一枚目 プロローグ
湯気がゆっくりと天井へ昇っていく。
午後八時。
サウナ「赫炎」は、今日も予約は埋まっていた。
普通のサウナじゃない。
ここには政治家、裏社会の人間、芸能人ー
危ない連中ほど集まる。
理由は二つ。
一つ。
この店の熱波は、日本一だと言われている。
そしてもう一つ。
この店の店主が——
最強の熱波師だからだ。
「ロウリュ、いきます」
低い声がサウナ室に響いた。
男は腰にタオル一枚。
鍛え抜かれた体。
無駄のない動き。
彼のネームは
紅
熱波師歴12年。
現在、サウナ店主。
迅は柄杓で水をすくう。
そしてサウナストーンへ落とした。
ジュワァァァァッ!!
蒸気が一気に広がる。
彼はタオルを振り上げた。
バシンッ!!
空気が裂ける。
「ぐおっ……!」
客の一人が声を漏らす。
その熱波はただの熱風ではない。
衝撃波に近い。
サウナ界隈ではこんな噂がある。
「あの熱波を耐えられる奴は、銃撃戦でも生き残る」
その時だった。
彼の耳が、わずかな音を拾う。
カチッ。
金属音。
サウナ室のドアが開いた。
彼は振り向かない。
しかし言った。
「……サウナは武器持ち込み禁止だ」
客たちがざわつく。
入ってきたのは黒いスーツの男が二人。
腰には拳銃。
客の一人が小声で言った。
「おい……」
「あれ、ヒットマンだぞ……」
男の一人が口を開く。
「紅ってのはお前か」
彼はロウリュを続ける。
ジュワァァァァッ。
蒸気がさらに濃くなる。
男が銃を向けた。
「お前を始末しろって言われてる」
サウナ室の温度は
100℃
汗が滝のように流れる。
彼はゆっくり振り返った。
「ここはサウナだ」
タオルを手に取る。
「騒ぐなら外でやれ」
男は笑った。
「その格好で何ができる」
次の瞬間。
紅が動いた。
バシィッ!!
タオルが銃に巻きつく。
「なっ!?」
一回転。
銃が床へ落ちる。
同時に——
ドン!!
彼の膝が男の腹へ入った。
「ぐっ……!」
もう一人が銃を抜く。
だが。
紅は柄杓を投げた。
カンッ!!
銃口に直撃。
銃が逸れる。
そして——
彼のタオルが振り下ろされる。
熱波。
バシィィィィッ!!
超高温の蒸気が男の顔面へ叩きつけられた。
「うわあああ!!」
視界が白くなる。
その一瞬で、彼は男の首にタオルを巻きつける。
床へ倒す。
たった
5秒。
サウナ室は静まり返った。
客の一人が呟く。
「……やっぱり本物だ」
迅は何事もなかったように言った。
「ロウリュ、続けます」
ジュワァァァァ。
蒸気がまた広がる。
「次の熱波いきます」
客たちは思った。
このサウナは——
日本一安全で
日本一危険だ。
初投稿です。
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