第88話「KYANITE3 〜時の水晶〜」
青年が配達を完了し、城に戻った時のこと──
『ドン!!!!』
そして閃光が走り、カルロスたちの目が眩む。
カルゴスが魂を移し、自我を宿したその水晶は、外界の揺らぎに敏感だった。
ラヴォス軍による爆破の衝撃は、その水晶の怒りを呼び覚ますには十分すぎた。
淡い輝きだったはずの水晶が、見る間に血のような赤へと変わり、脈打つように不穏な光を放ち始めた。
その赤い光は、ただの怒りを示すものではなく、水晶が持つ特性でもある赤く輝いた状態で触れた者は、未来へ送られるといったものだ。
カルゴスは、ラヴォスにカルロスを倒させることを思いつく。
しかし、カルネスやチェロスによる攻撃で既に満身創痍だったラヴォスは、青髪の青年の息子によって倒され、その後処刑されてしまった。
♢♦︎♢
そして、カルロスたちは未来から元の世界に戻ったが、カルゴスにより時の水晶の中に吸い込まれてしまった時のこと──
「お前が水晶を拾ってくるのも、未来の世界へ飛ばしたのも、全ては私が仕掛けたものだ」
「なに!?」
「遡ること古の時代。お前たちの住む島がまだ広かった頃だ。私は世界一の富豪であり、世界をこの手で掴むため日々、奮闘していた。法に縛られず全てが自由な世界を創るためにな。私はほとんどの島は制圧してきたが、一つだけ私の交渉に応じない島があった。そこが今はギブタウンと呼ばれている所だ。その後、島を巡り戦争が起こった。そして私はその戦争に勝利し、ギブタウンも我が配下となったのだ」
「そ、そんなことがあったのか……」
「全てが順調だと思ったが、ある時ギブタウンの中に私に反抗してきた盗っ人の小僧が現れた。その小僧は仲間を集め、次第に我が配下を次々と滅ぼした。ついには我が城まで崩壊させ、私を滅亡まで追い込んだのだ。その後、城が崩壊したと同時に、城にあった時の水晶が……時の水晶が私と同じ方向に飛ばされた。そしてチャンスだと思い、その水晶に入り込んだ」
「……そんな昔から時の水晶は存在していたのか」
「時の水晶を作ったのは私だ」
「なんだと!?」
「(厳密にはエレクトから盗んだものだが、細かな説明は面倒だし説明せんでいいか。)時の水晶を作り、過去と未来の世界から物資を手に入れていたからな。(水晶に入り込んだ後は、過去や未来へ好きな所へ移動できるようになったのだ。)時の水晶だが別世界に行こうにも私には力が残っていなかった。だから私は今ある魂を自分の魔法によってこの水晶に移したのだ。水晶が多少砕かれても、完全に消滅しなければ私の魂は消えることはない。私はその後、人気の多い場所に瞬間移動した。するとお前が現れ、水晶を拾い城に持っていったのだ。とても運が味方したと思った。なぜならお前は我が一族の身。私と同じ冷酷な奴である可能性が高いから相応しいと思い、お前に水晶を託すことにした」
「そうか、思い出した。出掛けたときに僕ちゃんが持って帰ったんだ!」
「私はしばらく様子を見ることにした。ギブタウンの連中を滅ぼせる奴かどうかを。するとお前はラヴォスの父親を捕まえ、奴隷にし、働かせるだけ働かせて奴を死に追いやった。私はこの時、お前なら使えると思い、お前に力を与え私の野望を叶えられるかもしれない。そう考えていた。だが、それは思い違いだったようだ。なぜならその後にやって来たそこにいる青髪の男にはどういう訳か、仕事を終わらせたら奴隷から解放させてしまったのだ。私はそれを見て失望した。ギブタウンを滅ぼせるのはお前ではなかったと。すぐにでも別の奴を探そうと考えたが、急にここから離れたのであれば、疑われ、次に見つけられた時に、水晶を破壊されかねない。だからどうにかしてお前を始末し、その後に移動しようと考えた。そして私はお前を未来の世界へ飛ばしたのだ」
「何故、カルロスさんを未来の世界へ?」
「カルロスによって、ラヴォスの父親が死んだ後、息子が父親の仇をとろうとしていた。ならば未来の世界でラヴォスは今以上に強くなってると想定し、カルロスたちを未来の世界へ飛ばして、ラヴォスに倒させるつもりだった。しかし、お前たちは未来の世界から帰ってこれてしまった。しかも青髪のてめぇの息子がラヴォスを倒した。そうとなれば、もはや私自らが始末するしかないと思い、お前たちをここに呼んだのだ。そして今、お前たちは私の手によって滅ぼされるのだ」
