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第6話 ”星の意志”と古代遺跡<前編>

第2話をお読みいただいた方はおわかりかと思いますが、セイエル編の場合、主人公セリエルとナチの2つの視点で物語を進めていきます。

 ギルガメシュ連邦――――――――それは、アビスウォクテラに存在する国の一つで軍事国家。この国の他に、“ムーン・ゼブラ”・“ケルナス共和国”といった国々がたくさん存在し、領地などを巡って各地で戦争を繰り返している。人の心に“野心”の2文字がなくならない限り、この世界における戦争は幕を閉じることはないだろう。しかし、後に奇跡は起こるが――――――――


「それでは、今回の任務を伝える」

その言葉を皮切りに、セリエルとナチの上司はこの日の任務内容を伝える。

軍事国家であるギルガメシュ連邦。軍の階級は少尉→中尉→大尉と順を追って人は出世をし、“少将”までなると、部下達を率いる立場にある。一応24歳であるセリエルは、軍人としての実力で言えば中尉くらいに当たるのに、彼女は未だに少尉の地位にある。なぜ、その状況に甘んじているのかには、訳がある。


「セリエルさんは、”出世欲”ってモノが相当欠けていますよね・・・」

上司の命令でとある場所へ向かう途中、ナチが彼女に話しかける。

「出世ねぇ・・・・。まぁ、私はあなたと違って、やりたくて軍人をやっている訳ではないし、正直なところ、出世に興味ないのは本当よね」

歩きながらセリエルは答える。

「それに、上に立って人を動かすより、こうやって自分から動ける方が、私の性に合っているし」

「なるほど…。でも、理由はそれだけじゃなさそうですが・・・」

「…何が言いたいの?」

そう呟くセリエルがジロリとナチを睨む。

「…何もないです…」

その表情に圧倒されたナチは、気まずそうな表情かおで縮こまった。

 

 今回、彼ら2人に与えられた任務は連邦が抱える学者達の護衛。この学者達が向かう先は、近年発見されたばかりの古代遺跡。ギルガメシュ連邦では、新しい遺跡など古代遺産が発見された場合は、軍の監視下の元で調査を行っている。そうして調査を行い、いつの時代のモノか、危険性がないか等が確認されれば、“世界遺産”として一般人に公開される仕組みとなっている。

この古代遺跡に対する扱いは、どの国も共通であり、“世界遺産”に限っては、万国共通となっている。


「どうやら、遺跡に到着したようだ。行くぞ!!」

「はっ」

司令部からトラックで移動し、古代遺跡が存在する森の前まで到達したセリエル達。

 この場にいたのは、セリエル達を含む軍人が5人。学者は助手を含めて4人。その内の一人は、星命学者であるナチの父親の知り合いという具合だ。

「・・・ご無沙汰しています、ジェンドさん」

「やぁ、ナチ君。大きくなったねぇ・・・」

数年ぶりに会ったこの学者と軍人の他愛もない会話を、セリエルは横目で聴いていた。

 そして歩く事1時間、森の中に存在する古代遺跡に到達する。上司であるガンツ大尉の指揮の下、遺跡外部に何か危険なモノが存在しないか確認をし、一行は遺跡の内部調査に乗り出す。

「時にナチ君。・・・君はこの遺跡について、どう思う?」

遺跡内部を進み始めて数分後、ジェンドは真剣な表情に一変してナチに話しかける。

空気が変わった事を察したナチは、自身も真剣な表情をしながら辺りを見回す。

「口では表現しづらいのですが・・・なんか、神聖さと禍々しさが五分五分・・・という雰囲気がします。だから・・・ここは死者を奉る神殿かと思っています」

「なるほど・・・君はそう解釈したか・・・」

「・・・ジェンドさんは、どうお考えですか?」

ナチは低めの声で彼に尋ねる。

「わたしは・・・・」


「・・・・!!!」

ジェンドが自分の考えを話そうとした瞬間、セリエルが突然その場に立ち止まる。

「セリエルさん・・・!!?」

自身の右手で頭を抱え、その場で黙り込むセリエル。

「どうした?何かあったのか・・・!!?」

「ガンツ大尉・・・。セリエル少尉が・・・!」

セリエルの表情がつらそうなのに気がついたナチは、ガンツ大尉にその旨を伝えようとする。しかし・・・

「大丈夫です・・・・。少し・・・眩暈がしただけなので・・・」

ナチの肩を掴み、苦笑いをしながらセリエルは呟く。

「・・・体調管理はしっかりしとけよ・・・」

「はっ・・・」

一言述べたガンツ大尉は、元の配置に戻って他の学者と話し始める。

「・・・本当に大丈夫ですか?」

「ええ、平気・・・。しょっちゅうある事だしね・・・」

やっと眩暈を感じなくなったセリエルは、何事もなかったかのように歩き始める。

「・・・また何か“見えた”のですか・・・?」

「ええ・・・。後でまた話すわ・・・」

ナチが彼女の耳元でコソッと呟いたのに対し、セリエルも小声で話して頷いた。

セリエルには時折、フラッシュバンクのような感覚で、ビジョンみたいな映像が頭の中に入ってくる。それを何度か見る内に、自分にそれを伝えているのが“星の意志”である事を悟ったのだ。

