狂気と凶器
やっと…書き終わった…!
文字数少ないのに結構書くのに手間取りました…
努力はした?のでどうぞ、ご覧ください!
雨をかき分け走る。一歩踏み出す毎にバシャバシャと水の音がする。
すでに靴の中は濡れきっていて、体温で暖められ生暖かい感じがする。
雨で滑りそうになりながら、葎は歩道を駆け抜けていた。
「ガラ!場所は!?」
--ここからあまり離れていない所だな…--
ガラはあの時感じたものを思い出す。
自分があの瞬間に感じたのは---悪意と執着…悪意だけなら誰でも持ち合わせているが、それと同じぐらいの執着とは…一体……この強い情念を発している人物は何に対して、こんなにも固執しているのだ?……。
「どーした?」
--…………気にするな…それより、あそこ…騒がしいようだが--
ふと前方に赤い光が見えた、人ごみも少なからず出来ている。
この近辺で捕り物があったようだ。数人の警官の姿も見える。
葎は一度立ち止まって、近くの年配の女性に何があったのかと聞く。
「あのー何かあったんですか?」
女性は繭を潜め、ひそひそ話しをするかのように声を押し殺して答えた。
「ほら、最近ニュースでやってた石動に逃げ込んだっていう連続犯…
あれが捕まったみたいよ…怖いわねぇ…」
「……連続殺人犯…ああ!南屋さんが言ってた奴か…」
周囲にざわめきが広がる。どうやら、捕まった犯人が喚いてるようだ。
叫び声がこちらまで聞こえる。
「---俺じゃない!俺はやってない!----まだここじゃ一人も殺してないって!!」
「お前じゃなきゃ誰がやったっていうんだ!いいから大人しくしてろッ!」
パトカーへと警官によって男が引きずられ、それを葎を含めたギャラリー達が遠巻きに見つめている。
「俺じゃない!」
取り押さえられてなお、男は叫んでいる、しかし、屈強な警官によって捕まえられているのでは逃げられるはずも無く、あっけなく車内に押し込められてしまった。
バタン!
「………すげぇ物騒な事言ってたなさっきの…もしかして…」
いや、それは違う、とガラが葎の言葉を遮り否定する。
--今のは二重存在でも何でもない。ただの人殺しだ。しかし…どうも気になる事を言っていたな…--
「気になる事?何だよ?」
--『俺じゃない』と言っていたのがやけに引っかかるのだよ……仮にそれが本当だとしたらもう一人、別の殺人犯がいるという事になる。ともすればその人物が-----
「二重存在の可能性があるって訳か!」
--ああ。その可能性がある……公園で感じたあの嫌な雰囲気---十分に考えうる……しかもまだ捕まってない所を見ると…現在の状況は非常に好ましいと言えないだろう……!…早く見つけなければ、次の被害者が何時出てもおかしくない……!--
「……!!急ぐぞっ!」
葎は散らばりつつある人だかりに背を向け、再び雨道を走り出す。
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「帰れっつったって…藍子どうすんだよ…」
あの野郎…!言うだけ言いやがって、さっさと居なくなりやがった…
雨の降る中、燐太はポツリと取り残されてしまっている。
ひとまず、藍子が家に帰っているか確認しなければならない。
再度自分のバッグから携帯を出し彼女の母親に電話をかけた。
「----…あ、おばさん?そっちに藍子帰っていない?……そっか…分かった…うん…そいじゃ…」
やはり家には帰っていない。
もーあいつは…!よりによって何でこんな時に…
ツーツーツー…こちらは留守電話サービスです…--
彼女の方にも電話をかけてみるが、留守電に繋がるだけであった。
メールも打ったが、返事は一向に来る気配はない。
普段では特に珍しくない状況だが、今の場合は彼の心を不安を煽る。
何事も無ければいいが……いやあるはずが無い…
