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第14話 教授との会話の中で

「すごい・・・まるで、宮殿みたいだわ・・・!」

感激の余り、声が出ないような表情かおでラスリアは辺りを見回す。 

学術都市アテレステンに存在するコミューニ大学。都市の中で一番大規模と言われているだけあって、外から見ると本当に宮殿のような大きさだった。城壁を思わせるような門。学生達の話す声・・・・。校舎内でも、とても開放的な雰囲気を持つ。


「そういえば、イブール姐さんは現役の学生だっけか?」

何かを思い出したかのように尋ねてくるミュルザ。

「んー・・・1年ダブってはいるけれど、大学院に入っているから・・・現役って所ね」

「専攻は、考古学・・・・と言った所か?」

普段は他人ひとの会話を静かに聴く事の多いアレンが、めずらしく会話に入ってくる。

 大学院・・・・イブール(こいつ)からだったら、マトモな情報が得られるかもな――――

ただし、アレンは純粋に“イル”の事が知りたいだけであった。

「アレンだったらおそらく、図書館に行けばいろいろわかるかもしれないけど・・・その前に、私の用事を先に済ませてもいいかしら?」

「構わないが・・・なぜだ?」

「図書館はいつでも行けるし、閲覧だったら大学の人間じゃなくても可能だしね。ただ、私の用事の方は・・・教授が帰る前に行かないと、済ます事ができないから・・・・」

 本当は一刻も早く図書館で調べ物をしたいが・・・それなら、仕方ないか・・・・・

自分の用事を優先させたかったが、一歩留まる事にしたアレン。横からラスリアの視線を感じたが、あまり気にしていなかった。


「おや、ご苦労だったね。イブール君」

“イブールの用事”を済ませるために、アレン達は彼女の師であるロレリア・ハノバンド教授の研究室を訪れていた。

「お待たせしました、ロレリア教授。・・・これが、今回の遺跡探索に関するレポートです」

そう言ってイブールは、荷物の中から取り出した封筒を教授に渡す。

ロレリア教授は、机の側に置いてあった眼鏡をつけた後、イブールのレポートに目を通す。そして、紙をパラパラとめくった後に口を開いた。

「これは、なかなか見ごたえがありそうじゃ・・・。後でじっくり読ませてもらうよ・・・」

「ありがとうございます、教授。よろしくお願い致します」

そう言って頭をペコリと下げるイブールを見た教授は、せつなそうな表情で呟く。

「・・・あんな事さえなければ、君はわたしの助手になっていたのかもしれないのにな・・・」

「??」

その台詞を聞いたアレンとラスリアはきょとんとした顔で教授を見る。

周囲に沈黙が走り、気まずい雰囲気に変わる。

 “あんな事“――――――――――

この時、アレンは以前も思い浮かんだ“イブールの暗い過去”という言葉を思い出す。それについて教授は何かを知っているのかと疑い始めた矢先・・・・・


「ロレリア教授!!」

イブールの大きな声が響く。

突然声を張り上げたので、その場にいた全員が驚いていた。

「一つ、お伺いしたいのですが・・・・」

「ん・・・ああ。何かね?」

呆気に撮られていた教授は、すぐに我に返ってイブールの方を見る。

「教授は・・・古代種“キロ”について・・・どう思われますか?」

この時にアレンが気がついていなかったが、“キロ”の言葉にラスリアがわずかに反応する。

「キロか・・・・」

そう呟きながら考え事をする教授。

 なぜ今、古代種の話を・・・・?

アレンが不思議に思っていると、考え事をしていた教授の口が開く。

「“素晴らしい”・・・の一言に尽きるかな。考古学者のほかでも知られているように、星と対話できる能力や、魔術を作り出したその知識・・・・。古代大戦さえなければ、彼らは今の世界をより良いモノに作り上げていただろうに・・・・」

「古代大戦・・・・?」

その場にいた全員が、教授の話に釘付けになる。

「古代大戦とは、このレジェンディラスの文明が滅びる原因となった戦いの事。多くの学者がそれについて調べ、いろんな説が飛び交っておる・・・」

「・・・私が大学に入学した頃にも、学内の討論大会で討議されていましたね・・・」

イブールが腕を組みながら呟く。

「あの時は、多くの説で学者達は激しい討論であった。文明が滅びたのは“自然災害が原因”であったり、“魔物との戦い”が原因であったり・・・・」

「教授さんよ・・・。あんたはどう思っていたんだ・・・・?」

“魔物との戦い”に反応したのか、ミュルザが会話に入ってくる。

 永い時を生きるミュルザ(こいつ)の事だ・・・。何か思うところでもあるのか?

彼の台詞を聞いた時、アレンは内心でそう思っていた。

「・・・討論大会では少数派な意見だったが、私は古代大戦についてはこう思う。“8人の異端者”と、彼らを生み出してしまった人間の弱さが原因だと・・・」

「“8人の異端者”・・・」

それを聴いたアレンの心臓が強く脈打ち始める。

「それは・・・どんな人達なんですか・・・?」

真剣な表情で話を聴いていたラスリアが、教授に問いかける。

「わからん。彼らについてはどの文献にも載っていないし、何かを発見した学者はいないからな・・・。ただ一つわかる事は、“8人の異端者”はそれぞれ違う民族の出身だったという事だけじゃ・・・」

「そう・・・ですか・・・・」

残念そうな表情かおをするラスリア。

「これ以上、重い話をしていても仕方ない」と考えたのか、ロレリア教授が立ち上がろうとすると・・・

「ぐっ・・・・・!!!」

アレンが頭を抱えて苦しみ始める。

「アレン・・・・!!?」

「おい・・・君!!!」

全身に汗をかき苦しむアレンを見たラスリア・イブール・ロレリア教授が彼の元に来る。

その後ろでは、深刻な表情で彼らを見つめるミュルザ。

 頭が・・・熱い・・・・・・!!!

