雨、時々勘違い
やっとこさ、ここまで来ました…
しかしまだ、肝心の戦闘まで少しあるっていう…
ええい!来月の半ばにはこの第二話は終わらせてやるッ!
やる?やれるかなぁ…
…ポッ…ポツ…ポツポツポツ…ザアァァ…アアアアアア-----………
「はッっ…はッっ…!…はァ…はァ…ふゥ…」
息を整え、燐太は動かし続けていた足の回転を緩める。
三週目に差し掛かっていた頃に急に雨が強くなり始めてきた。
この程度ならば、問題ないと高をくくっていたが、豪雨と言ってもいいほどの雨に彼は仕方なくランニングを一時中断したのである。
「雨かよ…あー…傘持ってねぇな---」
曇っていたが、こんな勢い良く降り始めるとは思わなかった。
早く帰らねぇと風邪引いちまうな…こりゃ…。
雨は彼の頭を激しく打ちつける。痛いくらいだ。
これから帰る事を考えるとブルーな気分になる。それほど雨の勢いは強い。
額に張り付いている髪を手でかき分けつつ、雨宿り出来る場所を探してみるが、森林公園の中にそんな場所は殆ど無いと言っていい。在るとすれば公衆トイレか、それとも併設しているスポーツセンターぐらいか----…どちらにしろ、既にこんなにも濡れているのだから彼には関係ない。
「あっ…居た!」
「はい?」
おや?この目の前の人物は…
燐太は目の前の顔を、曖昧な記憶を頼りに何とか思い出そうとした。
「おっ!?あんたはこの前の妖怪メロンパンマン!!?」
彼の言葉にいささか不満げながら、燐太の前に現れた人物----栖小埜葎が応えた。
「……なんだ………その訳の訳の分かんないネーミングは……まぁいいや…
それよりさ…君に聞きたい事があるんだ、ちょっといいかな?---…風早君」
「さっ…さすがっ…!妖怪…!名前教えていないのに知ってるなんてっ……!!」
本気なのか、冗談なのかよく分からないテンションで燐太が驚く。
「いや…妖怪じゃないし……」
「妖怪じゃないなら……………分かった!俺のファンだ!」
「……ちがっ---」
どうしたらそういう結論へとたどり着く…
否定しようとしてみたが、燐太は既に葎の言葉を聞いていない。
「日々の善行のおかげかなー?あーでもどうせなら、女の子の方が良かったなー」
「だから…違うって---」
まさに暴走というべく、彼は喋っている。
これでは本題を一向に切り出せない。埒が明かないのが目に見えるようだ。
「いーよいーよ!これ以上言わなくても!あんたの気持ちはよぉーーーく分かってる!!」
「どうしよう…ガラ…こいつ日本語通じない………」
どうにかしてくれといった感じでガラに協力を仰ぐが、彼はいつもより軽く、尚且つ適当に返しただけであった。
--ガンバ!--
「この前相棒とか言ってたくせに助けないのかよッ!?」
--助けようがないのでね…くくっ…--
内心笑っていやがるな…こんちきしょう…!
葎にはあの意地の悪い笑顔が容易に想像出来てしまった。
目の前の馬鹿はぺらぺらと喋り続けてるし…ああ!もう!!
