第94話「全員集合2」
咆哮と同時に、漆黒の衝撃波が放たれた。
地面が抉れ、建物が吹き飛び、仲間たちは次々と押し返されていく。
シーサーは遠くから見ている町の住人をもっと避難するように呼びかけた。
「ぐっ……やべぇぞ! 俺のとっておきが!」
ハックが吹き飛ばされながら叫ぶ。
その時、兵士組が前へ躍り出た。
エドワードは雷を纏わせた槍を構え、仲間の盾となり、閃光の壁が張り巡らされ、衝撃波を少しでも和らげる。
「雷鳴の加護よ、我が仲間を護れ!」
フレディは炎を旋回させ、黒い靄を焼き払いながら前に立つ。
「炎は護りにもなるでござる!」
スコットは水の盾を生み出し、薬草を使い、仲間たちを回復させる。
「流れる水よ、強靭な壁となれ!」
ジョニーは影を操る直前、懐からスーパスタを取り出してかじりついた。
体が光に包まれ、無敵の輝きが走る。
そして仲間の影を繋げて一つの巨大な幕を作る。
「闇は恐怖じゃねぇ……俺たちを隠し、護る力だ! この影はお前には破れねぇ!」
パスカルは風の障壁を展開し、吹き飛ばされる仲間を押し戻すように制御した。
その口にはスピードアップルの赤い果実が。
瞬時に身体が軽くなり、風の流れをさらに操った。
「風よ、流れを逆巻け!」
その隙をつき、テイクタウン組が現れた。
まずはクルーが前に躍り出た。
彼の背中にはボルテックスマシンが回転している。
歯車が火花を散らし、魔力の渦を生み出していた。
「お、俺っちの切り札……今こそ見せてやるでヤンス! ボルテックスマシン、回転数限界突破ぁぁぁ!」
マシンが激しく唸りを上げると、周囲の風と魔力が巻き込まれ、巨大な渦となってカルゴスへと迫った。
漆黒の衝撃波とぶつかり合い、戦場全体を揺らす大爆音が響き渡る。
「うおおおおお!!!」
クルーの叫びと共に、渦はさらに加速し、衝撃波を飲み込み押し返していった。
カルゴスはよろめき、後退する。
「ウッ……コノ程度デ……!」
ボルテックスマシンの渦が収まった隙を突いて、戦場に飛び出したのはへっぽこ三人組、絆創膏。
「よっしゃぁ! 俺たちの出番だぁ!」
「いけるいける、今なら絶対勝てる!」
「お、おう……多分な!」
声を揃えた三人バン、ソウ、コウ。
合わせて絆創膏と呼ばれるが、その実力は仲間内でも微妙に頼りない。
「「「くらえ! 必殺・三人同時ペチペチアタック!」」」
「バン!」
「ソウ!」
「コウ!」
三人は残穢カルゴスの足元へ突っ込んでいき、まるで絆創膏のように貼り付いた。
しかしドスン、と音を立てて全員が同時に弾き飛ばされる。
「ぎゃあああああ!」
「いてぇぇぇぇ!」
「ひぃぃぃぃ!」
地面を転がる三人。
その隙を突いて現れたのが、ミクロンだった。
刃を指先でくるりと回し、残穢カルゴスに立ち向かう。
「……小さな勇気でも、無駄にはならない。皆が作った隙……俺が活かす」
次の瞬間、閃光が走った。
残穢カルゴスの肩口から黒い血が噴き出す。
「ぬっ……!」
呻く残穢カルゴス。
その巨体に傷を刻んだのはミクロンの刃だった。
「お前に取り込まれた者たちの無念……すべて俺が断ち切る!」
黒い靄が弾け飛び、残穢カルゴスの再生が追いつかなくなる。
「すげえええ! ミクロン最強!」
「でもでも、俺らが盾になったおかげだよな!」
「……うん、そういうことにしとこう!」
バン、ソウ、コウは肩を組み、無駄に誇らしげに叫んだ。
だが残穢カルゴスは吠える。
「下等ドモガ!!!」
しかしミクロンは攻撃を受ける。
「ぐっ」
「立て、ミクロン。お前はまだ倒れる時ではない」
ラヴォスは微笑む。
「私は天使の命を犠牲にして蘇った罪深きこの身だ。だが、その命を得てしまった以上、無駄にはできぬ」
ラヴォスの言葉には、かつての冷酷な覇者ではなく、一人の味方としての決意が宿っていた。
ラヴォスの漆黒の翼が広がる。
その背に宿る光と闇の揺らぎは、彼が悪役であった頃の象徴ではなく、贖罪の証だった。
「ミクロン。お前はただ、己の刃を信じろ」
「……はい! ラヴォス様!」
ミクロンは再び立ち上がり、闇に染まった剣を握りしめる。
