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第9話 一風変わった2人組<後編>

アレン編では、アレン→ラスリアの順で視点が変わっていましたが、今回のように1話丸まる一人の視点で物語が進む場合もあります。


「そいつを倒しなさい!!!」

不死者(アンデッド)に襲われているラスリアを助けようと走りだそうとしたアレンの背後で、その叫び声は聴こえた。

その直後は本当に一瞬の出来事だった。瞬きをした頃にはラスリアの目の前にミュルザが立ち塞がり…黒い光を発したかと思うと、掴みあげた不死者(アンデッド)を粉々に砕いてしまったのだ。


「・・・大丈夫?」

突然の出来事で身体が硬直しているラスリアに、イブールが手を差し延べる。

「ありがとう…」

その手を取ってラスリアは立ち上がるが、その表情(かお)は驚きと戸惑いで溢れていた。

なんなんだ、こいつらは―――――――――

アレンも、何がなんなのかわからずにいた。


「さて…」

ミュルザがボソッと呟いたかと思うと、ラスリアの腕を掴みあげる。

「痛っ…」

「貴様…!!」

アレンはすぐに身構えたが、ミュルザはそんな彼を睨みつける。

「!!!!」

最初は黒かったミュルザの瞳が、血のように真っ赤だった。

身体が…石のように重い…!

「ミュルザ!」

「仕方ないだろう、イブール。見られちまったものは…」

ミュルザの横で、イブールが険しい表情をしている。

「貴様…やはり…!」

アレンが動けない身体を動かそうと足掻きながら、ミュルザ達を睨みつける。

当のミュルザは、怯えるラスリアと、立ちすくむアレンを見て口を開く。

「…察しの通り、俺はイブール(この女)に付き従う悪魔だ」

「悪…魔…?」

彼の側で、驚きの余り声を失うラスリア。

すると、ミュルザの大きな手が彼女の頬に触れる。

「何…ちょっと頭の中をいじるだけさ。すぐに終わるぜ…」

「・・・止めなさい!ミュルザ!!!」

ラスリアの記憶を消そうとしたミュルザを、イブールが止める。

「わざわざ記憶を消さなくていいわ」

「…じゃあ、どうするんだ?」

「そうね…」

イブールは考えながら、アレンの方をちらっと見る。

彼らの間で沈黙が続く。

「…じゃあ、私達の旅に同行してもらおうかしら?」

「なっ…!!?」

「・・・私ね、旅をしながら、ある人物を探しているの」

「・・・!?」

イブールが低い声で呟いた直後、アレンは殺気を感じ取る。

人とは思えない殺気・・・。だが、この女は普通の人間…。一体―――――――――?

アレンが考え事をしていると、フワッと身体が急に軽くなる。

「まぁ・・・てめぇやこのお嬢ちゃんの“探しているモノ”も、ついでに探す手伝いをしてくみたいだぜ?」

ラスリアの腕を放して、ミュルザは話す。

「もしかして・・・あなたは、人間の心が読めるの・・・?」

「・・・まぁな」

「・・・・ちょっと!!」

ミュルザとラスリアの会話に、イブールが割り込んでくる。

イブールは彼の耳元でコソコソと話し出す。

「ちょっと!!”探す手伝い”だなんて、私は考えていないわよ!!」

「まぁまぁ・・・。それより、あの銀髪野郎と黒髪の嬢ちゃん。…どちらにせよ、この2人の記憶は消せなそうだ・・・」

「・・・どうして?」

「それは・・・」

 ・・・何を話しているのだろうか?

2人でコソコソしているのを見て、アレンやラスリアは不思議そうな表情で首をかしげていた。


「でも、“悪魔”だなんて聞いて、ビックリ!!・・・という事は、人間が持ち得ないような特殊能力を持っているというところかしら?」

魔物との戦いから数時間が経過し、すっかりいつもの調子に戻ったラスリア。

記憶を消されそうになった事なんて、当に忘れていたというような雰囲気だった。

 悪魔・・・か。人に化けれる奴は、相当魔力の高い連中だと聞いた事があるが・・・

アレンは悪魔について考える。

それは闇に生き、人間の恐怖・絶望・狂気・欲望など、あらゆる負の想念を好む。そして、狙いを定めた獲物は肉体から魂まで、全てを糧にしてしまう生物―――――――――。

そう考えると同時に、ミュルザ(この悪魔)を従えているイブールは、相当な暗い過去があるのではと考えていた。

「ラスリア・・・だっけ。あんた、見た目と違って図太い神経しているなぁ・・・」

平常心に返っているラスリアを見て、ミュルザはため息をつく。

「・・・とりあえず、本来の目的を達成しましょう!おそらく、もう少しで遺跡の中心部に到着するはずだから・・・」

「・・・“遺跡発掘”という目的は、どうやら本当のようだな」

「・・・ええ」

アレンの呟きに、静かに応えるイブール。

「考古学にもいろいろな種類があるけど・・・私が一番興味あるのは古代種“キロ”と、彼らが作り上げた文化・・・。星と対話する能力を持つ彼らは、いくら調べても尽きないくらい、奥が深いのよ・・・!」

