冥界、夫婦漫才。
秋も深まったころ。
日差しも強く、暖かな日だった。
こんな日に、
冥界では、鉄板とされる漫才のネタがある。
「それでは、あなた」
そう
冥界の女王セルピナが言うと
「な、なんだい。お前」
冥界の主ネドイスは
この鉄板ネタが嫌いではあるが乗らないわけにはいかない。
「実家に帰らせていただきます」
これだ。
冥界の女王セルピナは
春と夏
実家である、現世に帰る事が許されている。
ただ、その判断基準が得にないため
こうした、季節外れの
陽気
に、遊んでいるのだ。
「やめろよ、お前。
冗談ってわかっていてもさ
心臓に悪いんだよ」
見た目
静観な美青年である
冥界の主ネドイスは
表情を崩して懇願するしかない。
「ここは、冥界。
亡くなっているのに心臓に悪いも何もないでしょう」
そう愛する妻にいわれるも
ネドイスとしては、反論するしかない。
「僕は、死んだからこっちに来ているわけじゃない。
そもそも、
ここ何百年も実家になんか帰ってないじゃないか」
そうなのだ。
実家に帰る事を許されているんであって
帰宅は義務ではないのだ。
「いえ、今回は本当に帰ろうかな?
と」
「は?」
その言葉に、ネドイスの顔色が変わる。
「な、な、な、なんで……?」
もちろん、青い方に変わった顔色で
ネドイスはセルピナに理由を聞く
脳裏にあるのは
別居婚である。
「はい。
最近、VTuberをしている親族が楽しそうだな
と」
その言葉に、ほっとした
ネドイスは、話を続ける。
「それを、実家でやろうかと?」
「いけませんか?」
遊んだって良いじゃない。
と、ちょっと拗ねるようにセルピナは言う。
「セルピナが、配信なんてしたら人気が出ちゃうじゃないか」
「いけませんか?」
人気ものになったら困ると言う口調のネドイスに
ほこらしげに、セルピナが答える。
「どうしてもと言うのなら
ここですれば良いじゃないか」
「できるんですか?」
「そもそもが遠隔でする事なんだからできると思うよ」
ネドイスとしては、実家に帰られるよりは
どんなめんどうも
マシ
である。
「それです」
「どれ?」
「現世は、リモートワークといって
遠隔でお仕事をするのが流行っているそうです」
「そうだね」
セルピナの話に
ネドイスは相槌で答えている。
「冥界のお仕事もリモートワークできませんか?」
「……たしかに
神である僕がここにいる理由ってなんだっけ?」
「離れられないとしても
化身として、あちこちに行くのは問題ないと思うのです」
「そうだね。
僕の姉さん達や弟達はそうしている」
「……旅行にいきませんか?」
愛する妻にそう言われては
ネドイスは
一世一代の旅行(現世)に行くことに決めた。
おまけ
現世
VTuber事務所
居るんBOSS
「そういうわけで、お世話になります。叔母様」
そう礼儀正しく挨拶に来た
弟のお嫁さん(弟の子でもある)
に権力女神yu-noは答える
「どういうわけだ?
まぁ、せっかく来たんだし
「ゆっくりしていってね」」
と、配信好きのセルピナは
インターネットあるある(ゆっくりしていってね)で
返して、楽しそうにしていた。
「僕も配信
VTuberするべきだろうか?」
そう思うネドイスに
「人気が出そうじゃないか」
そう言う姉である権力女神yu-noに
「いけませんか?」
と、妻と同じ返しをして
満足した。
「?」
「ふふっ」
yu-noの疑問はともかく
セルピナの笑顔に
ネドイスは満足し
旅行に来て良かったと思った。