彼はとにかく、そう思いたかった。なぜなら、それはあまりにも自分達の日常とかけ離れている---
そう----そんな事は自分達の日常に有ってはならないのだ。
「無事でいろよっ……!」
そして彼は不安を抱きつつも、既に夜の闇に包まれている公園を抜け出した。
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「へぇー藍子ちゃんって言うんだ---…学校この辺なの?」
「はい。ここから一駅ぐらいですね」
藍子は先程自分を助けてくれた、姥季淡慈と共に歩いている。
淡慈は社交性のある性格らしく、人見知り気質の彼女でさえ淡慈のペースに巻き込まれつつある。あんな事があった後だ、帰りの道中に話相手がいるのは藍子にとって何より心強いものであった。
おまけに傘まで貸してもらっている。感謝しか出てこない。
「陸上部ねぇ…だからそんなに綺麗な足をしているのね?」
「あんまり関係ないと思いますけど…」
淡路の言葉に思わず顔が赤くなる。同姓と言えど、正面から面と向かって褒められるというのは照れるものである。
「いいのよ、謙遜しなくて。本当に綺麗だと思ったんだから。----本当に綺麗な足…」
うふふふと軽く笑いながら、藍子に言う。
そう、この笑い声だ。この笑い声が何故か、鼻に付いてしまう。
親切にしてくれた人をこんなふうに言うのは、失礼だと分かっているのだが…どうしてもこの笑い声に藍子は違和感を感じずにはいられなかった。
何というか、油絵に写真が貼ってあるような……場違いな感覚---
この人の笑顔は張り付いている。
「どうしたの?」
気が付けば、淡慈が藍子の顔を覗き込んでいた。
「いっいえ…何でもないです…」
夢想に耽っていた藍子は我に返った。
覗き込んでいる淡慈は、相変わらず笑顔だ。
ああ---やっぱり勘違いだ…私の気のせいに決まってる…
下手な勘ぐりは止そう、それはこの人に失礼だ。
「----でね~その店員が…」
「ーーーーそうなんですか、それはーー」
淡慈との会話は楽しかった、まるでさっきのが嘘のようだ。
ぐいぐいと会話に引き込まれる。
気が付けば、もう家のすぐそばに来ていた。
時間を忘れていたとは正にこういう事なのだろう。
「あ…私…もう家が近くなのでこの辺で…」
「……そう。じゃあ、お別れね?…あなたとの話、とても楽しかっ----」
----ウォォォォォォ………ン
淡慈の声がかき消される。
国道の近くなので、車の音がうるさいのだ。
人はまばら、というか二人以外には見受けられなかったが、車の方の往来は激しい。
「うふふふふ…これじゃ、全然聞こえないわね」
仕方が無いか、と淡慈は笑った。
「最後に一つだけいいかしら?」
彼女はちょっと待ってねと言うと、持っている少し長めの鞄から何かを取り出そうとする。
あまりジロジロと見るのはよくないなと藍子は思い、鞄と淡慈から視線を外す。
「おいッっ!!」
突然どこからか、声が飛んできた。
声がした方向を見ると、そこには最近の藍子の悩みの元凶である風早燐太が立っていた。
もうとっくに帰っていると思ったのに----…
自分を探しに来てくれたのだろうか。
嬉しくもあるが、複雑でもある。
だが、何故…何故----
「おいっ!---------ーーー!!」
平然と立っているのだ?
訳が分からないといった風な藍子を尻目に、燐太は彼女の方に向かって何事か叫んでいる。
「----!早くーーーー!!藍子ーーーーーーーーーー」
何?そんな遠くからじゃ聞こえないよ?
鬼気迫る表情の彼の声は過ぎ去る車の音によって、打ち消されてしまう。
「-----どうしたの?何言ってるか聞こえないってーー」
何を言っているのだ?あんなにも必死に----
車の数が少し減り、ようやく燐太の声が聞こえ始めた。
「-----早くそいつから離れろ!!」
え?
