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第87話「KYANITE2 〜ギブタウン〜」

「さっきから俺の部下たちが不審な行動をとったり、物が消えたり、建物が破壊された……そのネズミの正体はやはりてめぇだったか」


その背後には淡く光を放つ時の水晶が置かれている。

それは今にも世界を歪めそうな危うさを秘めていた。


「俺に逆らう奴がいたとは驚きだ。まずはその勇姿を称えよう。だが、俺は極めて冷酷な奴だ。それは言わなくても分かるな? 俺は世界を支配し、この世の全てを手に入れ、自分だけの楽園を創る。それを阻むてめぇらに、この世界で生きる資格はない!」


空気が一変する。

ついにカルゴスとの決戦の時が訪れた。

カルゴスが駆け出すと、その速度は視界が追いつかないほどで、ゴードンたちは反射的に身構えるしかなかった。

力の差は歴然──


「くっ……!」


ゴードンの剣が弾かれ、衝撃で腕がしびれる。

カルゴスは膨大な魔力を持つ大魔法使いであり、近接戦闘でも圧倒的に強い。


「強い……!!」


メリーは後退しながら魔法弾を放つが、カルゴスは一歩も動かず手を振るだけでそれをかき消した。


「こんなの、どうすればいいんだ!!」


クリスは泣き叫ぶ。


「落ち着いて!! 冷静に相手の攻撃を見るんだ!!」


ゴードンたちは攻撃をかわしつつ、逃げ回り、物陰に隠れる。


「チッ、ちょこまかと逃げやがって!! 隠れても無駄だ!!」


カルゴスが放つ衝撃波が、次々と遮蔽物を破壊していく。

石壁が砕け、柱が折れ、玉座の間はみるみる荒れ果てた戦場へと変わっていく。


「クッ……このままではここも破壊されてしまう!」


「ねぇ、有効かどうか分からないけど、これ使ってみない?」


メリーが道具袋を漁り、銀色に光る魔法の鏡を取り出した。

普段は防具の代わりに持ち歩く魔除けだが、相手がカルゴスに通じる保証はない。


「これが奴の魔法に効くか……」


「時間がない! 一か八かだ……」


「コソコソするな! 全員まとめて消してやる!!」


魔力が渦巻き、玉座の間が青白く染まる。

カルゴスが最大出力の魔法を解き放った瞬間、ゴードンたちは魔法の鏡を突き出した。

鏡面が光り、解放された魔力を吸い込み、そして反射する。


「……なに!? ば、バカなッ!!」


次の瞬間、跳ね返った魔法が一本の光線となり、カルゴスへと直撃した。


「ぐわああああああああああああああああああああああ!!!!」


轟音と共に、玉座の間が激しく揺れた。

カルゴスの身体が吹き飛び、壁を突き破り、そままま外へ弾き飛ばされる。

吹き飛ばされる直前、カルゴスは時の水晶を手にしていた。


「しまった! 時の水晶が!!」


「それよりも危ない! 皆、大丈夫!?」


だが問いかけに答える余裕もなく、天井が大きく崩れ始める。

反射魔法に耐えきれなかった城全体が、軋みをあげながら崩壊を始めた。

ゴードンたちは互いに手を伸ばし、瓦礫の雨が降り注ぐ中を必死で逃げ抜ける。

そして、外へ飛び出した瞬間、背後で城が崩れ落ちた。

視界には、粉塵を撒き散らし瓦礫の山と化したカルゴスの城が広がっていた。


「皆、無事か?」


「うん、怪我はないよ」


「私たち、本当にカルゴスを倒せたのね」


「ああ」


「やった! ついにやった!!」


その後、ゴードンたちはクリスタルタウンを訪れ、エレクトの日記を返却し、時の水晶を取り戻せなかったことを正直に伝えた。

そして、ゴードンの故郷エクネ・ウルファでは、暴君カルゴスが倒れた知らせが町中に広がり、長い恐怖から解放された人々が歓声を上げていた。

やがてゴードンは町を救った英雄として称えられ、多くの人が彼を讃えた。

町には彼の銅像が建てられ、その行動力を象徴するかのように、エクネ・ウルファは ギブ(与える)タウン と呼ばれるようになった。

いつかまた、この地が危機に瀕する日が訪れても、その時は新たな英雄が救ってくれるだろう。

人々はそう信じ、復興と繁栄へ歩き始めた。


ギブタウンはその後、まるで新しい息吹を得たかのように発展していった。

彼の行動は町をより良い場所にするための原動力となり、その後のギブタウンはさらに発展を遂げていった。


そう、あの傲慢男が来るまでは──


 ♢♦︎♢


吹き飛ばされたカルゴスは瀕死状態に陥っていた。


「俺の魔法が強力すぎたせいで……跳ね返った魔法によりこんなことになってしまうとは……まさかあんな鏡を持っていたとはな……このまま……死ぬわけにはいかない……そうだ水晶……こんなことになるなら、早めに水晶の修復をすべきだった……もう命は尽きようとしている……ならば!!」


