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第9話「死の原因」

ラヴォスの父親は嫌々カルロスの元へ戻る。


「ただいま戻りました」


「おせぇよ! どこで道草食ってたんだ!」


「いえ! そんなことは……」


「そんなことあるからこんなに時間かかったんだろうが!」


「今日の給料カットな!」


「カット!? いえ実はというと、クレームを……」


「言い訳は聞きたくない!!」


「(理不尽だ……理不尽極まりない……アンタのせいでクレームを受けて遅くなったのに……)」


 ♢♦︎♢


数日後、ラヴォスの父親はある疑問を覚えた。


「でも何故、一つずつ商品を届けるんですか? いっぺんに商品をいただき、近い所に届けた方が効率よくないですか?」


カルロスは鋭い目で父親を睨みつける。


「お前がそれで逃げたらどうする?」


「え?」


「信用ならん奴にたくさん商品を渡すのは不安だ。お前がたくさんの商品を持って高飛びしたらどうなる?」


「高飛びって……犯罪者でもないんですから……それにそんなことしたら給料が出ないからしませんよ! 私だって必死なんですから! どうしたら信用してもらえるんですか!」


「てめぇが全ての商品をお客様に届けられたなら……だな」


「そしたら結局一品届けたら戻ってくるしかないんですね」


「だいたいお前は金のために働こうとするからそんなみっともない発言をするんだ。なにが給料が出ないからしませんよ、だ。その腐った考えを今すぐ捨てて、城や僕ちゃんに貢献するという思考に変えれば自ずと言い訳も減る! お前は甘いんだよ! すぐ甘言につられるタイプだろ!」


「すみません……」


「飯でも食って頭を冷やせ!」


「ご飯をいただいていいんですか!?」


「その辺で拾ったゴミだ。ありがたく召しあがれよ。残すんじゃねーぞ」


カルロスはラヴォスの父親に無理やりゴミを食べさせる。

父親は顔をしかめつつも、逃げることもできず、ただ仕方なく口に運んだ。


この後もカルロスはエスカレートし、節度のない振る舞をした。


 ♢♦︎♢


ラヴォスと部下のクルーはラヴォスの特殊能力により映し出された過去の映像に見入っていた。

映像はラヴォスの父親がカルロスに振り回され、苦しむ日々を断片的に記録したものだ。


「最低なゴミクズ野郎っスねぇー、こやつが目の前にいたら俺っちがボコボコのボッコにしてやっすわぁ!」


クルーは拳を握りしめ、画面の中の父親の苦悶を見ながら怒りを募らせる。


「昔の記憶だから脳内監視データにはこのくらいしか保存されていなく、見てもらってるのは断片的なものだが、普段からこのように横柄な態度をとっていたに違いない! そして続きを見たまえ!」


映像が進み、父親がカルロスに給料をカットされ、身も心も疲弊している場面が映し出される。


 ♢♦︎♢


「本日も給料カット!!」


「え? なにがいけなかったのでしょうか?」


「いや、これといっては。最近、案外頑張ってるじゃねえか」


「では、なぜ?」


「んなもん決まってるじゃねぇか。気分だ。ぺっ!」


カルロスは父親に唾を吐きつけ、容赦なく屈辱を与える。

ラヴォスの父親の体は硬直し、心の奥底で怒りと悲しみが渦巻くが、声に出すことはできない。


「そんな……そんなことって……」


「つべこべ言ってる暇があるのならさっさと次の仕事へ移れ! さぁ、早く! もっと給料を引かれたいのか?」


父親は精神的にも肉体的にもボロボロになっていた。

毎日のように受ける暴力や暴言、理不尽な言いがかりに心はズタズタに裂かれ、疲弊していく。

小さなミスひとつで罰を受け、給料もほとんど発生せず、ラヴォス父親の努力は常に無にされていた。


画面越しに映るラヴォスの父親の苦悶は、ラヴォスとクルーの胸を締め付けた。

誰も手を差し伸べることはできず、ただ過去の理不尽さが映像として再生されるだけだった。


 ♢♦︎♢


配達業務も中盤に差し掛かったある日の出来事である。


「てめぇまだ半分しか配達してねぇのかよ」


「はい、遅くてすみません」


「自覚してんなら行動に移せ!」


「はい、今すぐ、行ってまいります! (これでも効率良く仕事を回し、精一杯働いてるんだけどな……これ以上早くできないぞ……)