そいつとは誰の事を言っているのだ?
「待たせちゃってごめんね」
先程まで、何かを取り出していた淡慈が藍子の方を向く。
おそらく取り出したものだろう何かを持っている事が分かるのだが、手を後ろにやっている為、体に隠れて見ることが出来ない。
「突然だけど----ちょっとお願いがあるの…」
「…お願い?」
そう、お願い、と笑顔のまま淡慈は続ける。
何故だろう、寒気が---
「簡単よ-----」
うふふふと彼女は笑う。
これは---この先は聞いてはいけない気がする。
「あっ…あのっ!」
----うふふふふふふ……
思い出した。この笑い声はあの時聞こえた声……!
そう、私はあの男よりこの笑い声が怖かったのだ。
思わず後ずさる。
淡慈の笑顔はもはや藍子にとって恐怖でしかない。
----うふふふふふふふふふふふ………
嫌だそれ以上は聞きたくない。聞きたく---ー
しかしそれは聞こえてしまった。
----あなたの足をちょうだい。
傘が放り出され、藍子に緋色の閃光が襲い掛かった。
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「くそっ…!どこだ…!」
葎は焦っていた。走れど、走れどそれらしき人物は見つからないのだ。
「本当にこの近くなんだろうな!?」
--葎…気持ちはわかるが、落ち着け…--
ガラが諭すように言う。
「だって……」
--……冷静でなければ逆に大事な事を見落としたり、危険な状況に陥ってしまうぞ…--
分かっている。今の自分は頭に血が昇っているのは。
しかしこんな時に落ち着いていられるほど自分は肝が据わっていない。
そんな葎を見かねてか、ガラがゆっくり口を開いた。
--全く……君が杞憂してどうこうなる問題ではないだろう?
今君に出来る事は、新たな二重存在を見付ける事だけだ。
……それにまだ殺人犯が二重存在と決まった訳じゃあ無い。
二人目の殺人犯の存在でさえ怪しいものだぞ?捕まった男の狂言の可能性だってあるのだ。
そんな情報を鵜呑みにして冷静さを欠如させたら、たださえ、猪突猛進な君が猪どころか、盛りのついた雄牛なみの速さで駆け抜けて行ってしまう。…分かったら少し落ち着きたまえ--
言ってる事は分かった…ガラの言う通りだ………でも今の俺のくだり必要!?
葎は話の内容には納得したが、自分の所に関しては納得できなかった。
「盛りのついた雄牛って何だよ!?それに俺は猪突猛進でも無いっ!」
--おや?違ったかな?--
「違うわっ!」
--…ふむ…おかしいな…私の記憶違いか?では、後先考えないバ……--
「ほぼ一緒じゃねーかよ…ってお前馬鹿って言おうとしたろ?」
--何の事かな?--
しれっとガラは言う。
くそぅ…このエセ紳士には自分では敵わないか…
--……いいから君は以前と同じで、助けたいと思う人物に手を差し出せばいいのだよ。このバ……--
「『バ』?何だよ?」
--別にィ……?--
こいつ…まだ言うか………
すっかりガラのペースである。
………でも…そっか…難しい事を考える必要なかったんだ----…
…何かちょっとは気分が軽くなったかな…
--まだ、くよくよ悩むかい?--
「ふんっ…行くぞ…ガラ!」
--はいはい--
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「…あんなとこに居た……っ!」
燐太は心当たりのある場所をしらみ潰しに探し、ようやく藍子の姿を見つけた。
藍子は彼女の家からそう離れていない国道沿いを歩いている。丁度、反対側の車線だ。
何だか、あれだけ心配していた自分が馬鹿のようである。彼女はもう家のすぐそばまで来ていたのだから。損した気分だぜ…まったく……さて…声かけるか…?
あーでも…あいつとは話にくいな…俺の顔見るとすぐ泣きそうになるし…
迷ったが、一応親に頼まれたのだからと彼は声をかけようと決心した。
あれ…?あの横歩いている人…誰だ?