カルゴスは魔法を使い、もうすぐ朽ちるであろう自分の魂を、なんとか時の水晶に移し、時の水晶に自我を持たせたのだ。


「俺はまだ滅びない!! いつの日か必ず、世界を支配する!!」


カルゴスは水晶に魂を宿すと、身体は完全に崩れ去り、ただ一つの水晶だけがその場所に残った。

水晶は淡い光を放ちながら静かに地面に転がった。


 ♢♦︎♢


それから長い年月が経った──


「カルロスさーん、ここに城を建てるんですか?」


「ああ、そうだ。僕ちゃんはこの地に城を建てて、スーパーエリートとして、人生を歩むんだ」


「スーパーエリートか何か知りませんけど、城建つまでに結構時間かかりますよ」


「かまわん。だがテメェらには大金つぎ込んでんだ。ちゃんとしっかり作れよ」


「カルロスさん、ここに何か錆びれた銅像があるんすけど、どうします?」


「ああ? なんだその汚ねぇ像は。んなもん、ただのゴミだろ。どっかテキトーなとこに捨てとけ」


こうして、ギブタウンに新たな城が建ち、新たな物語が始まろうとしている。


 ♢♦︎♢


城の立ち上げからしばらくして──


「城を建てたはいいものの、この先どうすればいいか分からんぞ。せっかく大金を注ぎ込んでこんな豪華な城を建てたのに、これからどう発展させるか全く見当がつかない。起業なんてしたことないし、やり方がまったく分からん。リスクもありそうだし、間違ったやり方は避けたいところだ。やはり、有能な奴を何人か雇って、この城を発展させるのが一番か。僕ちゃんは面倒なことはやりたくないから、そいつらに丸投げして、ある程度発展したら解雇すれば、僕ちゃんだけでここまでやってきたってアピールもできるし、今後入社する部下にも慕われるだろう」


しかししばらくして城に戻ったカルロスは驚愕した。

発展は驚くほど進んでおり、業務内容も定着していて、解雇できる状況ではなかった。

さらに、新たに何人かの社員が入社していた。

それが、マヤやリリアたちだった。


「にしても、勝手に人も雇ってるのか?」


カルロスは不満げに呟いた。


「どなた?」


「ああ、解雇されたカルロスさんだよ」


「そうだ、スーパーエリートの……って、解雇だと!? どういうことだ!? 解雇はお前らの間違いじゃ!?」


「間違いではありません。会議にて多数決で決定しました。姿も見せないのでもう必要ないかと」


カルロスは怒りがこみ上げてきた。


「なんだと?」


「カルロスさん、あなたはまったくこの城に関与せずに私たちが全てを管理してきました。あなたの存在が無くても、私たちはここまで発展させることができたのです」


カルロスは一瞬言葉を失ったが、すぐに意地を張って反論した。


「そんなことはどうでもいい! 僕ちゃんは城主だ! 僕ちゃんはスーパーエリートなんだ! クソ……意識高い奴を雇ったせいでそんなところまで話が進んでいたとは!」


従業員ははため息をついた。


「今の状況を見てください。あなたの傲慢な態度では、社員たちもついてきません。このままでは、城の未来は危ぶまれます」


「じゃあどうすればいいんだ?」


「ゼロからのスタートとなりますが、まずは社員たちに向き合うことです。彼らの意見を聞き、共に働く姿勢を見せることが大切です。そしてあなたのリーダーシップを示すために、責任を持って業務に取り組んでください」


カルロスはしぶしぶ頷き、真摯に社員たちと向き合うことを決意し、再び入社した。

時間が経つにつれ、カルロスは徐々に信頼を取り戻し、社員たちと協力して城をさらに発展させていくことができた。

そしてついに、カルロスは再び城主の座に戻ることができた。

しかし城主に戻った途端、彼の傲慢さがエスカレートした。


「あなたが再び城主に戻ることができたのは一人の力ではなく、全員の協力があったからです。そのことを忘れないでください」


「再びこの城の頂点に立てたのは僕ちゃんが頑張ったからだ! 僕ちゃんは偉いんだ! だからテメェらみたいな下っ端が意見するな!」


カルロスは自分の権威を誇示することにばかり躍起になっていた。

社員たちはその態度により士気が下がり、離反し始めた。

その結果、城の業績も停滞し始めた。


「なんでだ? 僕ちゃんが戻ってきたのになぜうまくいかないんだ? もうこうなったら……」


カルロスは苛立ちを隠せなかった。

そしてラヴォスの父親の奴隷などが始まる。


 ♢♦︎♢


「豪勢な城の割には高そうなオブジェとかがないんだよな。その辺の町に出向て買ってくるか。もちろんその金は営業利益から出しとくか」


するとカルロスが出向いた町にポツンとダイヤモンドのようなものが転がっていた。


「おっ、いい物発見⭐︎」


カルロスはそれを持ち帰り、城外へ設置した。


「やはりこういうのが必要だったんだ。豪華なオブジェが城を引き立ててくれるんだよな」


しかし、そのダイヤモンドのようなものがただの装飾品ではなく、カルゴスの魂が宿った恐ろしい水晶だということにカルロスはまだ気づいていなかった。

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