「ほれ、なら次は今日はこの小包をスモルタウンにいるジャックさんっつー奴がいるからそいつに届けてほしい」


「はい、かしこまりました」


「ほら、早く行け!」


カルロスはまたラヴォスの父親を蹴り飛ばす。


「いてっ! (私が一体なにをしたというんだ……息子よ……待っていてくれ……)」


ラヴォスの父親はジャックへ配達を届けるが、またクレームになる。


「また怒られてしまった……いずれはこの宅配サービスの利用者は減りそうだよな。したがって売上がなければ私の給料がどんどん減っていく可能性が高い。将来性のない会社で働く必要があるのか? もう辞めてしまおうかな。辞められるのであれば……」


ラヴォスの父親はカルロスに相談する。


「辞めるだ? どの口が言う! イケメンでエリートな僕ちゃんに逆らうなど一億年早いんだよ!」


「最近給料を減らされてばかりです。給料がなければ私の息子が……」


「だから息子など知らん! 金がなければ食料がなく、飢え死にすればいいじゃないか」


耳を覆いたくなる言葉が降り注ぐ。


「飢え死にって……ひどい……」


「てめぇがそんな口聞くからじゃねぇか! とにかく辞めさせない! 辞めさせたとしてもこれまでの給料はやらんし、顔もブサイクなままだからな?」


カルロスは眉間にしわを寄せながらも嘲笑していた。


「うっ……少しずつイケメンにしてくれるんじゃ……」


 ♢♦︎♢


どのくらいかかっただろうか。

至難を乗り越え、激務に耐え、配達業務が終盤を迎えるのであった。


そんなある日、父親を自殺に追い込むある事件が起きる。


『ガシャン!!!!』


「あっ、いけね……」


その日カルロスは城の宝を誤って壊した。


「やっべぇな……城の宝物を割ってしまった……これは始末書ものだぞ……いやそれで済むならまだいい。下手したらこの城に居れねぇな……あ、そうだ! これもあいつに罪をなすりつけチャオ! あいつ何気に仕事はできてなんかうぜーからな。あと最近やけに反抗的だしこれくらいなすりつけてもいいだろ」


そしてラヴォスの父親は最後の任務の配達先から戻ってくる。

今日でようやく解放されるのかと淡い希望を抱いていた。


「ご苦労だった」


「では、顔を変えてもらって、解放していただけるんですね?」


「いや、そいつは無理な話だ」


「え?」


「なぜならお前は城の宝を壊してしまったのだからな」


父親の胸に凍りつくような恐怖が走った。

理不尽にもカルロスの過失をラヴォス父親に押し付け、解雇と給料未払いが決定されたのだ。

その瞬間、父親の希望は粉々に砕け散った。

長い間耐え続け、息子のために生き、あらゆる屈辱に耐えてきたのに……

ラヴォス父親は、城の一角で静かに自ら命を絶った。


父親がいなくなり、俺は孤独になった。

施設から出ても、寂しさを抱えながら自給自足の生活を余儀なくされた。

父親が自殺した理由を、幼い俺は知らなかった。

だが数年後、真実を知ることになる。

ギブタウン付近で、汗を流しながら配達を続ける青髪の男を目撃した。

その男を尾行すると、怪しげな金髪の男がいる城にたどり着いた。

それは青年のことだ。

もしやと思い、奴隷されていた人の子供だということを告げると、その男はカルロスということを知り、父親を弄んでいたこと、不祥事をなすりつけたことなどをペラペラと話した。

そしてあの時のカルロスの言葉が許せなくて今でも脳裏に焼きついている。


「ああ、アイツか。そんな奴もいたな。奴には金も報酬もあげず、さらには僕ちゃんの不祥事もなすりつけることができた。そして結果的に僕ちゃんの仕事が無償で終わった。アイツはあの後死んだのか。どんな奴だったか詳しく覚えてないが、哀れな奴だな。あとは優雅に暮らすか。いやぁ、清々するわ」


悲しみ恨み憎み、カルロスを倒すことを決意して毎日修行した。

俺はカルロスを倒すためにテイクタウンに城を築き、司令官として指揮を執る。

何度も関係のない町を襲撃し、チェロスをはじめ兵士たちを集めた。

最初は躊躇もあったが、父親の仇を取ることしか頭になく、目の前の世界は狭くなっていった。


記録や進捗を残すために日記も書いた。


父親を死に追いやった憎き男を、俺は必ず討つ。

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