四枚目 朝サウナ
朝のサウナ「赫炎」。
まだ客はいない時間だ。
外気浴スペースで霧島が椅子に座っている。
「はぁ……」
完全に整っていた。
入口のドアが開く。
静かに一人の少女が入ってきた。
サウナハット。
綺麗なストレートヘア。
落ち着いた目。
この店の看板娘。
葵
18歳。
葵は店内をゆっくり見渡す。
温度計を見る。
水風呂を覗く。
「……16度」
小さく呟く。
「良い感じね」
霧島が目を開けた。
「悪い、朝イチで仕事があるんだ」
葵は軽く会釈する。
「ごゆっくりどうぞ」
それだけ言って奥へ向かった。
サウナ室のドアを開ける。
蒸気の中に
タオル一枚の男が立っている。
紅
「温度」
紅が聞く。
葵が温度計を見る。
「98度」
「もう少し上げる」
紅は頷いた。
「ロウリュ、いきます」
柄杓で水をすくう。
ジュワァァァァッ!!
蒸気が一気に広がる。
紅がタオルを振る。
バシィッ!!
熱波がサウナ室を叩いた。
外の霧島が呟く。
「朝から最高だ……」
その時だった。
入口のドアが乱暴に開く。
ガンッ!!
黒服の男が三人入ってきた。
霧島がため息をつく。
「……またか」
男の一人が言う。
「ここが赫炎だな」
「例の熱波師の店」
葵が前に出る。
落ち着いた声。
「営業時間は十時からです」
男が笑う。
「客じゃねぇよ」
ナイフが抜かれた。
霧島が立ち上がろうとする。
しかし。
葵が先に動いた。
カチッ。
壁のスイッチを押した。
ガコン。
サウナの
オートロウリュ装置が作動する。
ジュワァァァァァァッ!!
大量の蒸気が一気に噴き出した。
男たちが顔をしかめる。
「熱っ!?」
視界が真っ白になる。
その瞬間。
バシィィィッ!!
紅の熱波。
超高温の蒸気が男を叩く。
「ぐあっ!」
一人が倒れる。
霧島が立ち上がる。
「いいアシスト」
倒れた男がナイフを振り回す。
しかし。
ドン!!
霧島の拳が腹に入った。
もう一人が突っ込む。
バシィッ!!
紅のタオルが腕に絡む。
グイッ。
男が床に叩きつけられる。
最後の一人。
霧島が肩を回す。
「これくらいなら」
一歩踏み出す。
次の瞬間。
ガン!!
男は床に倒れていた。
沈黙。
葵が静かに言う。
「警察呼びますか」
紅は首を振る。
「もう逃げてる」
男たちは慌てて立ち上って
一目散に店を飛び出していた。
静けさが戻った。
霧島が椅子に座る。
「はぁ……」
「汗かいた」
葵が水風呂を確認する。
「今が入り時ですよ」
霧島が笑う。
葵が紅を見る。
「ロウリュしますか」
紅は頷いた。
「やる」
サウナ室のドアが開き紅が入っていく。
ジュワァァァァッ!!
蒸気が広がる。
霧島が言う。
「やっぱこの店」
「普通じゃないな」
葵は静かに答える。
「普通じゃないから」
「人が来るってもんですよ」
紅がタオルを振る。
バシィッ!!
サウナ「赫炎」の一日は
今日も
静かに
熱く始まる。
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