「---で俺としては今は傘が欲しいわ----」
「話を聞けえぇえええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!」
ついに葎の限界が訪れた。
びりびりと空気が震える。
さすがの燐太もこれには黙るしかなく、大人しくなった。
少し唖然としてるみたいにも見える。
「………おおぅ………わっ悪かった…」
「わ…がはっ…!たら…!静かに聞け…!ごほっ…!」
慣れない大声を出したので喉が焼け付くようにひりひりする。
何度か息を吸って落ち着いてから葎は話し始めた。
「ゴホン……風早君、君の事は南屋さん---ほら、昨日俺と一緒にいた君の同級生の…って知ってるよね?…彼女が柳葉って子から君の事故の事を聞いたんだ…それを俺も聞かせて貰った……」
「……それで?何?」
途端、燐太の雰囲気が変わる。葎を警戒してるようだ。
「……まどろっこしいから単刀直入に聞く…!何で歩けない筈の君が走れてるんだ……!?」
葎の言葉に燐太は先程まで合わせていた視線を逸らす。俯き気味になるが、再び葎に向き直り口を開いた。
「何なんだよ…あんた…俺が走れるようになったって別に関係ないだろ…!!やっと…やっと…!また走れるようになったのにっ…!関係ないじゃんかっっ!あんた達には----」
酷く動揺した様子で燐太は葎に食ってかかる。その言葉には、先程までのふざけた感じはなかった。
それを聞いて葎の中の疑問は確信へと固まった。
やっぱりこいつは----
「………あのさ?何で今俺一人しかここに居ないのに『あんた達』って言ったんだ?君は気付いているんだろ?こいつにさ!」
葎は自分の胸を指す。
「あっあんた何を…!」
「…………ここからは私に任せてもらおう」
ガラが葎から引き継ぐ。
「風早燐太…私は最初君の事は二重存在かどうか確信を持てていなかった…何故なら君の魂に二重存在の影は無かったからだそう----足を除いてね」
燐太の足をガラは指差した。一見なんの変哲もない足である。
--えっ…そうなの?--
「何だ……知らなかったのか…まぁいい。君も一緒に聞くといい」
葎に呆れた様子で応える。
「----で、風早燐太、君は自分の二重存在を自分の動かなかった足………その一点に二重存在を集中させたのでは無いかね?だから私達は君に最初に会った時に違和感を覚えた---」
--ん?でもこの前お前『魂の座は一つ』とか言ってなかったっけ?--
「……はぁ…」
やれやれといった感じで、ガラは葎に対してこれ見よがしに溜息をつく。
「…なぁ葎、良く考えてみろ…力が入らず、歩く事も走る事も出来ない足---そんなのは足だけが死んでいるのと変わり無いと思わないか?」
--あ~そういう事か!--
「やっと分かってくれたか…そう…彼は足がほぼ死んでいる。だから足だけは魂の空き容量があるのさ、それを彼は利用した…だから彼は二重存在の力を素の状態で発揮できる…もっとも足だけの限定的なものだろうがね」
葎は燐太の両足を見つめてみる。
なるほど、よく見れば足の付け根にかけて赤い影が燐太の体の線に重なっている。
普通のと違うのは、色が若干濃いだけだ。
これじゃ、気付かないわ…葎はそう思った。
ガラが説明を終えると、燐太の方からぽつぽつと口を開き始めた。
「…………………あんた達の言う通りだよ……実はさ…俺、藍子とか他の皆には強がっていたけど…事故で走れなくなった時…本当に…本当に…最悪の気分だった…これ悪い夢かなって…夢だったら早く終わりやがれって……でもそんなこと無かった……
そんな時にこいつが出てきたんだ…こいつが俺をもう一度走らせてくれるって……っ!!もう一度風を感じれるってっ…!
