ぼくのはなし④
「あっという間に警察も来なくなっちゃったなー。つまんねぇ」
早川は不貞腐れたように肘をつき、欠伸混じりにそう言った。
事件が終わったというより、飽きたという顔だ。
「お前、まだそんな話しているのかよ。田端って奴に興味でもあったわけ?」
からかうように言うと、早川は苛立たしげに頭をかきむしる。
「ちげーし。知らねー子だし。たださ、あの時、落ちた死体見にいって。
目ぇ、あっちゃったからさー」
語尾は軽く、内容だけがやけに生々しい。
それ以上を語る気も、考える気もないらしい。
「まあ、いいか」
そう言って、早川はあっさり話題を切り捨てた。
机の中から取り出した雑誌を広げる。
グラビアアイドルの笑顔が、紙面いっぱいに弾ける。
「なあ、こん中だったら誰が一番好き?」
さっきまで死体の話をしていた口で、平然とそんなことを言う。
切り替えは完璧だ。人として、正しい。
どんな噂も、どんな事件も、
この学校ではあっという間に流れて、溶けて、消えていく。
それでいい。
誰も立ち止まらない。誰も掘り返さない。
こうして、あの女――田端は、
完全に「なかったこと」になっていく。
僕の罪を、誰も知らぬまま。
だらしない笑顔で、何も知らない早川は、
ページをめくりながら、どうでもいい感想をしゃべり続ける。
無造作に髪をかきあげた拍子に、
早川の左耳で、赤いピアスがキラリと光った。




