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第11話 友の死を目の当たりにして

物語中、”一週間後”などの時系列を表す単語が出てきます。

ごっちゃにならないために書いておきますが、このセリエル編とアレン編は、前者の方が後者よりも時間の流れが早いという設定になっています。

 ギルガメシュ連邦の軍司令部付近に隣接する憲兵司令部。街中で友人の変わり果てた姿を見たセリエルは、第一発見者の女性と共に憲兵司令部を訪れていた。


「・・・で、あの女性の悲鳴を聞いて、貴女が駆けつけた・・・という事か?」

「はい・・・」

第一発見者だった女性は、精神的に参っていて事情聴取を受けれる状態ではなかった。

そのため、セリエルが彼女の代わりに発見当時の話を憲兵にしていたのであった。無論、現段階は被害者と近しい関係であった事も関係している。

「被害者の女性が亡くなる前、何かおかしな事はありましたか?」

「おかしな事・・・」

この時、セリエルの頭の中には軍の食堂での出来事が浮かんでいた。

 でも、あの虚ろな表情と事件については、特に関連性もないだろうし・・・

そう考えると、特に話す程の事でもなかった。

 事情聴取が終了後、セリエルは寮に帰った。2人部屋である彼女の部屋は、妙に広く見えた。いつもは「少しうるさい」と思っていたルミナの存在もない・・・・。軍人用の寮のため、新しい人は早い内に入寮するだろうが、セリエルの心の中は何かポッカリと穴が空いた間隔に陥っていた。

 私に“心”なんてないはずなのに・・・この胸の苦しさは一体・・・?

セリエルは自分の胸に右手を当てながら、その場に立ち尽くしていた――――――――


 事件から1週間ほど過ぎ、一連の連続猟奇殺人事件の記事が新聞に飾られることはなくなった。犯人は捕まっていないが、恐怖に怯えている人々の心は、少しは和らいできたのかもしれない。しかし、まだ終わりではなかった・・・。


「セリエルさん。あれから・・・新しい同室の方、入りましたか?」

「いえ・・・流石にまだ一週間しか経っていないし、すぐには入ってこないみたいね」

お昼休憩中、セリエルとナチはいつものように軍の食堂で昼食を食べながら会話をする。

「それより・・・事件の方は、どう?進展はあったの・・・?」

「いえ・・・友人曰く、犯人が全然特定できなくて、参っているらしいです」

「・・・そう・・・」

「すみません・・・」

「いや、貴方が謝る事でもないわ・・・!」

ナチが申し訳なさそうな表情かおをしていたので、セリエルは少し焦った。

2人の間に沈黙が走り、少し気まずい空気が流れる。

「近いうちに・・・」

「え・・・?」

「近い内に、例の憲兵司令部にいる友人に会いに行く予定があったんですよ。・・・せっかくなので、今日あたり行ってみますか?」

「ナチ・・・あなた・・・」

少し嬉しそうな表情でセリエルは呟き、それを見たナチは顔を少し赤らめながら口を開く。

「・・・普段、他人に興味を持たない貴女が、めずらしく凹んでいるようにも見えたんで・・・俺で良ければ、力になりたいな・・・と・・・」

ナチの顔を見た時に、少し緊張しているのをセリエルは気がついていた。

「ふふ・・・じゃあ、お言葉に甘えようかしら?」

セリエルはにんまりとした表情かおでナチを見上げた。


「おー、ナチ君ではないですか!久しぶり・・・!」

「よっ!」

ナチと一緒に憲兵司令部を訪れたセリエル。

彼は、自分の同期であるクウラと会話をしていた。このメガネをかけ、紺色の髪色をした男から、何か不思議な香りが漂っているのに、セリエルは気がつく。

「はじめまして。彼の同僚である、セリエル・ヒエログリフ少尉です。・・・失礼ですが、もしかして香水とかお好きですか・・・?」

“男性が香水をつける”というのが珍しく感じたのか、セリエルは自己紹介の後に尋ねる。

「ええ・・・まぁ・・・」

「・・・でも、以前は香水なんてつけていなかったよな?」

同期の意外な趣味に、ナチは首をかしげながら尋ねる。

「まぁ、最近できた趣味といった所ですかね・・・。まあ、それはさておき・・・」

眼鏡のレンズ越しに見えるクウラの瞳が、真剣そうな雰囲気を出し始めた。

「・・・僕もまだ下っ端なので、あまり具体的な事は知りませんが・・・」

クウラは周囲には聞こえないくらいの声で、事件の事について話しだす。

「上司が仕事中に呟いてたのをたまたま聞いたのですが・・・どうやら今回の猟奇殺人事件、“悪魔信仰”が関わっているんじゃないか・・・って」

「“悪魔信仰”・・・?」

「人間が持つ負の想念から生まれた生物・・・。天使と敵対する存在であり、強い魔力を持つ・・・」

悪魔信仰について語るセリエルの表情は、いつの日かのように虚ろになっていた。

ナチとクウラの視線がセリエルに集中する中、彼女は我に返る。

 ・・・今、なんで私はこんな事を言ったの・・・!!?

