表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/100

第95話「全員集合3」

マヤとリリアが撒いたボブリーズの臭気がカルゴスの感覚を狂わせる。

漆黒の巨獣は呻き声を上げ、腕を振り回して暴れた。


「今だ、押せぇぇぇっ!」


エドワードは必死に呼びかけをする。

フレディが叫び、炎をさらに燃え上がらせる。

スコットは守りを固めた。

ジョニーはまだスーパスタの光を纏っており、光の中で作られた影の刃がカルゴスの足元を斬り裂く。

パスカルはスピードアップルの効果で動きが軽くなり、仲間の吹き飛ばされそうな身体を次々と押し戻していた。

メルは適宜仲間を回復していた。

そして、チェロスが次の矢をつがえる。


「……これで貫く」


SPの種の力で研ぎ澄まされた集中が、放たれた矢を漆黒の継ぎ目へと導いた。

矢はカルゴスの右腕の付け根に突き刺さり、動きを止める。


「グォオオオオオッ!!」


巨獣カルゴスが苦悶に叫ぶ。


「みんな、これを受け取って!」


ニーナが放ったのは小さな光の実。

それは仲間たちの手に転がり込む。

スピードアップルの効果を模した即席の魔法果実だった。

それを口にしたマヤ、リリア、シーサーはさらに速さを増し、一気に距離を詰める。


「いっけぇぇぇ!」


マヤの跳び蹴り。


「こっちも合わせる!」


リリアの魔法矢。


「止めは僕が!」


シーサーの剣撃。


三連撃が同時に叩き込まれる。

しかしその目の奥が、妖しく光った。


「……甘イ……」


残穢カルゴスが呻き、足元から黒い靄が爆ぜた。


次の瞬間、衝撃波が全員を弾き飛ばす。


「うわぁぁぁっ!」


「きゃああっ!」


「こんなに弱ってそうなのにまだこんな力が!?」


吹き飛ばされ地に伏した仲間たち。

それでも、立ち上がろうとする者がいた。

ラヴォスだ。


「……まだだ。生きる力を示せ……」


漆黒の翼を広げたその姿は、もはやかつての暴君ではなかった。


「お前ら固まるなよ。ばらけろ!」


ラヴォスの鋭い声が響き渡る。


「死にたいのか! もう天使もいない!」


その警告と同時に、残穢カルゴスの口腔から黒い光が収束していく。


「来るぞ! 次は一掃する気だ!」


ラヴォスが叫ぶ。

仲間たちはふらつきながらも必死に散開する。


カルゴスの顎が開き、黒い奔流が解き放たれとうとする。

それはただの衝撃波ではなく、戦場そのものを呑み込もうとする闇の奔流だった。


「……させるかッ!」


ラヴォスが翼を広げ、闇へと飛び込む。

その背を、ミクロンが追った。


「さすがのラヴォス様でも一人じゃ無理だ! 俺も行く!」


残穢カルゴスの黒い巨腕が振り下ろされ、ミクロンは仲間の前に飛び出した。

しかし、爪は彼の胸を抉り、鋼のように硬い爪の先から血が噴き出す。


「……ぐあっ……!」


鮮血が飛び散り、地面に黒く滲む。

膝をつき、震える身体を支えながら、彼は必死にラヴォスを見上げる。


「ラヴォス様……どうか……生きてください……私の分まで……」


ラヴォスの翼が広がり、駆け寄ろうとするが、黒い奔流が彼を阻む。


「くっ……! 貴様を死なせはせん!」


しかしミクロンはかすれた声で笑った。

「私は……兵にすぎません……ラヴォス様が……未来を背負うべきです……」


爪が再び胸をえぐるように刺さり、骨の軋む音とともに彼の身体から血が溢れる。

肋骨の下で内臓が押し潰され、吐血が口元に滲んだ。


「お願い……生きて……」


最後の力で、ラヴォスの翼に触れた指は震え、すぐに力を失った。

ミクロンの身体は黒い奔流に巻き込まれ、血と肉片が宙を舞う。

戦場に重苦しい沈黙が広がる。

ラヴォスは拳を握り締め、震える声で呟いた。


「……なぜ……貴様が……」


仲間たちは言葉を失い、血の匂いと、飛び散った肉片の生々しさに息を詰める。

そしてラヴォスはヴァルサやクラウンのことを思い出す。

ラヴォスは怒りと悲しみに染まった瞳はカルゴスを睨み据えた。


「……カルゴス……貴様の罪……必ず、引き裂く……!」


「うおおおおお!! よくも! よくもミクロンを!!」


クルーが回転したボルテックスマシンと共に残穢カルゴスに激突しようとする。


「クルー! 下がれ! 貴様のようなザコが立ち向かえる相手ではない!」


