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ぼくのはなし①
生徒の飛び降り自殺など前例がないらしく、学校は朝から異様な熱を帯びていた。
廊下は騒がしいのに、どこか息を潜めたような空気で、教師たちの声だけがやけに乾いて響いている。誰もが同じ話題を抱えたまま、わざと別のことを喋っている、そんな感じだ。
「なあなあ、知ってるか?」
机を寄せてきて、声を落としたつもりで落としきれていないのは早川だ。
「四組の田端だってよ。死んだ女」
得意げに囁くその目は、好奇心と優越感で濁っている。
頭は鈍いくせに見栄っ張りで、情報通ぶる癖がある。
鬱陶しいが、単純で扱いやすい。こういう時ほど、無意味に饒舌になるタイプだ。
「リスカしてたって噂の子だろ? ついにやったか~」
ヘラヘラ笑うその顔を見て、僕は自分が笑っているのに気づいた。
反射みたいなもので、意味はない。ただ、顔の筋肉が勝手に動いただけだ。
「お前、知ってんのか?」
早川が訝しげに眉を寄せる。
その視線が、やけに鋭く感じられた。
――知ってる。
少しだけなら。




