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ぼくのはなし②
事件は自殺として処理されるらしい。
警察も学校も、その方が都合がいい。前例を作らず、責任を曖昧にできるからだ。
屋上に一人でいたこと。
左手首の傷。
記録に残るのは、それだけ。
遺書はなかったが、右手に花を握っていたという。
誰かに渡すはずだったのか、ただ落とさなかっただけなのか。
花の種類すら、もう重要ではない。
まるで、自分自身に供えるみたいに。
そう解釈すれば、すべてが「きれい」に収まる。
皆が信じている物語は、こうだ。
孤独で、陰気で、友達もいない。
リストカットをする女が、誰にも気づかれず、ひっそりと死んだ。
わかりやすくて、消費しやすくて、誰も傷つかない話。
だから、誰も疑わない。
――違う。
彼女は孤独じゃなかった。
陰気でもなかった。
死にたがってなんか、いなかった。
それを知っているのは、僕だけだ。
そしてそれは、真実であると同時に、
僕が決して手放さない秘密でもある。




