第1話 祭りの準備
この度は、『ガジェイレル-Both-』をご覧戴き、誠にありがとうございます。
作者の皆麻兎と申します。
この作品は、現在このサイトで掲載中&完結済みである『ガジェイレル-Left-』と『ガジェイレル-Right-』の総集編みたいな作品です。
そのため、本文はこれまでのと大して変わりませんが・・・
もともと、2つで1つの作品だったため、こうしてまとめてみる事にしました。
ただ、諸事情につき、ある程度の所で終了な形になりますので、ご了承ください。
ただ、元々連載していた作品が「つながるとこんなかんじになる」という趣旨で書いたのが、この『ガジェイレル-Both-』。
物語の舞台が2つの世界のため、多少ゴッチャになるかもしれませんが、時系列に沿ってはいるので、その辺りもよろしくお願い致します。
また、補足なのですが・・・
この物語は登場人物の視点が度々変わる作品となっています。
視点が変わる際は文の前後に"※"がついていますので、その辺も確認しながらご一読願います。
それでは、お楽しみください。
山間にある小さな村スト―――人々は畑を耕し作物を育てながら、その日その日を生活する。そんなのどかな所に、この物語の主人公であるアレン・カグジェリカは訪れていた。
彼が持つライトグリーンの瞳は、辺りを見回す。
「おい・・・。この辺りに、鍛冶屋はないか?」
アレンはその場にいた村民に尋ねる。
「おや、旅人かい!めずらしいねぇ・・・」
「・・・・・」
60は超えていそうな老婆ののんびりとした話し方に、少しイラッとした表情で睨む。
「・・・おお、すまんね。えっと・・・あの森の手前じゃよ・・・」
「・・・わかった。行ってみる」
アレンはそう言った後にこの老婆と別れ、手持ちの剣を磨いてもらうために、鍛冶屋へ急ぐ。
鍛冶屋へ向かう際、彼の視界に入ってきたのは、何かの準備をする村人達であった。
「夜に向けて、しっかりと準備しなきゃね!」
「なんてったって、数百年に1度のイベントなんだから・・・」
村人達の会話が聴こえる。
アレンは彼らに対して見向きもしなかったが、耳を傾けながら鍛冶屋へ向かう・・・。
※
「行ってくるね!シシュ!!」
自分の姉にそう告げて、黒髪の少女は家を出る。
この物語のヒロインであるラスリア・ユンドラフは、義理の姉と共に、この山間にある小さな村ストに暮らしていた。
「こんにちは!アミおばさん!!」
「いつもすまないねぇー・・・」
「いえいえ!こちらこそ、毎度ご贔屓にしてもらって、すごく感謝してますよ!」
ラスリアはこの40代くらいの女性に、1つの紙袋を渡す。
中身は彼女が姉と共に経営している果物屋の商品である。
「では・・・・また、夜に!」
そう告げて女性と別れたラスリアは、次の行き先へと歩き始める。
ラスリアと彼女の姉は2人とも孤児で、同じ施設にて育った。施設を出た後は世界を旅した事もあったが、生活の事を考え、この村に定住することを決意する。しかし、このストはカルリエという国の1領土で、その北端に位置する人口の少ない村ため、生活もあまりゆとりがある訳ではなかった。しかし、それでも本人は満足しているかもしれないが・・・。
「えっと、最初はアミおばさんの家で、次は・・・」
自宅で育てた果物を村の家々に届けるのが、彼女の仕事だ。
出かける前に書いたメモを読みながら、次の行き先を探す。
「次は・・・鍛冶屋のグロスイおじさんの家ね!」
※
「邪魔するぞ」
鍛冶屋の前に到着したアレンは、戸をノックした後に中へ入る。
「ん・・・?ああ・・・客か・・・」
アレンよりも低い声で呟く鍛冶屋の男は、面倒くさそうな表情をしていた。
「剣を少し・・・磨いてくれないか?」
「・・・へいへい」
鍛冶屋の旦那であるグロスイという男は、アレンから剣を受け取る
「出来るだけ早く終わらせてほしいんだが・・・大丈夫か?」
「早めにねぇ・・・。でも、今日は祭りの日だから、最低でも明日以降になるぜ?」
「・・・祭り・・・?」
不思議そうな表情をしながら、彼は鍛冶屋の旦那を見る。
「今夜は確か・・・“星降りの夜”・・・だったかな?数百年に1度だけ、空に浮かぶ星の光が地上に落ちてくるってのが今夜らしくてな。これは星命学を主とする、ライトリア教の教えの一部で・・・」
「そんな事はどうでもいいから、聞かれた事だけに答えろ」
鍛冶屋の話に飽きたのか、ため息をつきながらアレンは呟く。
「・・・ったく、いちいち注文の多い旅人だなぁ・・・」
ブツクサ呟きながら、鍛冶屋の旦那は剣を磨き始めた。
コンコンコン
アレン達2人の目の前にある戸をノックする音が聞こえる。
「誰だ?」
「あ・・・。グロスイさん!私です・・・ラスリアです!」
鍛冶屋の旦那が問うと、戸の先から女性の声が聞こえてくる。
話の途中で割り込まれるのを嫌うアレンは、寡黙な美青年とは思えないようなしかめっ面をする。
「おお、ラスリアちゃんかい。入っていいぞ・・・!」
戸に向かって声を張り上げていたグロスイの口調が、明らかに自分と会話していた時と異なっていた。
それに気がついたアレンは、余計にイラッとする。
「こんにちは、グロスイおじさん!・・・約束の果物、届けに来ました♪」
戸から中に入ってきたこの黒髪の少女・・・ラスリアは笑顔で鍛冶屋の旦那の方を向く。
「・・・・っ!!?」
彼女を見た途端、一瞬だけアレンの頭が痛む。
――――――なんなんだ、この女は・・・・!!?
彼は異質なモノを見るような表情で、ラスリアを見る。
しかし、これがアレンとラスリアの運命的な出会いだという事を、この時は2人とも気がついていないのであった。
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