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第13話 アテレステンに到着して

今回は、イブールの視点からスタートです

 古代種族「キロ」――――――――彼らは星と対話する能力と、高い知識を持つ一族。星から星へ旅を続け、生活を続ける。その能力から多くの星を切り開き、生き物が住める世界へと変化させる事を可能にした。しかし、今でいう“人間”が増え始めた時期からその数が減り始め、“8人の異端者”なる者が現れて起こった世界大戦によって、絶滅寸前に追い込まれる。レジェンディラスでの歴史において、彼らは絶滅したと思われていたが―――――


「“星の意思”と関係があるからだ」

自分の連れであるミュルザが言っていた言葉の意味を、イブールは考えていた。

彼女と共に旅をするミュルザは、一見は口数の多い軽薄な雰囲気の男だが、その正体は強大な力を持つ悪魔。オーブル遺跡で銀髪の青年アレンと、黒髪の少女ラスリアに出会った2人。しかし、不死者アンデッドとの戦いで、イブールが「命令」してしまったため、彼らにミュルザの悪魔としての力を見せてしまった。

その後、ミュルザ(悪魔)は2人の記憶を消そうと試みたが、消せなかった。イブールが思い出しているのは、その直後の台詞だった。

 悪魔あいつの力で記憶の消せない人間がいるなんて、思いもしなかったな・・・。でも、あのアレンって子はともかく、ラスリアは普通の女の子に見えるんだけど・・・何者なのかしら・・・・?

不思議そうな表情でイブールは考え事をする。

「俺様だって完璧ではないんだぜ?ご主人様よ・・・!」

ミュルザが彼女の耳元で囁いた。

 人間の心を読めるミュルザ(こいつ)の前では、あまり考え事できないな・・・

イブールはフーッとため息をつく。

 ラプンツェル山脈を降りたアレン・ラスリア・イブール・ミュルザの4人は、定期的に出ている馬車に乗って学術都市アテレステンを目指していた。“学術都市”と言われる事もあり、馬車の乗客には学者や宗教家の風貌をした者達が多い。


「ねぇ、イブール・・・」

ふと顔を上げると、ラスリアがイブールに声をかけてきた。

「なぁに?ラスリア・・・」

彼女はラスリアの顔を真正面から見る。

 黒髪と黒い瞳―――――東方にあるシモクニ人に似た顔立ちだけれど、言葉のなまりからして、シモクニ人とは思えないわね・・・・

「・・・イブール?」

「あ・・・ごめんなさい!・・・何だったっけ?」

ラスリアの言葉で我に返ったイブールは、再び話を聞く体勢になる。

「えっと、大したことではないのだけれど・・・・」

「?」

イブールは笑顔で首をかしげると、ラスリアは自分の首筋を押さえながら口を開く。

「あなたの首に巻いているスカーフ(それ)・・・・。暑くないの・・・?」

「・・・!!!」

その直後、イブールの表情が凍りつく。

もちろん、こんな暑そうな状況でスカーフをはずさないのにはちゃんとした理由わけがある。それは、決して知られたくない「モノ」がスカーフの下に隠れているからだ。

 ・・・一緒に旅をする事になったとはいえ、まだこの子達には―――――――

この時、イブールの頭の中には今から6年前―――――――彼女が16歳の時に起きた惨劇が浮かんでいた。

飛び散る血・・・穢された肉体・・・・そして、現れる悪魔・・・。その出来事は、彼女にとって絶対に思い出したくない過去。ましてや、出会って間もないアレンやラスリアに話すことなどできるはずがない。

 自分の過去に関わりがあって首にスカーフを巻くイブール。それを知られたくなかった彼女は

「・・・首元にこのスカーフを巻いていないと、落ち着かないのよ!」

普段の笑顔に戻って答える。

その表情を見た時、最初は驚いていたラスリアも、ホッとしたのか穏やかな表情に変わったのだった。


「・・・おい。そろそろ、アテレステンに馬車が着くぞ」

イブールとラスリアの横からアレンがボソッと呟く。

「あら、本当?・・・じゃあ、降りる準備をしなきゃね・・・!」

 アレン・・・ちょうど良いタイミングで、助かったわ・・・・

これ以上、スカーフの話をしたくなかったので、この時出たアレンの台詞にイブールは救われたような感覚を持った。

 アテレステンに到着した彼らは、町の入り口で白い装束を渡される。

「なんだこりゃ・・・?」

「今日はライトリア教の祝典・・・。故に、この街を通る全ての人間が、象徴的な色である白い装束を身につけなければならないのだ」

出入り口にいた役人はそう言っていた。

「・・・ったく、なんで俺まで・・・」

渋々とミュルザは白装束を身につける。

確かに、悪魔であるミュルザにとって宗教的なモノは堅苦しい以外の何者でもない。しかし、目立たないためにも、本人には我慢してもらう他なかったのだ。

「白装束があって良かった・・・・」

「え・・・?」

ラスリアが小さな声で呟いていた台詞を、イブールはたまたま聞いていた。

チラッと見ると、ラスリアの表情かおがそわそわしていて、周囲を気にしているように見える。そんな彼女達の様子を横目で見ていたミュルザは、ふと変わった人間の気配を感じていた。