燐太には見覚えのない人物が藍子と楽しそうに会話している。
…………笑ってる…あいつの笑ってる所なんて久しぶりに見るな…
ドクン……ドクン……ドクン…!
「!?」
公園で体感した嫌な感じが燐太の中でよみがえる。
両足が反応する。あの藍子の隣のやつは自分と同じものだと。そしてそれは自分よりも遥かに危険なものであると。
藍子達が立ち止まった。藍子の横の人物が持っていた鞄を探っている、何か探しているのだろうか?
そう遠くない距離なので、鞄の開いた口から中身が見える。
「……は…?」
燐太は言葉を失った。何故なら---鞄から覗いているのは血に染まった鋸であったからだ。
赤黒く乾いている血を吸い込んだ刃がギラリと光る訳でもなく周囲の光を吸収している。
おい…あいつは何をしようとしている…
嫌な想像だけが彼の頭に広がる。藍子はその異様な光景に気付いていない。
ヤバイ…ヤバイ…ヤバイ…ヤバイ!!
反射的に彼は叫ぶ。
「おいッっ!!」
こちらの声に藍子が気が付いた。
一瞬視線が合うが、藍子の方から視線を外す。
気付けッっ!何、しおらしい顔してんだ…!こんな時にっっ!
もう一度叫ぶ。
「おいっ!!早く逃げろッっ!!」
エンジン音が燐太の声を遮る。
燐太の言っている事が分からないというように、藍子は困った顔する。
「何やってんだっ!!早く逃げろッ!!藍子ッっ!」
車の壁はいとも容易く燐太の声をかき消す。
藍子が何か言いたげに口を動かしている。勿論聞こえる訳がない。
車の流れが緩やかになり、ようやく彼の声が通り始めた。
「早くそいつから離れろッ!!」
彼は言葉より早く、道路へと飛び出していた。
大丈夫っ……!俺の足なら……っ!!
我ながら危険だと思う。しかしそんな場合ではない。
彼は必死に、少ないながらも車のライトが飛び交う中を駆け抜けた。
鋸を持った人物----姥季淡慈は既に藍子の方に意識を向けている。
そして、呆気にとられている藍子頭上に赤黒く変色した刃を掲げあげた。
させてたまるかっっ…!
「ーーーーおるぁぁぁああああああああーーーーーー!!!!」
ベキッ
間一髪の所で、藍子と変色した刃の間に燐太の足が割り込む。鋸ごと淡慈の手を蹴りつけたのだ。
本来なら彼の足を引き裂くはずの刃は強力な蹴りの負荷に耐えきれなかったのであろう、大きくしなったかと思うと根元から折れ、しばらくして湿ったアスファルトにカランという金属音と共に地面へと落下した。
「……………痛いわね」
鋸を持っていた淡慈は、二重存在が憑いている燐太の蹴りを受けたにも関わらず、不機嫌そうに目を細めただけだった。手加減はしていないので、本来なら骨折どころか、手が吹き飛んでもおかしくは無いのだが、痛がる素振りすらも見せない。
「怪我ねぇか!藍子!」
燐太は藍子に呼びかけるが、彼女から返事は無い。
否、返事が出来なかったのである。
彼女は持っていた赤い傘を放り出し呆然と立ちすくんでいた。
「え…何で……?」
そんな藍子を淡慈は舐めるように見つめてから、燐太の方を睨み付けた。
闇の中で淡慈の瞳が怪しく光る。
「邪魔しないでくれる?」
「…やだね…ッ!変態から女の子守んのは俺の使命なんだよっっ…!」
燐太の言葉に淡慈が不敵に笑う。
雨は止まない。
余談ですが、自分は京極道シリーズが好きで、作中の描写的にはそれを目指して書いています。
全然出来ていませんが(笑)
お気に入りは「凶骨の夢」ですかね?