あんた達が何者かなんて知らない…でもっ……頼むよっ!!俺からこいつを奪わないでくれよっ…………!!俺の足をッ!頼むからっ…!」
彼の叫びは悲痛に満ちていた。
雨が降りしきる中、燐太は表情を苦しそうに歪める。
「……………………………………」
あーーー……そういう方向に勘違いしちゃったか…
ガラもこうなっては声をかけ辛い、多分、自分が次に言わんとしている言葉は彼の想像と違うからだ。
迷った末、彼はこう切り出した。
「…いや、別に私達は君もとい…君達をどうこうするつもりは無いんだが…」
「………………………………へ?」
燐太はポカンとした顔でガラの方を凝視する。
「だから別にどうもしないって」
「…………………………マジで?」
「マジで」
「………マジのマジで?」
「あぁ、マジのマジで」
「…マジのメガMIXペガサス昇天盛り?」
「勿論、マジのメガMIXペガサス昇天盛りだ」
「それじゃあマジの----」
--長いし!しつこいし!いちいち復唱しなくていいっ!!おらっ!ガラっっ、チェンジッ!--
「はいはい、……やだねぇ最近の若い子は短気で…」
そういうお前は何歳だと言いたくなるが他人の手前、ぐっと我慢する。
そんな事を考えている内に、葎に冷たい雨の感触が戻り、自分の体に戻った事を実感させた。
「ともかく!あいつが言った通り、俺達は君と君の二重存在に問題が無ければ、手を出すつもりは無いんだよ。驚かせて悪かったね」
「なんだ~…よかったぁ……早くそーゆーのは言ってくれよぉ…てっきり、悪の組織的なモンかと…」
「悪の組織って…君はアレか、あの中学二年生が頻繁に患う病にかかっているのか?」
燐太はなんともいえない情けない顔をしている。心の底から安堵しているようだ。
「いや~なんとなく流れの感じからしてさぁ、そうかな~と…」
「そんな訳ないだろう…まぁ…世の中には人が困ってるのを見て喜んだり、人が気持ちよく寝ているにも関わらず、変な場所に連れ込んだり、いちいち一言多い野郎がいるけどさぁ」
誰とは言わないが、さり気なく悪態をついてみる。
--………ふむ…私には心当たりが無いな…全く!けしからんな!--
ここまで言っても、あえてとぼけやがりますか…この性悪紳士服…
「それで、君の二重存在はどんなんなんだい?」
「…………どんなんって?」
何かまずい事でもあるのだろうか?
燐太は何故かギクリとした表情になる。
「ちょっと気になってさ?会ってみたいなぁ…と」
「いっ…いやぁ…それはまた今度…うん!今度だ!」
「……?君がそう言うなら…いいけど…」
「つーかちょっと雨宿りできる場所探さねえ?さみーよ!ここ!」
ブルルと震えながら、燐太は両手で肩を抱く。
彼の言う通り、雨は既に激しさを増していて痛いくらいになっている。
大粒の雨粒で視界も悪い。
ブーーーッブーーーッ
「おわっ!」
急にベンチの置いてあった燐太の鞄が震える、携帯電話のバイブレーションだろう。
その音に彼はひっくり返りそうになりつつ、急いで携帯を取り出し、開く。
燐太の携帯は今時のスマートフォンではないのだ。
ブーーーッ
「…?メールじゃなくて電話?めずらしーな……はい…ん?おばさん?藍子がまだ帰ってない?知らないかって?んーー…俺は見かけてないけど…うん、うん、わかったーー見つけたら言っとくーーそれじゃ…ったく!めんどいなぁ…」
携帯をしまいポソリと燐太は呟いた。
「どうしたんだい?」
「藍子が帰ってきてないから、心配で俺に電話したんだよ、おばさんがね?親馬鹿も大概にしろっつーの…」
「なんだ結構中良いじゃん、君達」
「仲良いってより親同士の付き合いだからなーーーーっと!じゃあぼちぼち行くか!あいつ探しに行かねーと!それじゃーさいな----…!?」
それはなんというか、ねっとりとした感覚だった。例えるなら汚泥のようなというのが最も的確だろう。
その汚泥のようなべとべとと心に張り付くような感覚がその場に居た全員に駆け巡る。
ドクン…ドクン…ドクン
「ガラ!何だよ!?この嫌な感じは…!」
--三人目か…しかしこれは-----
通常ではガラしかこういう感覚が分からないのだが、今回ばかりは違う。
普段二重存在はおろか、普通の浮遊霊すら意識せねば見えない葎でも、その嫌な感覚は分かった。
分かってしまったというのが正しい。
それほどまでに念というか、感情が強いものだった。
そう、これは酷く…酷く醜悪な----
--何という…悪意……!!--
「これ…何だよ…!」
「とにかく…俺とガラはこれを追う…!風早!君は先に帰った方がいい…これは異様過ぎる…!」
「帰れってたって…あっ…!おいッ!」
燐太が返事をするよりも早く葎は駆け出していった。
「置いてくなよー…もぉーー…」
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---うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ………
そろそろ最初の話も見返して編集しないといけませんね…
まぁ少しづつやってはいるんですが…俺の文章力じゃあ手が追いつかなくて…
指摘とかしてくれたらいいんですけど…ちらっ
それじゃーーまた来月!