今までと異なるのは、セリエルの意思と異なる意思が働いていた事に、彼女自身が気がついていた点だった。


 その後、憲兵司令部を後にしたセリエルとナチは帰宅の炉についていた。

「犯人・・・捕まるといいですね・・・」

「・・・ええ・・・」

2人は、クウラが話していた“悪魔信仰”の事を考えていた。

「悪魔・・・か。本当に、そんなのがいるんですかね・・・?」

「・・・普通だったら、ありえない話よね・・・。でも、私みたいな存在が実在するんだし、本当にいるのかもしれないわ・・・」

「・・・・殺された女性達は、相当無念だったんでしょうね・・・」

「ナチ・・・?」

しぼんでいるような声が聞こえた直後、セリエルはナチの方を見る。

「被害者の女性のほとんどは、20代の人で・・・人生これからって時に死んでしまったのですから・・・。捕まえられるなら、自分の手で犯人を捕まえたいけど・・・“管轄外”だから、許可は下りないんだろうなぁ・・・」

そう呟くナチの瞳は少しだけ潤んでいた。

「そうね・・・」

セリエルがポツンと呟いた後、2人は黙ったまま歩き続ける。

彼らの目の前には、血のように赤い夕日に染まった街並みが広がっていた・・・。


「それじゃあ、ナチ。また明日・・・司令部でね」

「はい」

別れ道までたどり着いたセリエルとナチは、双方が帰るべき道を歩き出そうとしたその時だった。

「え・・・・・!!?」

セリエルの全身に、鳥肌が立つ。

 これは・・・この感覚は・・・・!!

この時、セリエルが感じていた悪寒は、殺されたルミナを発見する直前に感じたものとほぼ同じものだった。

「セリエルさん・・・どうかしましたか?」

不安そうな表情かおで彼女を見つめるナチ。

その直後、セリエルはもと来た道の方へと走り出す。

「セリエルさん!!!?」

「ナチ・・・ちょっと、司令部に忘れ物をしたので取りに行ってくるわ!!だから、先に帰ってて・・・!!!」

ナチに向かってそう叫んだセリエルは、悪寒を感じられる方角へと走っていく。

 ゼーゼーと息切れをしながら、辺りを見回すセリエル。日が沈みかけていた街中はとても静かであった。そして、彼女がいる場所は普段、この時間帯になると人があまり見られないはずであったが・・・

「あれは・・・」

小さな声でポツンと呟くセリエル。

その視線の先には、憲兵の黒い制服を身にまとった青年―――――クウラの姿があった。

 なぜ、クウラ(彼)がこんな場所に・・・?

不審に思ったセリエルは、彼の後を尾行てみる事にする。その後、クウラを尾行していく内に、どんどん人気のなさそうな細道へと入り込んでいく。

そして、目的の場所に到着したのか、クウラはとある建物の中へと入っていく。

 ・・・どうして、空き家の中に入ったのかしら・・・?でも、もしかしたら・・・

ここで引き返すべきか迷ったセリエルだったが、この機会はもう2度と訪れないかもしれない・・・そう考えた彼女は、クウラの後を続くようにして中へ入っていく。


カツカツカツ・・・

クウラは革靴による足音をたてる一方、セリエルは足音をたてないよう慎重に進んでいた。

そうして、空き家にあった地下への階段を降りると、廊下のような場所に出る。

 地下室・・・にしては、大きな造りのような・・・?

セリエルが辺りを見回しながら考え事をしていると、クウラは大きな鉄の扉に立ち、何かのボタンを押し始めた。その数秒後、鉄の扉はが少しだけ開き、彼は中へと入っていく。

クウラが扉の中に消えてから1・2分ほど経過した後、周りに誰かいないか警戒しながら、扉の前まで進むセリエル。

 数字を入力する機械・・・。そういえば、軍でも機密文書を入れる金庫とかは、こういう機械が設置されていたわね――――――――

視力の良いセリエルは、クウラがどの番号のボタンを押していたかしっかり見ていたため、わずか数秒で扉の開閉に成功する。

中に入ると、周囲には、物を置くような棚がいくつかあるだけだった。

 あら・・・?

部屋の奥の方に、黒いカーテンが見える。

この場所は当然地下なので、太陽の光を遮るカーテンは必要ないはず・・・

不思議に思ったセリエルは、そのカーテンにそっと手を触れる。そして、中に何かあるかと顔を覗かせると・・・

「・・・・!!!!」

その瞬間、あまりに異様な光景に、セリエルの表情が固まる。

 黒いカーテンの奥に見えたモノは・・・黒装束を身にまとい、顔面を仮面で覆った人々が、何かに祈りを捧げるような体勢で座り込んでいた。その数は、数人とかではなく、20人近くはいるような状態だった。

 まさか、この場所・・・。

何とか我に返ったセリエルは、彼らが何に祈りを捧げているのかを見極めようと、周囲を見渡す。すると、彼らの向く方向にいたのは・・・背中に漆黒の翼を生やし、黒髪・銀色の瞳を持つ男だった。その男は、玉座のように立派な椅子に座って信者達を見下ろしている。

 あれが、「悪魔」・・・。私が感じた悪寒の正体は、あれだったという事ね・・・

黒いカーテンから一歩引いたセリエルは、鳥肌が立っている自分の右腕を見つめていた。


ガッ・・・!!

その直後、セリエルは背後から何者かによって頭を殴られる。

「うっ・・・!!」

急に痛みを感じたセリエルは、そのまま地面に倒れる。


「軍人・・・しかも、女に尾行られていたとはな・・・」

「おそらく、クウラのせいですね。・・・しかし、どうするんですか?この女・・・」

「そうだなぁ・・・。どうせ、処分する訳だし・・・」

セリエルの頭上では、見知らぬ男たちの声が聞こえてきていた。

そうして、少しずつ意識が遠のいていくのであった――――――――


いかがでしたか?

悪魔について考えていたため、背後に誰かいる事に気がつかなかったセリエル。

信者の手によって気絶させられた彼女は、今後どうなってしまうのか!?

次回をお楽しみに☆


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