9 甘い考え(第1部・終)
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途方に暮れている暇なんてない。
そう思って息を吐き、頭を回転させる——そこで、ひとつの可能性が浮かんだ。
「……アリア、私って“5歳になったばかり”って言ってたわよね?」
「はい。間違いありません。」
「じゃあ、今日は——8月10日?」
キリアの誕生日は8月9日。
“なったばかり”と言うのなら、おそらく昨日が誕生日だ。
「はい、そうです。」
キリアが五歳の誕生日を迎えた翌日——それは初めて夜会に参加する日。そして、その夜会には——実父である皇帝も出席するはずだ。
あの皇帝の前に立ち、
「あなたの娘です」
と名乗ったらどうなるか。
無礼者として処刑されるかもしれない。
それは怖い。怖いに決まっている。
だけど——どうせ17歳で処刑される運命なら、
五歳で父親に殺されても“結末は同じ”だ。時期が早まるだけ。
それに、単なる噂を鵜呑みにするのは危険だ。
自分の目で確かめるべき——それは前世でもずっと心がけてきたこと。
もしかしたら、
もしかしたら——
皇帝は私をちゃんと「娘」として扱い、そばに置いてくれるかもしれない。
もしそうなれば、この王国から去り、
17歳で死ぬ未来を回避できるかも。
そんな甘い期待が、ふっと胸をよぎる。
「——流石に甘い考え、ね。」
そう呟いた声は、誰もいないキリアの部屋に静かに消えていった。