 ビジョンに出てきた8つの人影・・・。そして、独特な雰囲気を感じるこいつらは確か――――――

遺跡内部を進みながら、セリエルは頭に浮かんだビジョンについて考えていた。


「ガンツ大尉。・・・どうやら、ここがこの遺跡の中心部でしょう・・・」

学者の一人が、ガンツ大尉に声をかける。

「そうですか。では・・・」

大尉はセリエル達の方を向いて口を開く。

「それでは、この場所を拠点に調査を開始する!!各自、学者達の後ろに待機し、危険物がないか辺りに気を配れ!それと、この場を出て他へ移動する際は、わたしに許可をとるように!!以上だ・・・!!」

ガンツ大尉の一言の後、学者達は調査を開始し、セリエル達軍人も自分達の配置につく。

「それでは・・・ナチ少尉と・・・こちらは?」

「・・・セリエル・ヒエログリフ少尉です」

ジェンドがセリエルの方に視線を向けると、本人は自分の名前を名乗った。

「では、セリエル少尉。・・・よろしくお願い致します」

「お任せください」

穏やかな表情で挨拶してきたジェンドを見て、少しは信頼のできる学者であると感じたセリエルであった。


          ※


 “星の意志が伝えるビジョン”・・・か・・・

学者達による遺跡調査が開始され、自分の知り合いでもあるジェンド博士の護衛兼助手を担当する事になったナチは、横にいるセリエルの持つ能力について考えていた。

 彼女の話は、現実的にはありえない内容だけれど・・・割とすんなり理解できたのは、父親の影響かもな――――――――――

彼の両親は2人とも学者で、星命学を中心とする考古学の権威であった。「この世界が別次元にある世界と、元々は一つだった」「我々人類が知りえない“星の文明”が存在するかもしれない」といった神話並みの話も、幼少時からたくさん聴かされてきた。おそらく、家庭の経済事情がなければ、彼は学者としての人生を両親のように歩んでいたのかもしれない。


「“8人の異端者”・・・?」

考え事をしていたナチの側で、ジェンド博士がポツリと呟く。

「ジェンドさん!何か見つけましたか・・・?」

ナチはジェンドの隣へ移動し、それに気がついたセリエルも彼らの側へ赴く。

「ああ、この壁に書かれている文を解読してみたのだが・・・」

「“8人の異端者”・・・って書かれているのですか・・・?」

セリエルが興味深そうな表情かおで壁に描かれた文を眺める。

 “8人の異端者”って確か―――――――――――

ナチにとってその言葉は、どこかで聞いたことのあるモノであった。それが何かとまでは思い出せなかったが・・・

「“8人の異端者、その巨大な力にて世界を破滅へと導かんとする”・・・」

「セリエルさん・・・?」

気がつくと、セリエルは虚ろな表情で謎の言葉を発していた。

「セリエル少尉・・・貴女もなかなかの知識人のようですな・・・」

ジェンドは学者しか知りえない一文を知っていたセリエルに感心する。

「・・・何か・・・?」

彼の台詞の直後、いつもの表情かおに戻ったセリエルは、何事もなかったような雰囲気でジェンドを見た。

 この別人のような表情かおをして謎の言葉を発する・・・。これも彼女が持つ“能力”なのか・・・・?

このような状況を過去にも目にしたことがあったナチは、セリエルの能力に首をかしげる。

「・・・ナチ君?」

「あ・・・すみません!ジェンドさん!!」

ボンヤリしていた彼は、目の前でジェンド博士が声をかけてくれているのに気がついていなかった。

我に返ったナチは、あたふたした表情をする。それを見たセリエルは、後ろでクスッと笑っていたのだった。


「ジェンド博士!!こちらに来てもらえないでしょうか!?」

「ああ・・・今行く・・・!」

後ろの方から、違う学者の声が聞こえ、ジェンド博士はその呼び出しに応じる。

「・・・何か見つけたのですかね?」

「さぁ・・・。とりあえず、私達も博士についていきましょう!」

ナチとセリエルはその会話の後、ジェンド博士と一緒に、声の聴こえた方へ歩き出す。



いかがでしたか。

おそらく”説明的な文章が多い!!”と感じられるかと思いますが、この作品の世界観や人物については、やはりちゃんと説明を加えないとわかりづらいので、このように書いています。

なので、多少はご了承ください。


第1話の後書きで”この作品は同タイトルの”Left”とつながりがある”と書きましたが、今回は両作品の主人公であるアレンとセリエルの設定について。

物語がまだ序盤なので、あまりネタバレ的な事は書けませんが、まず言える事は、「一方が持っていないモノをもう一方が持っている」です。

例えば、アレンには過去の記憶がないのに対し、セリエルは自分がどのようにして産まれたのかも知っています。また、主人公を男と女にしたのも、そういった考えの下で決定しました。容姿も”銀髪で肩につくかつかないかくらいの長さ”は共通ですが、瞳の色や”世界の心”を意味する痣がある場所がアレンが左目下、セリエルは右目下といった具合です。


あまり長すぎるのもあれなので、今後は後書きにて物語やキャラ設定について随時書いていこうかと思っていますので、よろしくお願いいたします。

ご意見・ご感想もお待ちしてます!


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