14 最悪で最良の遭遇
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皇帝がいる場所は、大体見当がつく。
彼は人が集まる場所を好まない。喧騒を嫌う男だ。
だから、この夜会が行われているホールにはいない――はず。
恐らく、用意された賓客室に待機している。
あるいは、中庭か。
そこまで考えて、キリアは思わず吹き出しそうになった。
(ううん、中庭はあの人には似合わないわね。
だって、あの庭園は転生前に見た植物園みたいに、綺麗な花がたくさん咲いているもの。
返り血と剣が似合いすぎる皇帝が、花を愛でる趣味なんてあるはずがないわ)
そう思い直し、賓客室へ向かおうと階段を上り切った、その時だった。
角を曲がろうとした誰かとぶつかり、キリアの小さな体はそのまま尻餅をつく。
「痛っ! もう、誰よ!」
その瞬間、凄まじい殺気が放たれた。
背筋を何か冷たいものが這い上がってくる。
――簡単に言えば、相手から“恐怖”を感じたのだ。
それでも、ぶつかってしまった以上、謝らなければならない。
キリアは必死に恐怖心を押し殺し、ゆっくりと顔を上げた。
そして、目に映ったのは――
ここにいるはずのない人物が、冷たい眼差しで自分を見下ろしている姿だった。
イエローダイヤモンドの瞳。
漆黒の髪。
鍛え上げられた体躯。
そこにいたのは――
実父であり、本来会いに行くはずだった男。
皇帝だった。
「……ヴァロス・アステリ・アストラフ……」
その名を口にした瞬間、皇帝の眉がわずかに動く。
彼は数秒間、自身と同じ色をしたキリアの瞳を見つめた後、
キリアの斜め後ろにある“何か”へ一瞬だけ視線を走らせた。
そして、何かを考えるように再びキリアを凝視し――
皇帝は、低く静かな声で口を開いた。




