でぃあ まい とらぶるめーかー ぷらす!
♪〜〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜
目覚まし時計が耳元で鳴り響く。いつもと同じ目覚めの瞬間。
「…………寒っ!?」
起きたら凄く寒い。気付けば窓が全開で、布団も着ていない。………なんで?布団は俺のすぐ横で丸まっている。
「寒い………」
俺は隣で丸まっている布団を引っ張って被り直した。
「きゃっ!!」
……………『きゃっ!!』?隣を向くと、
「お、おはよ。」
夏澄がいた。
「お前はなにやってんだ!!!」
「いや、起こしにきてあげたら、あんまり気持よさそうに寝てるんだもん。つい私も眠くなっちゃって………てへ♪」
てへ♪じゃねぇよ。また窓から来やがったな………窓ガラスまた一枚駄目になった………。こいつは俺の幼馴染みで、如月夏澄。起こしに来てくれるのは嬉しいが、その度に窓ガラスが破損するという、有難迷惑どころか迷惑なやつだ。
「で、何で俺の布団を被ってるんだ。」
「だって寒いんだもん。」
窓を閉めろ!窓を!!!
「葵ちゃん、起きてる〜?入るわよ…………」
………なんてタイミングで入って来るんだよ、母さん……。俺と夏澄が同じベッドで寝ている。つまりそういう状況に見えなくもない訳で………(汗)
「ごめんね〜二人共、お邪魔しちゃったかしら!ごゆっくり〜♪」
ドアを閉める母さん。トタトタと走る音が聞こえる。
「悠くん聞いて!葵ちゃんが夏澄ちゃんと………」
「ちょっと待てーーーι!!!」
「びっくりしたわ〜!葵ちゃんったらもう♪」
「女の子みたいな顔してやるな、葵!」
「だから、違うって!!!」
「そうですよ!!!」
「やだ、照れなくていいのよ〜♪夏澄ちゃんなら大歓迎よ!」
このアホ親共!!!相手をしていて疲れるこの二人が俺の両親、柚木悠と柚木春菜。いまだにお互いを『悠くん』『春菜ちゃん』と呼びあっていて、正直ウザい。
「………もういいよ、ちょっと出かけて来るから。」
今日は夏澄と出かける約束をしていた。
「あら、夏澄ちゃんとデート?」
………もう返事しないでおこう。
「お邪魔しました。」
「行ってきます。」
「はい、行ってらっしゃい。」
夏澄と玄関をでる。
「あ、葵ちゃん。」
母さんが呼びとめた。
「なに?」
母さんは悪戯っぽく笑って言った。
「今日は帰ってこなくてもいいわよ♪」
「だから違ーーーう!!!」
静かな朝の住宅街に俺の声が響いた。
「葵〜コレが良いな〜♪」
「無理!もっと安いのにしなさい!」
と、いうわけで俺たち二人は再び近くのアーケードにに来ている。あの時は赤やピンクのリボンで飾り付けられていたが、一ヶ月たった今では青や白のリボンに変わっている。………つまるところ、ホワイトデーだ。夏澄曰く、『ホワイトデーのお返しはバレンタインの3倍は無いといけないの!』らしく、こうして付き合わされている。………あのチョコの3倍じゃこんな値段しねえょ………。
「じゃあコレ!」
「ROLEXもダメです!」
夏澄のやつ………性懲りもなくまたROLEX持ってきやがった………!そんなん買えるか!!!
「ケチ〜!」
「高校生にROLEXが買えるか!………それにな、一昨日買い物したから金が無いんだよ!」
そう、一昨日に買い物をしたので財布には3000円しか入っていない………
「え〜………葵、使えないね。」
「やかましい!」
俺の財布の中身の大半はお前によって消費されてるんだぞ?わかってんのかな………あぁ、俺の諭吉………!
「ね〜君達!」
「ん?」
なんかチャチャラした男達に話しかけられた。
「可愛いね。今ヒマ?俺らと遊ばねぇ?」
…………なに、なにコレ?もしかして俺、ナンパされてる!?
「あははははっ!!」
「笑うなよ!!!」
隣で夏澄が爆笑している。………笑うな(泣)!!!
「ねぇ、どうかな?」
男の一人が胡散臭い笑顔を向ける。
「うるせぇな、俺は男だ!」
ったく!こんなのにかまってるヒマはない。
「君………男?」
「そうだよ!さっさとどっか行け!!」
全く!男をナンパすんな!!!
「そんなバレバレの嘘つかなくていいのに。」
「え?」
…………嘘じゃねえっての(泣)!!!
「あはははは!」
夏澄のやつ、まだ笑ってやがる!!!
「笑ってないで遊ぼ〜よ。」
男の一人が夏澄の肩に手をかける。………あー、夏澄の目付きが変わった………知らね………。
「ちょっと……気安く触らないでくれる?」
「痛い痛い!!」
夏澄は男の手首をきめている。
「うるさい。」
「ぎゃあぁぁぁ!!」
う〜ん、瞬殺。さすが合気道部。てか、ゴキッて音したよ………
「このアマ!!」
まずい!流石に夏澄でもこの人数は………!5人の男たちに囲まれる俺たち………俺も!?