その横でラヴォスは静かに構え、カルゴスを真っ直ぐに見据えた。
「我らはもう、敗北を恐れぬ。生かされた命の意味今こそ示す時だ!」
戦場の空気が震え、仲間たちもその決意に引き寄せられるように武器を構え直した。
残穢カルゴスは巨体を揺らしながら再び前進してきた。
「グォオオオオッ……!」
その圧倒的な存在感に、戦場の空気が一瞬凍りつく。
しかし、二人の少女が立ち向かう。
マヤが鋭い眼光で叫ぶ。
「リリア、私たちで食い止める! 後ろは任せた!」
リリアは笑顔を崩さず、だがその目には迷いがない。
「うん、任せて! 私たち、二人ならきっと……!」
二人は息を合わせ、カルゴスの足元へ突撃する。
鋭い蹴りと飛び道具で攻撃を仕掛ける。
しかし、巨体の衝撃波が二人を押し戻す。
「「ぐっ……!」」
その隙間を縫うように、メルが駆け寄る。
「大丈夫! 二人の背中は私が守る!」
マヤとリリアはボブリーズを投げつけ、強烈な臭いの煙でカルゴスの嗅覚を狂わせる。
「ほら、隙を作った! 今だ、マヤ!」
マヤは振り向き、リリアと目を合わせてうなずく。
「よし、二人で一気に決めるぞ!」
マヤの蹴りがカルゴスの装甲に鋭く叩き込まれる。
リリアは魔法の矢を放ち、影の中から微かな隙間を狙う。
残穢カルゴスの足が少し揺れた。
メルは二人の横に魔法陣を出現させ、回復と防御を同時に行う。
「力を合わせて……あと少しよ!」
三人の連携が、漆黒の巨獣に小さな隙を生み出した。
戦場に光と闇が入り混じり、仲間たちの士気もさらに高まる。
マヤとリリアが残穢カルゴスの足元を攻める中、戦場の端から静かに姿を現すシーサー。
「僕にも任せてください!」
そして戦場の端でチェロスが矢筒からSPの種を取り出し、噛み砕いた。
弓を引く手に力が宿る。
「……動きを封じる」
矢が放たれると、カルゴスの肩付近を正確に射抜き、闇の靄を裂くような音が戦場に響く。
隣でシーサーは剣を抜き、鋭い足取りで前進する。
「僕が近接で止めます!」
チェロスの冷静な射撃と、シーサーの連続斬撃が連動し、戦場にリズムが生まれる。
マヤとリリアも隙を見逃さず、跳び蹴りや魔法矢で追撃する。
メルはその背後で防御を張り、仲間を支えた。
残穢カルゴスは咆哮し、抵抗しようとする。
「逃がさない!」
チェロスの矢が再び装甲の継ぎ目を突き、シーサーの剣が攻撃の軌道を斬り裂く。
「チェロス。なかなかやるな」
ラヴォスだ。
「これが強さというものか」
次の瞬間、炎の熱気が町を揺らす。
そこからニーナとフラムが姿を現した。
二人は互いに目を合わせ、息を合わせるかのように手を掲げた。
フラムの掌からは火球が飛び出て、ニーナの掌からは精密に制御された炎の矢が飛び出す。
その二つの炎が空中で絡み合い、残穢カルゴスに向かっていく。
「フラム、横から援護するわ」
「狙いはカルゴスの装甲の隙間!」
ニーナの炎が小刻みに弾け、敵の動きを制御する間に、フラムの火球が猛然と突き進む。
「今だ、フラム!」
「任せて、ニーナ!」
二つの炎が合わさった瞬間、残穢カルゴスの巨体が激しく揺れた。
漆黒の靄に包まれた巨体から低いうめきが漏れ、装甲の継ぎ目からは炎に焼かれた煙が立ち上る。
「グ……ヌゥッ……!」
残穢カルゴスは闇の腕を振り回すが、足元の炎によって動きが鈍る。
炎を浴びて弱ったカルゴスの横顔を見つめ、カルロスはニヤリと笑った。
「よし、行くぞ、カルネス!」
「そうですねぇ! 奴は弱ってる。ここで倒したら実質俺と父さんでやっつけたことになる!」
二人はハイエナのように、獲物に飛び掛かる。
その瞬間、残穢カルゴスがもがく腕が振り下ろされ、二人はあっけなく吹き飛ばされた。
「ぐはっ……!」
「父さんっ……!」
地面に転がるカルロス親子。
「いてぇ、そしてあっちぃ! ニーナたちが炎の魔法なんぞ使うからだ!」
鍋も剣も手から離れ、戦場の煙とに紛れて沈んでいった。
「父さん、俺衝撃でたぶん骨折れて動けやせん……」
「僕ちゃんもだ……」
ハイエナのご馳走は、一瞬で散った。




