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三枚目 VIP訪問

その日。

サウナ「赫炎」は

完全貸し切りだった。

 

入口には黒い車列。

黒服の男たち。

イヤホン。

無線。

 

完全武装の警備。

 

客は一人だけ。

 

世界で最も影響力のある男。

 

アメリカ大統領

サウナスキー。

 

サウナ好きとしても世界的に有名な人物だ。

週に三回はサウナへ入る。

 

その彼が

極秘で訪れた場所。

 

それが

 

サウナ「赫炎」

 

「本当にここか?」

SPの一人が小声で言う。

別のSPが答えた。

「間違いない」

「日本一最高で」

「日本一危険なサウナらしい」

 

サウナ室のドアが開く。

 

そこにいたのは

 

タオル一枚の男。

 

くれない

 

「ロウリュ、いきます」

 

ジュワァァァァッ!!

 

蒸気が一気に広がる。

 

サウナスキーは満足そうに目を閉じた。

 

「素晴らしい……」

 

「これは本物のサウナだ」

 

紅のタオルが振り下ろされる。

 

バシィッ!!

 

熱波が走る。

 

サウナスキーが笑う。

 

「最高だ!」

 

SPたちは警戒を続けている。

 

しかし。

 

その中に

 

一人だけ違う男がいた。

 

額に汗。

 

震える手。

 

拳銃。

 

 

ロウリュの蒸気が濃くなる。

 

そして。

 

男が銃を抜いた。

 

ガチャッ。

 

SPが叫ぶ。

 

「サウナスキー大統領!!」

 

男は叫んだ。

 

「全員動くな!!」

 

銃口が

サウナスキーへ向く。

 

引き金が引かれた。

 

カチッ。

 

 

……撃てない。

 

男が驚く。

 

「なっ……?」

 

マガジンを見る。

 

弾がない。

 

 

背後から声がした。

 

「サウナは」

 

紅だった。

 

「武器持ち込み禁止だ」

 

男が振り向く。

 

「いつの間に……」

 

紅はタオルを肩にかけている。

 

「弾は預かった」

 

 

男は膝をついた。

 

拳銃を落とす。

 

 

「……もういい」

 

 

「撃てなかった」

 

 

「こうなった以上」

 

 

「生きる資格はないな」

 

 

サウナ室が静まり返る。

 

紅は男を見た。

 

しばらく沈黙。

 

 

そして言った。

 

 

「サウナ入れ」

 

 

男が顔を上げる。

 

「……は?」

 

 

「お前」

 

「整ってないだろ」

 

 

紅はサウナストーンへ水を落とした。

 

ジュワァァァァッ!!

 

蒸気が爆発する。

 

 

「ロウリュ、いきます」

 

 

バシィィィィッ!!

 

 

熱波がサウナ室を叩く。

 

 

男の呼吸が荒くなる。

 

汗が滝のように流れる。

 

 

数分後。

 

 

男は水風呂に飛び込んだ。

 

ザバァァァッ!!

 

 

そして。

 

外気浴。

 

 

夜風。

 

 

男は椅子に座り

 

空を見上げた。

 

 

しばらくして

 

ぽつりと呟く。

 

 

「……俺の子供が」

 

 

「難病なんだ」

 

 

「治療費が必要だった」

 

 

「だから」

 

 

「金を受け取った」

 

 

静かな沈黙。

 

 

男の目から涙が落ちた。

 

 

「俺は」

 

 

「父親失格だ」

 

 

紅は何も言わない。

 

ただタオルで風を送る。

 

 

バシッ。

 

 

優しい熱波。

 

 

男の目がゆっくり閉じる。

 

 

整った。

 

 

数分後。

 

男が立ち上がる。

 

表情が変わっていた。

 

 

「……生きる」

 

 

「子供のために」

 

 

「やり直す」



「大統領、申し訳なかった。」

 

サウナスキーが笑った。

 

 

「素晴らしい」

 

 

「やはり来て正解だった」

 

 

男が驚く。

 

 

大統領は紅を見る。

 

 

「私はね」

 

 

「最初から信じていた」

 

 

「君なら」

 

 

「彼を殺さず」

 

 

「改心させられると」

 

 

紅はタオルを肩にかける。

 

 

「サウナは」

 

 

「人を変える」

 

 

サウナスキーが頷く。

 

 

「その通りだ」

 

 

「人は」

 

 

「整うと人生も整う。」


こうしてまた一人、サウナーが生まれた。

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