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第十七話 異世界とネコミミ

「ここは・・・・?」



口にしてみるも、なんとなく予想は出来ていた。


女の子の頭部には、ぴょこんと二つの耳が飛び出ていたのだ。形から察するにネコミミだろう。



俺は師匠の力によって、影から喰われていく故郷からこの世界に飛ばされたのだ。



つまりここは異世界。おそらく師匠のいた世界だ。



・・・目を瞑ると、影が覆い尽くす真っ黒な空が、師匠の顔が頭に浮かんで泣きそうになる。なんて俺は無力なんだ。



「えっと、ここは鉄国<くろがねこく>のミヘンチルダ騎士養成学校です」



女の子は俺を見て首を傾げながらそう言った。



騎士養成学校。これは何かの偶然だろうか。


神の遺物を持ち、騎士の称号を持っている俺が騎士養成学校に運よく出現する。



偶然では、ないのだろう。きっと師匠が謀ったのだ。あの人にはやっぱりかなわないな。



「ここにいるってことは、入学試験を受けに来たんですよね?・・・・え、えっともしかして違うんですか?私の勘違いですか?あ、あの、あの、ごめんなさ――――」



「いや、入学試験とやらを受けに来たんだよ」



時間がない。影のやつらはきっとまた、この世界も破壊しようと動くに違いない。



師匠は、俺たちに頼んだと言った。弟子の俺は、その頼みを聞き入れて強くなるしかない。あの影共を倒すために。



気になることは沢山ある。尋たちはどこに行ったのだろうかとか、何で言葉が通じるのだろうかとか。



何も知らない世界に飛ばされて不安もある。



しかし、立ち止まってはいけないのだ。やるべきことはたくさんある。



「そ、そうなんですか。よかったぁ・・・私、勘違いをしてよく怒られるから、またやっちゃったんじゃないかって思っちゃいました」



まずは、そうだな。女の子の表情が変わるとともに、微かに動いてる頭部の耳がどうなってるのかな――――とか。






☆☆☆☆






ネコミミ女の子の名前はディレットリアというらしい。



彼女もこの学校に入学試験を受けに来たのだが、どうやら迷ってしまったんだとか。



そうやって学校の敷地内を歩き回っているうちに、地面にのびている俺を見つけたのだそうだ。



ちなみに、俺が倒れていた少し後ろの方には大きな池があり、もう少し後ろに召喚されていたら池の中にドボンだった。



というか師匠の狙いはたぶんそれだったな。あの人、イタズラめっちゃ好きだったし。



「ディレットリアさん?いい加減機嫌なおしてくださいよ」



明らかに怒ってますよオーラを出しながら、俺の数歩前を歩くディレットリア。



いや、お互い自己紹介した後すぐに、好奇心に負けてディレットリアの耳を触ってしまった俺が悪いんだろうけどさ。



人見知りスキルにも勝るって、ネコミミは恐ろしいね。



まぁ、ディレットリアの容姿がどことなく日本人っぽく見えるのも人見知りスキルが発動しなかった原因の一つなんだろうけど。



「耳は、魔力を探知するとっても大事な場所です。だからその・・・・敏感、なんです」



うぅ。そう言われると尚更悪いことをしたような気分になるな・・・つまり俺は痴漢的な行動をしてしまったのか?



敏感ってことは、そうなるよな・・・・こう見えても、陵辱ものとか無理矢理なのはあんまり好きじゃなかったんだけど、自分が似たようなことをやってしまうと、まじで自己嫌悪はんぱないな。



でも、ネコミミの誘惑力が悪いんだよ!といいわけしてみる。皆だって目の前にネコミミの女の子がいたら耳触りたくなるだろっ!



・・・・ただの言い訳か。おとなしく謝るしかないよなぁ。異世界で初めての知り合いなんだし。



「・・・・ごめん」



「・・・・いいですよ、もう」



ディレットリアは小さく笑いながらこっちを振り向いた。



耳にばかり気がいってたけど、ちゃんと尻尾もあるのな。触ってみた・・・・いや、自重自重。



「人族って、怖い人ばっかりだと思ってたけどそうじゃないんですね」



まぁ俺は人ではあるが、この世界の人間じゃないんだけどね。



「私のこと、ディリアって呼んでください。そっちの方が呼びやすいですよね?」



「・・・・俺のことは雅でいいよ」



何故か急に機嫌がよくなったディレットリア・・・・ディリアはそう言って駆け出した。



「受付見つけましたー」



俺はそんなディリアの後ろをあわてて追いかけた。





☆☆☆☆






受付にいた人、金髪の金持ちですって感じの服着てる気障っぽい男は、ディリアを見てあからさまに厭らしい目つきになった。



「ほぅ。獣人がこの歴史あるミヘンチルダ騎士養成学校に来るとは珍しいな」



「え、えっとその・・・・」



「いい身体をしているなぁ。どうだ。今夜にでも俺の相手をしないか?」



「ぁう・・・・それは・・・」



さて。二人の会話についていけないけどどうしたもんか。



「すみません。俺も受付したいんですけど」



とりあえず割り込んでみた。



そう言って初めて俺の存在に気づいたのか、金髪野郎はディリアの時とは明らかに違う表情で俺を迎えてくれた。



「どうぞこちらにお名前を。我らミヘンチルダ騎士養成学校は優秀な人材になりうる貴方を歓迎いたします。どうか試験合格目指して頑張ってくださいね」



態度の違いに驚きつつ、差し出された紙を見る。


・・・・なんて書いてあるか読めねぇ。しかもこの世界の字がわからん。



困惑した表情で紙を睨んでいると、ディリアが声をかけてきた。



「もしかして、読めないんですか?」



ついでに字も書けないんだが。



ディリアは嘆息して俺から紙を奪うと、サラサラと何かを書いていく。



「必要なのは名前だけですから、はい」



紙を受け取った俺は、それをそのまま受付の人に渡す。



「平民かよ畜生が」



舌打ちとともに、早く行けと急かす金髪。ムカつくからディリアが終わるまで待つことにした。



なんだか色々暴言を言われたような気がしたけど、残念ながらスルースキルはカンストレベルなんでね。



そんな俺の態度が気にくわなかったのか、ディリアにすぐ紙を渡した金髪は、ディリアから紙を受け取るとまたもや暴言を並べ始めた。



俺はディリアに行こうか、と促しその場を去った。



試験会場である広場に受験者を導く矢印を追いながら歩く。



「どうかしたの?」



暗い顔をしているディリアに声をかけると、何を言ってるんだ的な視線で見られた。



「やっぱり、人が獣人に接する態度ってあれが普通なんだなーって落ち込んでるだけです」



「俺も人なんだが?」



そう言うと、ディリアは少しだけ笑った。



「マサは・・・・変な人です」



獣人と人。どうせロクでもない隔たりがあるに違いない。よくある小説の設定だと、身分的な何かとか、そういうの。



「あ、見えましたよ。人がたくさんいますねっ」



元気を少し取り戻したのか、興奮気味なディリアが声をあげる。それに反して、俺のテンションはガタオチした。



目の前の広場には、500を越える人が集まっていたからだ。



すでに具合悪くなってきたぞおい。



受付のとこからこの広場までは一本道だったし、今なら帰れるが・・・・逃げてなんかいられないよな。



とりあえず深呼吸。気合いを入れて、俺は一歩を踏み出した。

物語がタイトルっぽくなってきましたねー

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