2 知っている幼子
書き直す場合があります。ご了承ください。
そう呟いた直後、部屋の扉がノックされた。
「キリアお嬢様、朝食の用意ができております。食堂までお越しください」
聞き覚えのある声だった。
確かめるように、私は名を呼ぶ。
「……アリア? 入ってきて」
一瞬の間のあと、控えめな返事が返ってくる。
「……はい、失礼いたします」
扉が開き、現れたのは、記憶の中と変わらない彼女の姿だった。
――おかしい。
アリアは、私が十七歳で処刑された頃には、すでにこの家を去っていたはずだ。
なのに、どうして今、ここにいるの。
「お嬢様?」
呼ばれて、はっとする。
後ずさった拍子に足をもつれさせ、そのまま寝台に座り込んだ。
その時、視界の端で何かがきらりと光った。
反射するそれに顔を向けると――
鏡の中に、小さな少女が映っていた。
「……?」
見覚えがありすぎる顔。
丸みの残る頬も、幼い輪郭も。
――これは、幼い頃の私だ。
信じられず、頬をつねる。
痛みは確かにあるのに、映る姿は変わらない。
「お、お嬢様……?」
不安そうな声に、私はゆっくりと顔を上げた。
「ねぇ……私って、今、何歳?」
「? 五歳でいらっしゃいますよ。つい先日、お誕生日を迎えられたばかりですが……」
「……五歳」
言葉が、頭に落ちてくる。
つまり、これは。
私は――過去に、戻っている。
口を開けたまま、しばらく何も言えずにいた。




