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第二十七話 修羅場



神の遺物。世界の法則すらねじ曲げるその力は、全部で12も存在している。



俺と尋、瑞希ちゃんで3つも揃っているわけだが、残り9つのうち所有者が全部女性だと誰が予想出来ただろうか。



ここまで言えば俺の苦労も少しはわかってくれると思う。全員が全員、素直に影との戦いに協力してくれる人ばかりではないのだ。



それはもう、本当に涙ぐましい努力でだな・・・・。



「何が涙ぐましい努力よ、このたらし」



そう言って俺を睨むのは、高校生にもなってツインテイルが似合う神の遺物の保持者、御津神 満<みつかみ みちる>である。



厄介なことにコイツの力は、人の心を詠む力。俺が心の中で語っている独り言もモロバレなのである。つか俺にその力を使うなって何度言えばわかってくれるのか。



「そりゃあ、アンタが影とかいう化け物を倒すのに仲間を集めてるってのは聞いてたけどさ。全員女の子だなんて聞いてなかったし、なんていうかその・・・・」



集まってくれた9人をぐるりと見渡す。狭くはない部屋だが、これだけ集まれば多少は狭くなる。



それぞれの顔には嫉妬と嫉妬と、不安と嫉妬が入り交じっている。何で嫉妬成分が強いかは気にしないことにしてくれ。



仲間になってもらう為に色々とフラグを建てたのは間違いなく俺の意志だ。



さてどうするか。尋みたく顔に恵まれなかった俺だが、どうやら口先だけは結婚詐欺師になれるレベルらしい。ここは得意の言葉を駆使して―――――いや、そういえば一人、真実を見極める力を持ったヤツがいたな・・・・くっ、これだから人外の集団は。



「とりあえず、話を聞こう」



威圧的にそう言ってきたのは前の世界で高校女子柔道の全国トップを三年間連続でとるという快挙を成し遂げた流宮 遙<るみや はるか>先輩だ。



あらゆるものを破壊する力を持っている彼女の鋭い視線に、俺は顔をひきつらせながら頷いた。






☆☆☆☆






影について詳しく説明し、そして影を倒すには全員の力が必要で、仕方なく皆さんとお近づきになったんですよ〜なんて、土下座なんかをオプションに説明したわけだが、場の空気は明らかに悪い方へと転がっているわけだ。



そりゃ、恋愛感情とかを利用されてたわけだからその気持ちは十分にわかる。どれだけ謝っても謝り足りないことも。だから俺が出来ることならなんでもやるつもりだ。



「な、なんでもってことは、先輩とあんなことやこんなことも出来るっことですよね・・・・?」



サイドテイルに幼さが残る顔でそんなことを言ったのは楠川 香苗<くすかわ かなえ>。彼女の能力はイメージを具現化するとかいうまじチート能力。妄想癖が強いのはその副作用なのだろうか。



ざわっと部屋が喧騒に包まれる。あのー皆さん。なんで真剣な表情で悩み始めるんでしょうか。



極度の人見知りは、緩和はされたが治ったわけじゃないんだ。そういうことをしたくないと言えば嘘になるが、出会って一年も経ってない人と触れ合うのは嫌だ。吐き気がする。



この場から逃げ出すという選択肢が頭に浮かぶが、なんとか振り払う。騙すみたいで悪いが、全ては影を倒すまでだ。それまではどんな妄想をされようと笑顔で受け流そう。



そんな俺をじっと見つめる女の子、綾知 優<あやち ゆう>。赤いリボンが特徴の彼女が、真実を見極める力を持っている。



ちょっと綾知さん。ここは俺のことを想って内密にしてほしいかな・・・・なんて。



「雅が嘘をついた」



どこか如月と似たようなしゃべり方だなーとか現実逃避してみる。あぁーもう!本当に嫌だコイツら。



「まさまさは、私のだよん」



ふと後ろから声が聞こえて振り返ると、しーっと唇に指を当てる女の子が片目を瞑っていた。



彼女、利野 裕理<としの ゆうり>の力は、彼女と彼女が触れたものの存在の認識をズラすという力。端的に言えば、他の人は俺と裕理の姿が見えなくなるわけだ。



「雅っ!どこにいるの!」


満がキョロキョロと視線を動かす。まぁ、普通は見えないはずなんだが、彼女は心が詠めるからな。



「声はする。この部屋にいるのは間違いないわね」



声というのは心の声のことだろう。というかこの能力が効かないヤツが一人いることに裕理は気づいているのか?



「そこ。そこに雅はいる」



ほらみろ。綾知の真実を見極めるってのは嘘を見抜いたりするだけじゃないんだよ。



「任せてっ」



身体が動かなくなる。ショートカットのスポーツ少女。確か水泳部だったか?彼女、小夜森 和泉<さよもり いずみ>の能力は止める力。それはもう、流動する水とかから、目に見えない時間まで。コイツもまじチート。



「ばれてーら(死語)」



てへりと舌を出す裕理。・・・・本当に何なんだろうな。この人外魔境空間は。


「とりあえずまー君が私たちをどうするのか知りたいな」



今まで沈黙を保っていた赤のカチューシャがよく似合うお姉様、大葉 七海<おおば ななみ>先輩が口を開く。彼女の能力は、ありとあらゆるものを魅力する力だ。まぁ、何故か俺には効かないんだが。



「・・・・・責任は、とる」



都合のいいことにこの世界は一夫多妻が認められているのだ。合法ハーレム。いいね。嘘だけど。



こんなヤツらと一緒にハーレムなんか作った日には、俺の命がない。三日も持たずに死ねる自信がある。



責任というのは、そーだな。アイス買ってやるとかでいいだろ適当に。



「それ・・・・本当?」



俺の発言に目を光らせてるのは元素を好きなように操れる能力を持った加賀美 千弦<かがみ ちづる>。明らかに中学生くらいしかない身長でツルペタ。付き合おうものなら、ロリコンの称号を賜わうレベル。ちなみにコイツの上目遣いは凶器だ。



さてさて、色々と収拾がつかなくなってきた所で残りの人を紹介しよう。

といっても最後の一人だ。我関せずと古ぼけた本を読んでいる眼鏡っ娘が、楢名 響子<なるな きょうこ>。かなり自信家なトコがある彼女。



ふと、「雅が私のことを好きなのは確定してるから」なんて呟く。



・・・・おいおい。どうすんだこれ。なんか今にもバトル始まりそうなんだけど。



視線をずらすと、窓の外に尋゛たち゛の姿が。よし逃げよう。影と戦う前に死んでしまいそうだ。



俺は思い切って、宿の二階の窓枠から飛び出した。

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