「ガァァァッ・・・・!!!!!!」

ドサッ・・・

うめくような叫び声を上げたアレンはその直後、地面に倒れて気を失ってしまう。

アレンは遠のいてくる意識の中で、また一つの“ビジョン”を見ていた――――――


          ※


 アレン・・・・大丈夫かな?

自分たちがロレリア教授と会話している途中、苦しみだしたかと思うと意識を失ってしまったアレン。側で眠りについているアレンを見ながら、ラスリアは考える。

 あれからイブールはロレリア教授と話がしたいというのもあって、大学内にある学生食堂へ食事をしに行った。ミュルザも「目の届く範囲にいる」と言って出て行ってしまった。

 教授から留守番を頼まれて引き受けたけど・・・もしかしたら、気を使ってくれたのかな―――――

ロレリア教授の研究室でアレンと一緒に残ったラスリアは、辺りを見回しながら思う。

「やっぱり、私は・・・」

思っていた事を何となく呟いたラスリア。

「私は・・・古代種“キロ”なのかも・・・」

小さな声で呟く。

室内は静かで、廊下から生徒の声すらも聞こえない状況だった。

 そう考えれば、自分が生まれつき持つ能力にも説明がつく。もちろん、今までも「そうではないか?」とは考えていたものの、今回みたいに他人の見解がなかったから絶対とは思えなかった。しかし、ロレリア教授との会話で、自分が古代種の末裔である事を改めて認識する事になる。


「う・・・・・」

気がつくと、アレンがゆっくりと瞼を開いていた。

「アレン・・・大丈夫?」

意識の戻った彼を見て、ラスリアは優しく声をかける。

「ああ・・・。それより、一体何が・・・?」

「あ・・・あのね・・・」

目が覚めたばかりで眠そうな表情をするアレンを見て、ラスリアは頬を少し赤らめる。

その後、アレンが倒れる直前の出来事を彼に話した。

「あの時はいっぱいいっぱいだったが・・・そんな事になっていたとは・・・・」

少し落ち着いてきたのか、上半身だけ起こしてアレンは呟く。

「ここだけの話だが・・・」

「ん・・・?」

アレンが意識を取り戻したので、ミュルザ辺りでも呼びに行こうかと考えた矢先、彼が口を開く。

「俺は・・・あの教授が言っていた“8人の異端者”・・・の説が一番有力なのではと思っている・・・・」

「・・・・何か根拠でもあるの?」

きょとんとしたラスリアは首をかしげながら彼を見る。

「・・・いや。単なる直感と言った所か・・・」

「プッ」

その台詞を聞いた途端、ラスリアが思わず笑う。

「・・・・今、嗤ったな・・・・!!?」

笑われた事を不快に感じたアレンは、物凄い形相でラスリアを睨む。

それに対してラスリアは、笑いを必死でこらえながら口を開く。

「いや・・・だって、そんな真顔で「直感だ」なんて言うから・・・・」

「悪いか」

「ううん・・・。ただ、貴方は“冷静に現実を見る人”ってイメージが強かったから・・・・」

それを聞いたアレンは、不満そうな表情かおで首をかしげていた。

普段あまり見せないアレンの態度に、ラスリアは新鮮さを感じていたのだった。


「キャァァァァァァァァッ!!!!!」

扉の向こうで、物凄い悲鳴が聞こえる。

「えっ・・・・・!!?」

何が起きたのかと、ラスリアは研究室の扉を開ける。

すると、廊下では生徒や教師がバタバタとしていた。

「アレン・・・私、何が起きたのか見てくるわ・・・・!!」

「あ、ああ・・・・」

研究室にアレンを一人残したラスリアは、悲鳴の聞こえた方へと走り出す。

向かった先では、何か恐ろしいモノを見たような表情で逃げ回る学生たち。

「何があったんですか・・・!!?」

ちょうどすれ違った男子生徒に、ラスリアは何が起きたのかを尋ねる。

「だ・・・校舎内に・・・突然、魔物が現れたんだ・・・・!!!」

怯えた表情で応えた生徒は、ラスリアを振り切って走り去ってしまう。

 一体なぜ、大学内に魔物が――――――――!!?

突然の出来事に、少し混乱してくる。

「あれは・・・・・!!?」

向かった先にある中庭には、校舎の天井を破りそうなくらい巨大で、右手にこん棒を持つ“トロル”がいたのであった――――――――


いかがでしたか。

”古代大戦”について補足ですが、この”レジェンディラス”は大戦によって一度文明が滅び、また文明が発達し始めたという次第です。

なので、この戦いが起きるまでは2つの世界は1つだったという設定になっています。ただ、アレン編に出てくる人々は、誰もこの設定を知らないという事にしています。

それと、”8人の異端者”についてはセリエル編を読んで戴ければおわかり戴けると思いますので、お時間ある時にでもどうぞ☆


コミューニ大学内に突然現れたトロル。

平和な場所に、なぜ魔物が・・・・・!!?


ご意見・ご感想、それと評価の方もお待ちしています(^^♪

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