましたです…

そしてコレも恒例ですが、文が世紀末並に荒れてます…orz

それでもよかったら----どーぞ!



いい景色だ。

葎は車内の窓から覗く木々の緑を見てそう思った。

普段は都会とまではいかないが、ある程度の人工物に溢れている石動市にいるせいか、こういった、緑溢れる風景を見ると、何だか少し、感傷的な気分になる。

たまにはこういうのも悪くない、だが、目的が目的だ、自重しなければいけない。

今彼は真と共に、空鉦の運転するシルバーのワゴン車に乗っている。

車名はよく分からない。葎は車の種類などには疎い、というか、興味が無いのである。

車窓から流れる美しい景観を見ながら、さてどうしたものかと頭をぽりぽりと掻いた。

訳が分からないままに、三日分の着替えを用意して車に乗り込んだのは良いのだが、何分詳しい事情を知らない。分かっているのは、これはJRPCの依頼だそうで、真に関わりがあるという事。そして、本来は葎にも出来れば協力して欲しいと、先方から依頼が来ており、ニュアンス的には手伝わなくても、手伝ってもどっちでもいいという感じであったそうだが、真が、これは自分に関わりがある私事であり、それに葎を巻き込む訳にはいかないと渋っていたらしく、同じくJRPCである、空鉦----まぁ、この名前はおそらく戒名というものだろう----が来て、どうせ依頼を受けるなら、人数は多い方がいいと、葎を引っ張り出した次第のようだ。


「それで、依頼の内容って何なんですか?」


葎は直ぐ隣に座っている真に訪ねた。

やはり何をしに行くかを聞かねば、不安でもあるし、話が進まない。


「ああ、すまない。肝心のそれをまず話さなければならなかったな…」


真は手を顎に当てながら話し始めた。


「まずは俺の家の事から話すよ。そっちの方が分かりやすいからね。

俺の家はね----陰陽師の家系なんだ」

「陰陽師?あの、式神やら、安部清明のやつですか?」


そう、と真は言う。


「陰陽師と言っても、大した家系じゃないけどね……現にうちの流派はもう俺一人しかいないし」

「大した事ないだぁ?よく言うぜ!あんな武家屋敷みたいな家に住んでたくせによ。

いいか?葎…クン?あ~葎でいいな?……で葎よ、こいつの流派はそれはもう----」

「住職、前見てください。事故起こしたらどうするんです」


空鉦は運転席から、こちらの話に割り込んで来たが、真にたしなめられ、ちぇっ、と言うと再び運転に集中し始めた。どうやら彼は真に頭が上がらない様である。

葎は内心空鉦の話の続きを聞きたかったが、真の様子を見る限り、それは叶わないな、とそう判断した。


「…まぁ、うちの流派がどんな術を使うかはその内、分かるからいいとして----事の始まりは、俺の家系の始祖……不儀科廼ふぎしなのの時代まで遡る。

科廼が居た時代、ある噂が都----これは今の京都だね…で囁かれていたんだよ」

「はぁ…噂」


時代が遠すぎて、葎には現実味が無さ過ぎる。


「武蔵国で食影鬼が出る---とね」

「鬼?」


何かおとぎ話とかファンタジーの世界じゃないか?これ?

武蔵国って東京だっけか?今の。


「その鬼は武蔵国でかなりの猛威を振るっていたそうだ。

その鬼は…って言っても、姿は鬼じゃなかったらしいが…人を食べると力が増すといった、困った能力を持つ奴でね…幾人もの人々がそいつの犠牲になったのさ。

人を喰らえば強くなる…そんな鬼を朝廷は何時までも放って置ける筈も無かった。

いずれは自分達に降りかかるかもしれぬ火の粉だからね。

そこで、俺の祖先、不儀科廼に討伐を命じた」

「倒せたんですか?その…鬼は」


真はああ、倒せたよ、と言いながら、不可解な表情をした。


「でもね…その鬼は鬼であって鬼じゃなかったんだよ」

「どういう事です?」

「その当時は魑魅魍魎の類は全て鬼と分類されていてね…その食影鬼と呼ばれていた人物は本当は鬼ではなく、実際人を食べていた訳じゃなかった。」


葎の頭のイメージでは頭からバリバリと人を食べるような感じだったのだが、どうやら違うようだ。


「じゃあ……どうやって?人を----食べていたんですよね?」

「この辺は曖昧でね…記録には殆ど残っていない…唯一残っていた資料によると、影のようなものが出てきて人々を飲み込み噛み砕いたとある…

当時を知る人間も、記録も残っていないからね、分からないんだ…

この残っていた資料でさえ本当かどうかも怪しい」


影…それは、あの騎士王が出てくる作品のアレやら、某錬金術師のアレなようなものなのだろうか?