その声を掻き消すかのようにボルテックスマシンが轟音と共に突進した。

そして残穢カルゴスの脚部に突き刺さる。


「うおおおおおおッ!!!」


機体は弾かれ、クルーの身体は宙を舞った。

激しく地面に叩きつけられる寸前、ジェイムズにキャッチされた。


「無茶 するな」


ジェイムズはクルーの身体を片腕で抱きとめ、そのまま跳躍して黒の奔流をかわす。


「っ、あ、アンタは……?」


「俺 ジェイムズ」


短く答えると、ジェイムズは大剣を肩に担ぎ、残穢カルゴスを鋭く睨み据えた。

クルーはまだ荒い息をつきながら、必死に立ち上がった。


「……助かった。だが、俺っちはまだ……戦える!」


「無謀と勇気 違う」


残穢カルゴスが怒声を上げ、再び巨腕を振り上げる。

戦場に、張り詰めた空気が走った。


ジェイムズは剣を構え、静かに告げる。


「……ここから 俺とお前 道 切り開く」


「……ああ!」


クルーの瞳に再び闘志が宿る。

新たに加わった力が、戦場の流れを変え始めていた。


ジェイムズの大剣が、眩い閃光を纏った。


「沈め」


振り下ろされた剣撃は、残穢カルゴスの肩口から深々と食い込み、肉を裂いた。

同時に、クルーのボルテックスマシンが横合いから激突し、抉られた傷をさらに広げる。


「グオオオオッ!!! 俺ノ……俺ガ集メタ生キ血ガ……」


残穢カルゴス絶叫し、膝をついた。

黒い奔流が霧散し、支配していた闇の圧が揺らいでいく。


ジェイムズが荒い息を吐き、剣を構え直す。


「……これで終わり あと 任せる」


その言葉に応じるように、一歩前へ進み出る影があった。

ジェットシューズで浮いてカルゴスが弱るのを待っていた真のハイエナである息子が父親を取り込んだ怪物を見据えていた。


「アンタの罪は、俺が終わらせる」


彼の両手に宿った光は、これまでの誰よりも鋭く、真っ直ぐだった。

仲間たちはその姿に息を呑み、誰一人として止めようとはしなかった。


「うおおおおおおおッ!!」


息子の叫びと共に、渾身の一撃が残穢カルゴスの胸を貫いた。

残穢カルゴス痙攣し、口から溢れた闇が空へと散っていく。


「グ……ゥ……息子……ヨ……」


残穢に覆われたカルゴスの瞳には、わずかに人の影が揺らめいた。

次の瞬間、残穢カルゴスは轟音と共に崩れ落ち、巨体は肉片となって飛び散った。

戦場に、重苦しい沈黙が訪れる。

仲間たちはそれぞれ剣を収め、安堵の息を漏らす。

その刹那、飛び散った肉片が蠢き、黒い靄を纏って再び集まり始めた。


「……マダ……終ワラヌ……」


濁った声が地を這い、腕のような影が伸びていく。


「!!」


チェロスが弓を構えるが、間に合わない。

クルーもジェイムズも身構える。


「……悪あがきは無様だ」


ラヴォスの翼が広がり、黒い影の中へと踏み込んだ。

その足が振り下ろされ、蠢く肉片を容赦なく踏み潰す。


「ギャアアアアアアアッ!!!」


断末魔が轟き、肉片もろとも黒い靄が四散する。


ラヴォスは血に濡れた翼を翻し、冷然と呟いた。


「フン……ミクロンの死を笑わせるな。二度と蘇るな」


ついに残穢カルゴスは完全に絶えた。

息子は剣を支えに立ち尽くしただ一言呟いた。


「……これで……本当に終わったんだな」


仲間たちは安堵した。


「ったく、世話を焼かせやがって」


息子は吐き捨てるように言った。


「ただ、これで父さんも少しは報われたか。バケモノに取り込まれているよりは……よっぽどマシだろう」


その時、風もなく戦場に透き通るような響きが降り注いだ。


『……ありがとう。わが子よ』


直感で父親だと分かった。


「父さんか?」


『ええ、息子よ。よくやった』


「でも……俺は結局、父さんを殺したんだ」


『違う。お前は私を救った。あのままでは、闇の獣として人々を滅ぼすだけだった……私は父として誇りを失った。だが最後に……息子を持てた誇りを思い出せた』


「父さん……」


『私は消えるが……お前の中に残る。力ではなく、心としてな』


ふっと空気が揺らぎ、天から差す光が強くなった。

息子の肩に温もりが触れた気がした。

だが次の瞬間、それは溶けるように消え、戦場には静けさだけが残った。


「ちくしょう!!!!!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