          ※


 学術都市アテレステンに到着してから、アレンは周囲の空気が微妙なかんじになっているのを感じ取っていた。

 ラスリアはなぜかソワソワし始めているし、イブールとミュルザ(紫野郎)も何か深刻そうな表情かおをしている・・・・・。一体、どうなっているのだか―――――――

アレンはフーッとため息をつく。


「ところで・・・この都市で学者連中が集まる場所はどこだ・・・?」

他の人間がどんな事を考えていようと、俺はただひたすら“イル”を探し出さなくてはならない・・・。探さなくてならない理由が自分でも理解できていないが、“本能的に”求めている・・・というべきなのだろうか・・・・。

ラスリア達を見回しながら、アレンは考える。

「そう・・・ね。じゃあ、私の知り合いがいるコミューニ大学にでも行ってみましょうか・・・!」

「コミューニ大学・・・?」

振り向くと、ラスリアが首をかしげながら、何の事かという表情かおをしている。

「コミューニ大学は、この学術都市アテレステンで一番大きな大学なの。施設や学科の豊富さはもちろん、あの大学の図書館に眠る文献の数も半端じゃないの・・・」

「・・・なるほど。そこへ行けば、何かわかる・・・という事か?」

「・・・まぁ、一応ね!」

白装束を身に着けたアレン達は、町の表通りを通り抜けながら歩く。行き行く人全てが白装束を身にまとっているため、アレンにとっては少し不快に感じる光景だった。


「きゃぁっ!」

ドンという音と共に、ラスリアが誰かとぶつかった。

「痛たたたた…」

ぶつかった拍子に地面に座り込んでしまったラスリアは、お尻を押さえる。

「君!・・・大丈夫かい?」

彼女に手を差し伸べたのは、白い甲冑を身にまとう一人の騎士だった。

「あ、はい。大丈夫です・・・」

この騎士の手を取って立ち上がった時、兜から見える金色の瞳にラスリアはドキッとする。

「よかった・・・・。すまなかったね。わたしがちゃんと前を見ていなかったから・・・」

「いえ!私こそ・・・周りばっかり見ていたから気がつかなくて・・・」

顔が赤い状態で会話をするラスリアを見て、アレンはなぜか複雑な気分になっていた。

「それでは、お嬢さん。わたしは職務がございますので、これにて失礼します!」

しっかりと敬礼をした後、甲冑を身にまとった騎士はアレン達が来た方向へ歩いて行った。

「彼、きっと仕事のできる男・・・ってかんじがするわね!」

「そうかぁ?なんだか、いい所のお坊ちゃんってかんじにも見えたが・・・」

アレンの横でイブールとミュルザが会話をする。

「!!!!!」

何かを感じ取ったアレンは、その方向をギッと睨みつける。

「ニャァーー…」

振り向くと、アレンの目の前にいたのは1匹の黒猫だった。

 ・・・誰かの視線を感じたような気がしたが――――――――――――

去って行く猫を見つめながら、“誰かに見られていたような感覚”を覚えるアレン。

「アレン・・・どうしたの?」

ラスリアの声が聴こえたと同時に、アレンは我に返る。

「・・・何もない。俺たちも行こう」

進行方向に向きなおしたアレンは、イブール達の下へ戻って行く。

 しかし、この通りにある建物の奥では・・・

「シャム。・・・ご苦労だった」

先ほど、アレンが見かけた黒猫を撫でる。

そして、不適な笑みを浮かべながらこの男は呟く。

「・・・確かめる価値がありそうだな・・・」


いかがでしたか。

お気づきの方もいるかと思いますが、伝承のような口調で始まる所があったかと思います。

これには理由があって、サブタイトルには表記してませんんが、このタイプの文面は章の始めという意味で入れています。

特に、アレン編⇔セリエル編と切り替わった時や今回のとかはよく表れているかと思われます。

それ以外だと会話からであったり、普通に物語が始まっているように書いています。

この”ガジェイレル”作品は、所々でこういった説明を入れたほうが良いと感じたので、今後も同じ手法で書いていきます。


さて、今回の章では、ヒロインであるラスリアの微妙な立場が良くわかる章となっています。

アレン達を後ろで見張っていた男の正体は・・・・!?

次回をお楽しみに☆


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