治癒
掲載日:2026/06/08
死を纏った聖女シモーヌは
ローマに滅ぼされたエトルリアを想っていた
滅ぼされた、消えたものへの哀悼
その感情はどのような書物に記録されるのだろうか
シモーヌが死んだ時、彼女は無名だったので
一人の女教師が奇怪な死に方をしたと報じられただけだった
現在の中で生きる私達には
一体、何が見えるのだろうか
メディアが見ているものだけが存在している世界の中で
不在の私達には一体、何が見えるのだろうか
私の老いた盲目の瞳
書物の文字がかすれてもう見えなくなっている
ふと、背後に視線を感じて
私は振り返った
そこには誰もいなかった
…その時、既に盲目は治っていた