どっちにしてもリアルであったら嫌だな…つーかグロイ…

頭の中で黒い影が人間をパクンと飲み込む光景が浮かぶ。

冷静に考えれば、結構それはシュールな光景だろうが、実際の当事者になった場合、そんな事は言ってられないだろう。

ただね---今度は複雑そうな表情をしながら真は続けた。


「その残った資料を書き残したというのが俺の先祖…さっき言った不儀科廼なんだが…科廼の手記によれば、食影鬼と呼ばれていた男は、初めから人を襲っていたのではなく後天的にそうなったとある。

あるきっかけがあり、それ以降人を襲うようになったと----その前は面作りの職人だったらしい、現にその男は今向かっている村に住んでいたんだが、今でもその男の住居と作った面は残っている」


ううむ…話は分かったが、それと今回のJRPCの依頼はどう関係あるんだ?


「今回の依頼はね…その男の残した面がどうやら関係あるんだよ」


ますます訳が分からなくなってきた。

食影鬼…?だっけ…は、死んで…そいつは鬼じゃなくて…で、そいつが残したお面?が悪さをしてるって事なのか?

でも、何でそんな人を食べちゃうような奴の持ち物なんか、残しているんだろう…

葎の心情を察したように真がごめん、もっと、簡単に説明するべきだったか、と言った。


「簡単に言うと、悪い奴がいて、そいつの残した物が何故か今の時代になって、悪さをし始めたと言う事だ。で、それには俺の先祖が関わっている」


「あの~そんな奴の持ち物なら捨てちゃえばいいんじゃ…

…それに、何で真さんがわざわざ行く必要があるんです?」

「捨てられないんだよ、捨てたくても。捨てるとその日の内に戻ってくる---そんな曰くある品でね…

捨てた人はいない事も無かったが、不幸が起きたり、ひどい時には死人もでたものだから、その村の者達はすっかり怯えてしまった。住居の方も同様だ。最後に俺が行く理由は----」


その、わるーいお面に悩まされてる人からのご指名だぜ、運転席の空鉦が真に代わり葎に言葉を返した。


「住職、運転」

「わーかってるよ。前見てるからいいだろうが。ケチ…

…葎、こいつの先祖がさっきの食影鬼を倒したつっただろ?そん時にな、こいつの先祖が残した記録とは別に村の方でも記録が残っていたんだよ。それでまぁ、その依頼主の悩みの元の出来事があってな。

そいつがその村の村長に相談したら、こいつの先祖の名前が載ってたっつー訳だ。

こいつの先祖はJRPCの初代代表でもあんだよ。

それで、食影鬼を倒した時に『何かあれば自分を頼れ』って言ってたみてーで、その縁で頼ってきたんだってよ」

「あの時は本当に驚いた。だって本部の方に初代と縁のある依頼が来たのだからね…

そんな昔の事を覚えていたのもある意味凄いが、初代の渡していた簡易型の式神が飛んできたのには脱帽だ。よくあんな物が発動できたと不思議でしょうがなかったよ」


ああ、なるほどな。そういう事か。でも---


「何で、今になって助けを求めてきたんですか?

後---質問ばかりで悪いんですけど…真さんの先祖っていう人は、残ったのを何で壊したりしなかったんです?作った本人を倒せたんだから、お面ぐらいどうって事無いんじゃ…」

「食影鬼の残した物に異常性が発現したのは、後世になってからなんだ。鬼が退治された当時は気味悪がって触りもしなかったそうだ。そういう事だから、処分しようとしたのも後になってからだね」


何かめんどくさい話だなぁ…コレは…。


「おーう。もうちょいで着くぞ!」


そこは、正に村だった。

大きな旅館のような建物がある以外は民家がポツリポツリとあるだけで、景観的にはかなり寂しい。

車道の横には小川が流れていてサラサラという音が聞こえそうである。

その奥には、何を植えているかも知れぬ畑が一面にある。

しかし、手入れの行き届いていない畑も多く、人があまりいない事が窺える。畑のそばに止めてあるトラクターなどは、赤銅色に錆び付いていた。東京にもこんな所があったのかと以外に思う。

