ニ枚目「共闘」
夜のサウナ「赫炎」。
今日も湯気が静かに天井へ昇っている。
サウナ室の温度は
100℃
だが、この店の常連たちは誰も弱音を吐かない。
なぜなら——
この店の熱波師は
紅
サウナ界隈で日本一と名が知られている男だからだ。
「ロウリュ、いきます」
紅が柄杓で水をすくう。
ジュワァァァァッ!!
蒸気が一気に広がる。
タオルが振り下ろされる。
バシィッ!!
サウナ室に熱風が走った。
その中で、ぐったりと座っている男が一人いた。
黒髪。
細身。
どこか気の抜けた顔。
名前は
霧島
この店の古い常連であり俺を昔から知る人物だ。
「……あっつ」
霧島はぐでっと壁にもたれている。
紅が言う。
「まだ限界じゃないだろ」
「いや、もう死ぬ……」
「お前はそこからだ」
「いつもの頼むわ……」
客の一人が小声で言う。
「あの人、誰なんですか?」
別の客が答える。
「知らないのか」
「裏社会で活躍してて」
「この前も一人で組を潰した殺し屋だ」
霧島は弱い。
少なくとも
整うまでは。
「……そろそろか」
霧島が立ち上がる。
ふらふらと歩き
サウナ室を出た。
水風呂。
ザバァァァッ!!
冷水が弾ける。
霧島は深く息を吐いた。
「はぁぁぁ……」
そのまま外気浴スペースの椅子へ倒れ込む。
夜風が肌を撫でる。
数分後。
霧島の目がゆっくり開いた。
瞳の焦点が変わる。
整った。
その瞬間だった。
サウナの入口のドアが勢いよく開く。
ガンッ!!
黒い服の男たちが入ってきた。
全部で
七人。
先頭の男が霧島を見つける。
「いたぞ」
「霧島だ」
霧島は椅子に座ったまま言う。
「……うわ」
男が怒鳴る。
「なぁ、この傷一生消えねぇんだけど」
「整う前は、お前弱いんだろ?」
霧島は少し考えて言った。
「……あー」
「どこの組だっけ」
男の顔が真っ赤になる。
「殺せ!!」
男たちが一斉にナイフを抜いた。
その時。
バシンッ!!
熱風が背中を叩いた。
紅だった。
タオルを肩にかけて立っている。
「悪いが」
紅が言う。
「俺の客だ」
男が叫ぶ。
「ならお前も死ね!」
ナイフを振り上げる。
次の瞬間。
バシィッ!!
紅のタオルが腕に絡む。
グイッ。
男の体が回転する。
ドン!!
床に叩きつけられた。
残り六人。
霧島がゆっくり立ち上がる。
「紅」
「なんだ」
「整った」
紅は少し笑う。
「共闘か」
次の瞬間。
霧島が消えた。
ドン!!
一人の男が吹き飛ぶ。
ガン!!
二人目の顎に拳。
「なっ!?」
男たちが混乱する。
その背後から
バシィッ!!
紅の熱波。
高温の蒸気が視界を奪う。
「ぐあっ!」
霧島の蹴りが腹へ入る。
ドン!!
さらに
バシン!!
タオルが首に巻きつく。
紅が投げた。
ガン!!
気づけば
七人全員が床に倒れていた。
沈黙。
客の一人が呟く。
「……何なんだこの店」
霧島は椅子に戻って座った。
「はぁ」
「さっき整ったばっかなのに」
紅が言う。
「もう一回サウナ入るか?」
霧島は頷く。
「整い直す」
客たちは確信した。
このサウナは
日本一危ない日本一の整いスポットだ。
そして——
この店を利用する者、狙うものは
まだまだ増えていく。
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