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第十五話 告白―――そして

いつの間にかお気に入り登録が100をこえてた・・・・こんな稚拙な小説を呼んでくれてる皆さんには感謝ですね!読者の皆さんまじ天使!



ピピピピピ――――。



目覚ましが鳴ると同時に俺は身体を起こした。



朝の6時。いつもならまだ爆睡している時間だが、今日は早起きしなければならない理由があるのだ。



そう。今日は人生で初めて告白する日。緊張のせいか寝不足気味で少々だるい身体を無理矢理動かして、学校に行く準備をする。



まずは先輩を呼び出すための手紙を渡さないといけないのだが、直接は個人的理由で却下。



ベタだが、先輩の下足箱に手紙を入れることにした。誰にも見られたくないし、学校に早く行くのはそのためだ。



ちゃっちゃと準備をすませ、悩みに悩んで書いた手紙を鞄に入れる。



朝食を取ろうと台所へ向かうと、不運なことに長女と遭遇してしまった。



お互い何も言葉は交わさず、俺は食パンをレンジに突っ込んで焼き上がるのを待つ。



レンジは台所の後ろにあり、長女とは背中を向け合うかたちになった。



ジーッとレンジのダイヤルが動く音だけがやけに響く。



静けさをやぶったのは、意外にも長女だった。



「朝、早いわね。珍しい」



普通に話しかけてきたことに驚きつつ、チンッといい音を鳴らして停止したレンジから食パンを取り出す。



「・・・・まぁ、ね。ちょっと用事あるから」



その場で食パンをかじりながら返事を返す。



チラリと後ろをうかがうと、長女は三人分の弁当を作っていた。



へぇ・・・と思わず関心する。



初対面で色々言われたし、会う度に文句しか言われたことがない。家事とかは香撫の方が似合ってるし、長女は意地っ張りだけど実は何も出来ないキャラってのが俺のイメージだったんだが。



「妹たちは料理下手だから。私がやるしかないの。料理好きだし」



俺のへぇという言葉が聞こえたのか、長女は早口で説明する。



そうか、とただ相づちをうつ。長女の様子が今日はちょっとおかしい。



こんなに普通の会話を長女としたのは初めてだ。



「はいこれ」


長女が出してきたのはおかずの乗った皿。



「余ったから。捨てるのもったいないし、食べて」



やはり長女の様子がおかしい。熱でもあるんじゃないだろうか。



しかし、食パン1枚程度では全然満足出来ないのでありがたく頂戴する。



適当に手でつまんで口に放ると、思わず言葉がもれた。



「うまい・・・・」



俺が作る料理の倍以上はうまい。こんな料理、久々に食べた。



「勘違いしないでよ。私はただ、香撫から明日だけはあんたに厳しくしないでって頼まれたからこうやって余り物を恵んでやってるだけで、別にあんたの存在を認めたとかそういうんじゃないんだから」



早口でそう言って、長女は台所から去っていった。



俺は苦笑いしつつ、あっという間におかずが消えた皿を洗うと、玄関へ向かった。






☆☆☆☆






『伝えたいことがあるんです。放課後、屋上に来てください』



先輩の下足箱に入れた手紙の内容は、ありきたりなものになった。どうやら俺に文才はないらしい。



早くも、昼休みの開始を告げるチャイムが聞こえてきた。今日はやけに時間が経つのが早い。



「どうです?調子は」



「最悪だよ。調子よさそうに見えるのか?もし見えるなら眼科に行くことをお勧めするね」



にやにやと笑いながら寄ってくる尋に嫌みをとばす。



「まぁまぁ、そう言わずに」


他愛もない話を尋と交わし、昼食をとる。



なぜか記憶が曖昧だ。



気がつくと放課後になっていた。



「こんなに緊張する人間だったとはな・・・・」



屋上に来た俺は、落下防止のフェンスに体重を乗せながらため息をつく。


新たな自分の一面を発見して喜ぶべきなのか?なんてつまらない問答を一人でしているうちに、屋上のドアがゆっくりと開いた。



憧れの先輩――――水島先輩が現れたのだ。



長い金髪に、絶対領域を作り出している黒ニーソが眩しい。



整っているが、無表情な顔。やはり先輩は最高だ―――――けど、何か違和感がある。



なんというか、既視感にも似た何か。



「これ」



水島先輩は手紙を出した。俺は緊張しながらうなずき、昨日必死で考えた言葉を紡ぐ。



「俺、水島先輩のことが好きなんです。よかったら俺と――――」



「何で?」



水島先輩は真剣な表情で俺を見つめる。



「え、えっと理由は―――――」



理由は、なんだ?俺はただ、自分の好みに先輩がぴったり当てはまるから先輩が好きで――――本当にそうなのだろうか。



「あなたのことは、知っていた」



先輩が突然そう言った。



「だってあなたは、私と同じだったから」



先輩の言葉に、ハッとなった。



そうだ。俺が先輩を好きになったのは、先輩が俺と同じだったから。



さきほど感じた既視感。俺はほぼ毎日、鏡にうつるあの表情を見ていたのだ。



尋に会う前の俺と、まったく同じ表情を。



だとしたら俺は――――。



「・・・すみません先輩。何もないのに呼び出したりして」



気持ちが急激に冷めた。最悪だな、俺。



そう。きっとあの時の俺は先輩を好きになってなどいなかったのだ。



俺はただ、先輩を憐れんだ。なんて可哀想な人。一人の孤独さは一番俺が知っている。



まるで自分自身を見ているようで。先輩が孤独じゃなくなれば俺も孤独じゃなくなるかもって。



ただそう思っていただけなのだ。最低だ俺は。



ただ自己満足のために、先輩を好きだったような気持ちになっていただけなんだ。


「・・・・本当に、すみませんでした」



頭を下げる。土下座をしても、謝りきれない。俺は先輩にそれだけ酷いことをしたのだ。



「いい。気にしないで」


先輩は淡々と答える。



「私も、同じだったから」



そう言って先輩は出口へと向かった。



『私も、同じだったから』先輩の言葉が頭の中でリピートされる。



先輩は俺と違って、今でも孤独なのだ。



なら、俺に出来ることは何だろう。



考えるまでもなかった。尋は俺に何をしてくれた?



それが答えなのだ。去り際に見せた先輩の悲しそうな表情は、きっと助けを求めている。



俺がそうであったように。



孤独は、つらい。


だったら、俺がやるべきことはただ一つ。とても簡単で、とても難しい。



先輩と、友達になればいいんだ。

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