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第十二話 司令官級

闇に無数の赤が蠢く。



深夜の1時30分を回った頃。ショッピングモールを歩いていた俺と尋は、すぐに背中を合わせて臨戦態勢をとった。



「・・・・多いな」



俺の呟きに、尋が後ろで頷く気配を感じる。



わりと田舎にあるこの町のショッピングモールは、0時を回った頃には9割の店が閉まる。



人通りはほぼないに等しいが、0ではないわけだ。



つまり、誰かに見つかる前に影を殲滅しなければならない。



「巻きでいくか」



「そうですね」



まず尋が、俺たち以外を拒絶する空間を創る。



しばらく待っていると、痺れを切らした影が飛びかかってきた。



もちろん尋の能力に阻まれる。近くまで迫ってきた影は、どいつも犬のような形をしていた。



俺の視界に入った影を、能力で捻りあげて消す。



そうやって単純作業を数分続けていると、蠢いていた影はいなくなった。


小さく息をはき、先ほどから感じる強い気配を目指して歩く。



「司令官級よりだいぶ強そうですね」



珍しく緊張した表情を見せる尋。



「ま、なんとかなるだろ」



これは予想ではなく、経験に基づく答え。師匠に比べれば、この位は全然苦にならない。



軽く言葉を交わしながら歩き、ショッピングモールも終わりに近づいてきたとき、鼻に濃厚な鉄の匂いがついた。



「・・・・尋!」



「大丈夫。問題ありません」



俺たちの町からショッピングモールに入り反対に抜けると、小さな川が流れている。



その先は森林生い茂る山があり、その山の中には神社がある。夏には祭りなどでかなり賑わう。



川に架かっている橋の真ん中で、月明かりを背に赤い目を光らせている生物がいた。



その生物は俺と尋を見るなり、ニヤリと笑う。



「ヲォォォォォォ!!」



遠吠えが空気を揺らし、俺と尋は唾をのんだ。



その姿はまさに――――狼人間。



これは、久しぶりにヤバいかもな。



冷や汗が背中を流れた。





☆☆☆☆






能力。神の遺物は便利であるが色々と弱点も多い。


一番の問題は、多様しすぎると疲労感がたまることか。



能力の規模、能力を使う対象によって、その回数は変わるが、一定数以上使うごとに、身体に疲労感が蓄積されていく。



個人差もあるが、俺の場合は約30回能力を使うと、疲労感が1つたまる。


1つくらいでは、50mを全力疾走した程度のものだが、回数を重ねていくと身体が動かなくなることもある。



それでも十分チートな能力なわけだが、つまり何が言いたいかというと、能力は長期戦になりそうな場合は温存しなければならないということだ。



狼人間――――人狼と言った方がカッコいいか。



人狼の攻撃を避けながら隙を窺う。



「ガウッ」



大振りした右手を避け、そこで出来た隙をついて人狼の身体を捻りあげる。


頭の先から雑巾を絞るように捻るイメージ。



「ガァァァァァァッッ!!」



人狼は涎を垂らしながらよろめいた。



しかし完全に捻りきれない。



「まじかよ・・・・」



頬をひきつらせながら体制を整える。



――――硬い。まさにその一言に尽きる。いや、まぁ、ダメージを与えられただけでもいい方か。



世の中には、世界に干渉するはずのこの力を使っても傷一つつけるのが精一杯な化け物もいるわけで。



尋が俺の横に並び、人狼の存在そのものを拒絶する。しかし、人狼は苦しそうに吠えるだけで見た目には傷どころか、何の変化も見られない。



少し――――本気を出そうか。数歩で人狼に距離を詰めた俺は、拳を握り人狼の身体に軽く当てる。



さらに能力を発動し、拳が触れた部分から力を解き放つ。



捻りとはつまり、回転の力だ。拳が触れた人狼は後ろに吹っ飛びながら扇風機のように回転する。



ぐしゃっと何かが潰れるような音とともに、血の匂いが広がった。



息をはきながら、尋と拳をぶつけ合う。柄にもなく頑張った俺は小さく呟いた。



「・・・だるい」



どこか遠くからサイレンの音が聞こえてくる。



俺と尋は逃げるようにこの場を去った。






☆☆☆☆





家に帰った俺はちゃっちゃと風呂に入りベッドにダイブした。



何もないところを捻るより、触れた部分を捻りあげる方がイメージも固まりやすいし威力も格段に違う。



しかし普通なら威力が強すぎるし、何より疲れるし使うことはないのだが、それほどの相手がこの町に現れたことにため息が出る。



そんなことを思いながら暗い天井を眺めていると眠気が襲ってきた。



明日も学校か―――――。鬱な気分になりながらも眠気に身を任せた。






☆☆☆☆






朝、学校へ向かっていると聞き覚えのある声にビクリと身体が反応する。



「おはようございます。雅君先輩っ」



俺は視線で一瞥すると、ため息をつく。瑞希ちゃんがにっこにこと笑いながら近づいてきた。



この娘は、まったく人の気も知らないで―――――「雅君。にやけてますよ?」



にやけてんのはお前の方だろう。



・・・・・まぁ、なんだ。記憶喪失作戦は見事に失敗したわけだ。しかも尋に作戦を伝えた翌日に。



まぁ、放課後に部室に行って瑞希ちゃんが居ることに一切突っ込まなかった俺が悪いんだけどさ。



バレた時は瑞希ちゃんにすげー怒られたし泣かれた。



その場はなんとかなだめて、俺はちゃんと説明したはずなんだけどな。瑞希ちゃんが俺と仲良くし続ける危険性とかについて。



それでも瑞希ちゃんは、俺に話しかけるのを止めないし、一体何を考えてるのか。


これが鬱になる原因。原因のはずなのに・・・・なぜかにやけが止まらない。



瑞希ちゃんを心配する反面、普通に接してくれる瑞希ちゃんの態度がとてもうれしい。



あんなに酷いことをしたのに、自分がまたいじめられるかもしれないのに。



「雅君先輩、むずかしー顔してます」



むむむ、と俺の顔をのぞき込んでくる瑞希ちゃん。



尋に視線で助けを求めると、にやにやと笑いながら俺たちから距離を置いた。



「ち、近いからっ」



どんどん顔を近づけてきて、息がかかるくらいまで近づいてきた瑞希ちゃんから逃げるように後ずさる。



「雅君先輩には、二度も助けられました。私、恩返しがしたいんです」



二度・・・・?俺が瑞希ちゃんを救ったのはこの前が初めてだよな?



「いや、いいよ。恩返しとかしてもらう為にやったわけじゃないしさ」



頭に疑問符を浮かべながらも返事をする。



「よくないです。全然よくないですっ」



しつこい・・・・・このまま言い合ってもきっと瑞希ちゃんは納得しないだろう。



なら、一つだけ。人と接するのが苦手な俺が、自分一人じゃ絶対叶えられない願いを、手伝ってもらおうか。



「なら、一つだけ頼んでいい?」



尋も俺の頼みとやらに興味があるのか、近くまで戻ってきた。



「実は、さ。好きな人いるんだけど俺って告白とかそういうのよくわからないし。なんてーかアドバイスとかしてほしいかなぁって」



あー恥ずかしい。



まくし立てるように早口で喋ったけど、めっちゃ恥ずかしい。



瑞希ちゃんが急に立ち止まる。様子を窺うと、瑞希ちゃんはぽかんと口を半開きにして固まっていた。



尋はと言えばため息をわざとらしく吐くし。



・・・・どうなってんの?

文を書くときの気分によってかなりムラが出来るのをどうにかしたいです・・・・。



誤字脱字があれば以下略

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