「“古代種”ねぇ・・・」

「“星と対話する能力”・・・」

イブールの話に、ミュルザとラスリアはポツンと呟く。


「・・・どうやら、ここがこの遺跡の中心地みたいだな・・・」

そう呟きながら、アレンは辺りを見回す。

 彼らが通ってきた通路に描かれていた壁画は、どうやらこの場所の壁画への伏線だったと思われる。

「廊下に描かれていた壁画は、星を旅するキロ達の道のり・・・・。そして、遺跡の中心地であるここに描かれている壁画は・・・レジェンディラス(この世界)を見つけ、星と語りながらその地に住む生き物を探し出す・・・。それを意味しているのかしら・・・?」

この空間に描かれている巨大な壁画にソッと触れながら、感激するイブール。

ミュルザはその隣でやる気なさそうな表情かおをしている一方・・・

「・・・どうした・・・?」

アレンは壁画を触り、瞳を閉じて黙り込んでいるラスリアを目撃する。

「・・・・・・」

彼の呼びかけに対し、ラスリアは何も答えなかった。

何をしているのかと気になりながらも、とりあえずは黙って見守るアレン。1分程経過したくらいに、ラスリアの瞳が開く。

「古代種・・・彼らは、永い旅路を経てこのレジェンディラスにたどりついたんだな・・・って考えていたの」

「・・・そう考えさせるモノが、壁画これにあったのか・・・?」

アレンがラスリアに問いかけると、せつなそうな表情かおをしていた彼女が、ハッと我に返る。

「なんとなく・・・かな?それより、イブール!!」

「何?ラスリア?」

首をかしげるアレンに対し、あたふたし始めたラスリアは、少し離れた位置にいたイブールを呼ぶ。彼女に呼ばれたイブールは、その両手に何かを握り締めていた。

「何か、収穫になる物とかあった?」

「ええ!・・・まぁ、大した物ではないけど・・・」

そう呟いたイブールは、握り締めていた物をアレン達に見せる。

「石の・・・かけら?」

イブールの掌にあった物は、淡い水色をした石のかけらだった。

「これが“収穫”になるのか・・・?」

「絶対とは言えないけど・・・。でもね、今さっき調べたら、この石は遺跡を形作る物質とは全く異なるみたいなの。・・・“未知の物質”といった所かしら?」

 “遺跡発掘”とは、ここまで調べ上げるモノなのか―――――――?

考古学に対して知識も興味もないアレンにとって、熱心に遺跡を調べるイブールが不思議であり、逆に新鮮な感覚を持っていた。


「とりあえず、今回の調査はここまでね!」

「・・・もういいのか・・・?」

「だって、この遺跡を隅から隅まで調べていたら、一生を終えちゃいそうなくらい時間がかかりそうですもの・・・」

そう語りながら、イブールはフッと嗤う。

「イブール姐さん!学術都市アテレステンに・・・一旦戻るのか?」

ミュルザはそう問いかけながら、チラッとラスリアの方を向く。

 どうやら、ミュルザ(この男)は相手の心を読めるのだろうな・・・。だが、なぜラスリアの方を向く――――――――?

「まぁ、結構動いた事だし・・・アテレステンでメシでも食べるかね!アレン君」

大きな声で話しながら、ミュルザがアレンの肩に腕を置く。

「・・・おい・・・!」

アレンはその腕を振り払おうとすると

「あの嬢ちゃんは、他人ひとに知られたくない事があるらしい・・・。今は詮索しない事をお勧めするぜ・・・」

耳元でそう囁いたミュルザは、その後にアレンの肩から腕をどかす。

 

その後、彼ら4人はオーブル遺跡を出て、ラプンツェル山脈を下山していく。次の目的地は学術都市アテレステン――――一風変わった2人組であるイブールとミュルザと共に旅をする事になったアレン達。彼はオーブル遺跡で“イル”の手がかりがあまりなかったのに対して残念な気持ちはあったが・・・それよりも、ミュルザが言っていた“他人に知られたくない事”の方が気になって仕方ない状態になっていた―――――――


いかがでしたか。

今回出てきたイブールとミュルザのキャラ設定は漫画『黒執事』の影響を強く受けています。しかし、この設定のおかげで、いくつか構想が浮かんできていますので、『黒執事』万々歳ですね♪

ちなみに、主人公のアレンのモデルは『FFVII』のクラウドや、『テイルズオブリバース』のヴェイグみたいな寡黙キャラです!


ちなみに、次回はセリエル編によるスタートです。

今回の前編・後編を見ていると、よくわかるかもしれない内容となってる・・・かな?


ご意見・ご感想のほかに、細かい評価もお待ちしてます★

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