第二十三話 決勝
「香撫に会ったの?!」
長女に香撫のことを話すのは、如月と会った次の日。武闘大会予選当日になってしまった。
それまで会うタイミングなかったし、わざわざ長女に会いに行くのも面倒だったので今になったわけだ。
「あぁ。たぶん会場にいるぞ」
俺がそう言うと、長女はキリカと共にどこかへ去っていった。
まぁ家族と会えるんだ。急ぐ気持ちはわかる。
「もうすぐ長女の出番じゃなかったっけ」
☆☆☆☆
武闘大会の予選は100人の総当たりで行われる。
最後まで残った一人が本戦に出れるというシンプルな大会だ。
本戦出場できるのは36名。俺が出るブロックの予選出場者リスト見ても尋の名前はなかった。
つまり会うのは本戦か――――なんて。バトルアニメの主人公みたいなことを考えながら自分の番を待つ。
『第6ブロック出場者は受付の前に集まってください』
魔法を使った放送が流れた。俺は腰を上げると指定された場所へと向かう。
誰からなんと言われようと、この大会は゛全力゛で頑張ることに決めたんだ。
予選なんかで負けてられないな。
☆☆☆☆
敗北条件は、リングアウトになるか死ぬかギブアップするかだ。
人が蠢く小さな闘技場の上で軽く具合悪くなりながら開始の合図を待つ。
『さぁ!早くも予選6戦目。今年は本戦出場者に一年生が多いですねー』
・・・・司会者の人。早く試合開始してくれまじで。
そこから司会者の人と解説の人のしょうもないやりとりが少し交わされ、やっと試合開始の声がかけられた。
出場者の皆がどう動こうかと視線を動かしたり、一部のやつが早速魔法詠唱に入ったりしだしたが――――遅い。
闘技場の中心をねじり上げる。そしてそれを解放すると、元に戻ろうとする力が発生して風が起こった。
数人が飛ばされリングアウト。他は飛ばされないように必死になっている。
後はただ、全力で動いてリングの外に落としていくだけ。
微々たるものだが、魔法による身体強化のお陰か、師匠から鍛えられた俺の動きを捉えられる人はいなかった。
開始数分。試合は呆気ない幕閉じとなった。
俺はすぐに闘技場から降りると、ガヤガヤとうるさい外野を無視して自分が泊まっている宿へと帰った。
人の視線に晒されたせいで相当だるいのだ。
それに尋は勝つだろうし、試合なんて見る価値もないしな。
―――――というわけで本戦に出場した俺は、尋と会う機会はなかったけど神の遺物というチートを使い呆気なく決勝へとやってきた。
対戦相手は、尋―――――の妹の瑞希ちゃん。
尋は先ほど、準決勝で瑞希ちゃんに負けた。
選手控え室にいた俺はそれもそれで尋らしいな、なんて苦笑しながら、闘技場へと足を進める。
「・・・・よう」
「・・・・お久しぶりです」
闘技場へ向かう時にふと出会ったソイツは、前と変わらないにこやかな笑みを顔に浮かべていた。
「決勝で雅君と、なんて思ってはいたんですけどね」
「妹に負けるとか、へたれの極みだなおい」
交わした言葉はそれだけ。尋は苦笑を浮かべながら。俺は嬉しさを隠しきれず思わず笑みがこぼれるのを抑えきれない。
俺は闘技場へ。尋は・・・・まぁたぶん観客席にでも行くのだろう。話すことはいっぱいあるけど、今は少しの言葉を交わすだけで良かった。
「頑張ってください」
「・・・・・・・おう」
闘技場へ出た俺は、眩しさに目を細めながらリングの上の人物を見る。
「お久しぶりです雅君先輩っ」
ニコニコと微笑んでいる瑞希ちゃん。
どことなく悪魔の笑みに見えるのはきっと俺の気のせいだろう・・・・むしろそうであってほしい。
「久しぶり」
リングに上がった俺に、瑞希ちゃんは笑みを崩さないまま問いかけた。
「雅君先輩。この試合でちょっとした賭をしませんか?」
展開速度ェ・・・・。いや、ネタ切れとプロットなしのグダグダ感が堪らないのでスピード解決しようかなと
そしてわいてくる新しい物語の数々。どうしろと言うんだ