「自分の理想の世界を創るために、人々を道具のように利用し、使えなくなったら死に追いやる。私はあなたがやってきたことを許すわけにはいきません!」
「そうよ! 私たちは絶対ギブタウンの人々をアンタから守ってみせるわ!」
「フン……そうだ、カルロスよ、お前はこの世界に興味はないか?」
「なにを言っているんだ……?」
「私と共にこの世界を手にしてみないか? お前は極力働かずに楽して生きたいのだろう? 今なら、私のもとへ来ればお前にも世界を与えてやろう。私と共に来れば苦労もしない、金は腐るほどあり、土地も女もお前に与えてやるという話だ。悪くないではないか」
「カルロスさん!!」
「バカルロス!!」
「ん~まぁたしかに、僕ちゃんが働かずにそれだけのものが手に入れるならばそれも悪くないなぁ~! なんせ僕ちゃんは楽して生きたいからな!」
「カルロス! いくらバカでもカルゴスに騙されてるってことくらい分かるわよね!」
「ならば答えは決まったな……」
「だがな。僕ちゃんはできればその世界を一人で手に入れたいものだ。僕ちゃんを殺そうと考えた奴と共に世界を手に入れようなんざ、一生ゴメンだ。たとえご先祖でもあってもな。だから断らせてもらおう」
「カルロスさん!」
「カルロス……! アンタ昔よりほんの少しだけマシになったのね……うまい話だからすぐに乗っかると思ってたわ」
「だからお前は、僕ちゃんを最初からバカみたいに言うな!!」
「それが答えか……ならばカルロス諸共、この大魔法使いカルゴスによって滅亡させてやる!! この時の水晶と共にお前たちを完全に消し去ってくれるわ!!」
そしてカルゴスは三人に襲いかかる。
逃げ回っていたが、体力の限界もある。
青年たちはなんとかこの状況を打破する秘策を考える。
ここは水晶の中、静寂が支配する空間。
青年はなにもないように思える壁に着目した。
光り輝く水晶の壁を見てある作戦を思いついたのである。
「カルロスさん、あそこにオカイモキ魔法を」
「そうか、そういうことか!」
「はい、見た感じ奴は弱っている。少しでもダメージを入れれば倒せるはずです」
「それで僕ちゃんが気を引けばいいのだな」
「はい」
「ツヤナヤイ……ツヤナヤイ……オカイモキ……オカナイケビ……てぃ!!」
カルロスが水晶に向かってオカイモキ魔法を撃つと、それが反射して向かいにいたカルゴスに魔法がかかった。
「なんだ!? 顔が!?」
カルゴスは水晶に反射される不細工な姿を見て驚いている。
「「今だ!!」」
青年は小型ミサイルを飛ばし、ニーナは攻撃魔法をカルゴスにかけた。
そしてカルゴスは倒れた。
「バカな……お前たちにやられるのか……私はまたあの時のように敗れてしまうのか……私の計画が……世界が……フッ……まぁいい……カルロスよ……お前が再び、悪や自分の欲望に堕ちたその時、私は必ず復活し、今度こそお前を始末する……せいぜい今のうちに、この世界で楽しく生きるんだな……フハハハハハハハハハ!!!!」
♢♦︎♢
そしてカルゴスが復活した今に至る──
カルゴスは昔制圧したパオンタウンのことを思い出していた。
「そういや昔あんなことがあったな。封印させられてたから記憶が曖昧だったが、思い出してきたぞ。俺はあの小僧にやられ、その後なんとか生き延びるも、不細工にされ、あのバカに封じ込められていたのか……腹が立ってきたな。顔はなんとか魔法で戻したが……覚えてろよ、カルロス!!」
カルゴスは断片的な記憶しかなかったが、思い出してきた。
そして怒りと復讐心に満ち溢れた。
過去の屈辱を思い出すたびに、その感情はますます強くなった。
カルゴスは遠くからパオンタウンを見下ろしていた。
そこには、穏やかで平和な街並み、そして中央には立派な噴水がある広場。
その周囲には露店がひしめき、子供たちが笑いながら駆け回っている。
「フン……くだらん……」
ニーナは薬屋で手当てを終え、カルゴスのもとへと向かった。
ちなみにカルロスは戦力外のため、お留守番である。
そしてカルゴスとの対峙──