「ちょっと可愛いからって調子のってんじゃねえぞ!!」
「そうだ!銀髪だからって調子のってんじゃねぇ!」
「蒼眼だからって関係ねえんだよ!」
………あれ?矛先俺!!?なんで!?俺なんもしてねぇ!!ていうかテメェら……
「男だっつってんだろ!」
衝動的に一番近くの男に蹴りをかます。………あ、やべ(汗)
「テメェ………」
「いや、あの………」
コレまずいよね……?
「あれ、やっぱり葵じゃん。」
場の雰囲気にそぐわない明るい声が聴こえた。声の主は俺たちの間を割って俺の所まで来た。
「桐子さん!!」
「よ。なにやってんの?」
長い黒髪を後ろで束ねて青縁のメガネをかけているこの人は一ヶ月前に無理矢理手伝わされたメイド喫茶の店長の桐子さん。………空気読んで下さい。
「いや、なんというか………」
「部外者は引っ込んでてくれないかな?」
男の一人が桐子さんに言う。
「あ、ごめん。」
素直に謝った!!?
「ったく、おい!場所変えるぞ!」
男が俺の手首を掴む。
「痛っ!」
強く引っ張りすぎだっての!
「せいっ!」
右ストレートいったーーー!!!俺が『痛っ』って言った瞬間に桐子さんの拳が男に炸裂した。
「うちの従業員に何してんだコラ!!」
男たちに怒鳴る桐子さん。………てか、俺従業員じゃないんですけど?いつの間に正式採用されたんだ………
「やべぇぞ!逃げろ!」
「逃がすか!」
その後はまさに地獄画図………逃げる男たちを殴る蹴る………怖ぇぇ!
「だいたいなお前らは……」
そんでもって男たちを正座させて説教をしている。通り行く人の目が痛い………
「葵……」
「……逃げるか?」
「うん……」
俺と夏澄はこっそりとその場を後にした。
「酷い目にあった………」
もうすっかり日が落ちて、辺りは茜色に染まっている。
「でも楽しかったね♪」
「………そうか?」
夏澄は楽しそうに笑っている。………どこが楽しかったんだ………俺は携帯を取り出して時間を確認する。
「………もうこんな時間か。」
俺は携帯をポケットにしまって、代わりにあるモノを取り出して手に握った。
「じゃ帰ろっか。」
「あぁ。」
「あっ!」
突然夏澄が声をあげた。
「なんだよ。」
「結局バレンタインのお返し貰ってない!」
………ちっ、気付いたか………
「まあ、いいじゃん。」
「良くない!」
夏澄はそう言って俺を睨んだ後、そっぽを向いた。しょうがねぇな……
「夏澄。」
「何よ。」
夏澄は不機嫌そうにこっちを向いた。………ったく、子供か。
「ホラよ。」
俺は手で持て遊んでいたソレを親指で弾いた。
「わっ!!!」
ソレはキィーーーンと、澄んだ音を立てて弧を描いた。夏澄はいきなりの事に驚きながらもソレを受け取った。
「コレ………」
「これがいいって言ってただろ?」
それはシンプルなシルバーリング。
「なんだよ、不服か?」
「不服じゃないけど、お金無いんじゃ………」
「ああ。その3万のシルバーリング買ったせいでな。」
そう………一昨日に買ったモノだ。そのせいで財布には3000円しか残っていない。
「………」
夏澄は無言で俺を見ている。
「要らないんなら返せよ。高かったんだから……」
「………ううん。ありがと葵!」
そう言って夏澄は微笑んだ。その顔を見ていたら今日あった事とか、コイツといるとトラブルに巻き込まれるとか、そんなんどうでもよくなっちまった。こんな日々もたまには良いかもしれない…………………たまには。
シンプルなシルバーリングの内側にはしっかりと彫ってもらった。
『Dear My Trouble Maker』
後日談―…
「葵!!!」
「なんだよ夏澄。」
「このリング……内側に彫ってある文字、あれどういうことかしら?」
「どういうこともなにもそのまんま………痛いっ!関節はやばいって………!!!」
「問答無用!」
「ぎゃあぁぁぁ!」
…―END
どうも、3月始めに書き始めたくせに書き終わったのは3月終わりのぺたです。いやぁ、ホワイトデーなんてとっくに終わってるっての!言い訳としては、インフルエンザで寝込みましたf^_^;あ、どうでもいいですね………
というわけで、今回はとらぶるめーかーから一ヶ月後の葵と夏澄でした。今回、店長の名前が発覚です。まあ、とらぶるめーかーのときに名前考えるのがめんどくさかっただけですが………ιわんだふるでいずにも登場させよっかな………
評価・感想をいただけたら幸いです。それではまた!
【2007/03/29】