草がうっそうとしている様は、いかにも田舎といった感じだ。


「話題にも詰まったし、どれ、俺が真の暴露話でもしてやろうか」


ケラケラと笑いながら、空鉦はバックミラー越しにこちらに視線を送ってきた。

真は先程の重々しい雰囲気とは違い、少し柔らかな眼になる。

だが、同時にガラと似通った意地の悪い笑顔に…いや、それとは若干違う冷たい笑顔になった。


「俺は暴露されるような話は持ち合わせていませんから、葎君には住職…あなたの話をしてあげますよ…

いいかい?葎君。この空鉦という男はこういう感じで頼れるお兄さんを気取っているけど、昔はそれはもう、青臭さが形を成したような、熱苦しい男でね----」

「おい!馬鹿、やめろ!…おいちょっと!聞いてんのか!」

「----って言ったんだよ。しかも、その時何歳っていったら…」

「あー…それは痛いですね…」

「真くぅーーーん!?止めようか!?ねぇ真さん!?」

「----この人はその時の子供を引き取ってね----」

「空鉦さんってロリコン?」

「俺はロリコンじゃねーーーーーーーー!!」

「ロリコンだけならまだしも…それに付けて尻に敷かれているという----」

「あああああああ!やけくそだーーーーーーー!

葎ぅ!こいつだってなぁ!山吹っ飛ばしたりしてんだぞっ!!」

「それがどうかしましたか?人生長いのですから、山の一つや二つはあるでしょう」

「ねぇよっ!!」


葎は思った。

俺とガラも周りからはこんな感じに見られてんのかなぁ…しかも自分の場合、一見、一人だしなぁ…

二重存在見えない人からは…………あぁ…今度からは控えよう……。

っていうか山って…真さん…あんた一体何をやったんですか…。


「おい…ガラ…あれだ、うん…あれだ…」


--皆まで言わなくても君が言いたい事は分かる--


「…で?」


--却下。理由は面白くないから--


「っく…この外道…!」


--それよりちょっと挨拶させてくれないかね--


「うぅ……。…ああ?……まぁ………いいけどよ…」


ガラと入れ替わり、あの白い庭に意識だけが送られた。

戦闘の際は、ここにただ居るだけという状況に歯痒さを感じるものだが、普段のこういう何でもない時に入れ替わると、酷く退屈なものである。

ある物といえば、一面の白い花々と同じく真っ白なタイル---必要に応じて物を出せるとはいえ、やはり退屈には変わりがない。


--早くしろよー?--


「挨拶だけだ、直ぐ戻す。

……やぁ、初めまして。ええと…ロリ・コンでよかったかね?」

「良くないよ!?言い方が少し、外国っぽいだけで本質は変わってないじゃねえか!?

……おっ…?もしかして…………………噂の二重存在?」

「いかにもそうだ。挨拶をしないのは非礼だと思ったのでね、こうして出張った訳なのだよ。

ガラだ。葎共々、宜しく頼む----ロリ・コンよ。では失礼」

「よって集って何なの!?」

「運転中ですよ…じゅう---ロリ・コンさん」

「わざわざ言い直しやがったな!真ォォ!てめー、名前にちなんで鮮血の結末を迎えさせてやるわっ!」

「ロリ・コンさんじゃあ無理ですよ。それに意味が分かりません」

「くそォォォォ……」

「くっ空鉦さん?ほ…ほら~もう直ぐ着きますからねっ?とりあえず落ち着いてください、ねっ?」


葎の中の空鉦のイメージは木っ端微塵に砕け散った。

あれー?最近似たような奴に会った事があるような…


「おおお……くそう…悔しい………………」


銀色のワゴンは一軒の奇妙な建物の前まで来ていた。

その建物は木造である事と、奇妙な点だけで言えば、天儀屋と似ているのかもしれないが…

何と言うか----薄暗い。そんな建物であった。

探偵小説の舞台みたいだな…うん…いかにもそんな感じ…。

これから、この中に入るのを考えるとあまり気分の良いものではない。

建物は所々朽ちていて、虫に食われている様子だ。管理もろくにされていないのだろう。

廃墟---それがこの建物に一番合ってる気がする。


「ここが…」

「そう、ここが俄面の館」


真の声が静かに車内に響いた。









この三話目が終わったら、番外編でも投下しましょうかね…

加筆も、もちろん頑張ります!

…というかしなきゃ見るに耐えない…

では!次は出来るだけ早く投下出来るように努力します!多分!

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