第85話「NEXT3 〜カルゴスの記憶〜」
「何事だ!」
「大変です! カルゴスの手下が時の水晶を奪い来ました!」
「なんだと!? どうして時の水晶の場所が分かった?」
実は、時の水晶のある場所へ案内中、ベトレイがゴードンたちに気づかれないよう尾行していたのだ。
「時の水晶か。なにか役に立ちそうだ。あの水晶を奪い、カルゴス様に渡すとするか」
ベトレイは、ゴードンがルタスの家に戻ったタイミングで時の水晶を奪いに来たのだ。
急いでゴードンたちは時の水晶がある場所へ向かったが、既に時の水晶はなかった。
そしてその場所にカラスの翼を生やした男がいた。
「カァ、カァ、遅かったな。ここにあった水晶は既にカルゴス様の所へ向かった」
「なんだと!!」
「我はカルゴス・ブランドー様の部下、クロー!この町にあるものは、あらかた貰っていくぞ。光り物には目がなくてな」
「そんなことさせない!」
クローは空を飛びながら、ゴードンたちに襲い掛かった。
「おい、クリス! なにしている! お前も協力しないか!」
「だ……だって……怖いよ……」
「あの人たちは町を守る為に必死に戦ってるのだぞ。なにか一つくらい役に立って見せろ」
「そんなこと言われても……う~ん……」
どうすればいいか分からないクリスは、とりあえずジャンプして着地し地震を起こした。
「カァ、カァ!! バカめ!! 我は空を飛んでいるのだぞ!! 地に足が着いてなければ地震も意味がないだろう!!」
「なにをしているのだ! クリス!」
「うぅ……」
すると、ゴードンが天井を見上げ、なにかに気づく。
「クリス! 何度も地震を起こしてくれ!」
「え!?」
「どうして、ゴードン!? 相手は空を飛んでるのよ?」
「カァ、カァ、バカは一人だけかと思えばお前もか。お前のような奴、カルゴス様の相手ではないわ!」
クローが空中攻撃を繰り返す。
そしてクリスも地震を繰り返し起こす。
しばらくすると天井から大岩が降って来た。
「な、なんだぁ!?」
大岩はクローの頭に直撃した。
「ぐわぁぁあああああ!!!!」
クローは倒れたのであった。
「そっか! 地震で天井にあった大岩が少しずつ移動したのね」
「ありがとう、クリス。君のおかげで助かった」
「僕がやったの?」
クローを倒し、ルタスの家に戻ったが、町人がやってくる。
「すみません……カルゴスの手下たちにエレクトの日記が盗まれてしまいました」
「なに!? 急いで、水晶と日記を取り戻すんだ!!」
時の水晶と日記を取り戻す為、ゴードンたちは町を出ようとした。
「待って!!」
「ん?」
「ぼ……僕も連れてって……くれない?」
「クリス……大丈夫なのか?」
「クリス、行ってこい。ゴードンさんたちの役に立ち、成長してくるのだ」
「はっ……はい!」
こうしてクリスはゴードンたちについて行くことになった。
♢♦︎♢
一方その頃──
「カルゴス様、時の水晶というものを持ってきました」
「時の水晶?」
ベトレイはカルゴスに時の水晶を見せた。
「こっ、これは……」
「ご存じなんですか?」
「あっ、ああ……」
「それと、この時の水晶にまつわる日記も見つけました。こちらも渡しておきます」
「日記? まぁ良い。今回はご苦労だった。下がっていいぞ」
「はっ!」
カルゴスは時の水晶と日記を受け取った。
「これは……エレクトが作ってた試作品か。思えば、俺はあいつの作ったこの試作品に触れてこの世界へやってきたんだったな。それにしても、エレクトが書いてた日記か。読んでみるか。エレクト……奴は最も優秀なエンジニアであった。まさか再びその名前を聞くとはな」
そしてその日記を読み始めた。
すると、カルゴスは昔の記憶が蘇ってきた。
これはカルゴスの記憶だ。
♢♦︎♢
俺はロボットやマシン開発を行う社員の一人だった。
出世しエリートになる為なら、どんな手段すらも使う。
自分の開発した物がうまくいかなければ、性能の捏造。
他社の物が優れていれば強奪。
手荒な事はなんでもやった。
そんな中、一人の男が目に入った。
それがエレクトだ。
奴は俺と同期で、俺が今まで見てきた中でも最も天才だった。
目の上のタンコブとでも言うべきか。
俺にとって奴は邪魔な存在だった。
そんなある日のことだ。
奴がなにやら大ごとのように騒いでいた。
なんでも近いうちに『あと一週間の内に大規模な災害が起きてこの世界が滅ぶ』だとかなんとか。
くだらん。
なにを根拠にそんなことを言い出したのか。
エレクトは世界が滅ぶのを見越してタイムマシンの開発をしていた。
世界が滅ぶとか、そういうことはどうでもいいが、タイムマシンそのものが実現できれば、もはや世界の歴史すらも自分の思いのまま操ることができるかもな。
もし奴が本当にタイムマシンを完成できれば、それを奪ってみたいものだ。
そうすれば俺は世紀の発明者として名が語られることになる。
そしてスーパーエリートとして後世に伝わる偉大な人間になれる。
その後、エレクトのタイムマシンが完成したという噂を聞いた。
それを聞いた時、耳を疑った。
まさか本当にタイムマシンが実現したのかと。
真相を確かめるべくエレクトがいる場所へ移動した。
「久しぶりだな、エレクト」
「くっ……しまった! カルゴスか!」
「しまった? なにか俺に隠してることでも?」
「なんでもない! 早くこの場から去れ!」
「おいおい、そう言うなよ。エレクト、なにやらすごい物を作ったらしいじゃないか」
「待て! アレはなにがあってもお前には渡さんぞ! アレがなければ世界の崩壊から逃れられない!」
「例のタイムマシンか。大規模な災害が起きるなど、一体なにを根拠に……」
「大災害は本当に起こるのだ! もうすぐ我々は生きていけなくなる!」
「ふん……もういい」
そして俺はタイムマシンを見つけた。
見た目は、機械で作られたとは思えないダイヤモンドのようなものだった。
「本当にこんな物がタイムマシンなのか?」
「やめろ! カルゴス!」
「なんだ!?」
タイムマシンに触れた途端、俺は光に包まれた。
しばらくすると、何もない平原の場所へ飛ばされていた。
どこへ飛ばされたのかは分からないがとりあえず歩いてみる。
すると、人や町がまるで中世の時代の様に見えた。
あまりにも古い。
その光景を見てタイムマシンで過去の世界へ飛ばされたのだと確信した。
そしてあろうことか、さらに信じられないものを目にする。
それは人の手から、火が発射されたのだ。
目に映ったものが非化学的すぎて衝撃を受けた。
どうやらこの世界にいる人間は魔法というものが扱えるらしい。
魔法なんてものは、おとぎ話でしか存在しないものだと思っていたが。
俺は頭が混乱しつつも、この後どうすればいいか考えていた。
タイムマシンを使用後、タイムマシン自体がなくなっていた。
となると元の時代へ帰れる可能性が極めて低い。
そもそもタイムマシンの使い方すらロクに分からずに起動してしまったのだ。
タイムマシンを見つけても今の俺では扱えない。
帰れる可能性が低いならば、覚悟を決めてこの世界で生きるしかない。
そう思ったのだ。
それから長い時間が経ち、俺は魔法というものを学び、魔法を扱えるようになっていた。
魔法だけではない。
この世界にある素材を使い機械となるものを次々に生み出した。
そして俺は自分の技術力を使い、金や武力を手に入れた。
絶対的な権力を手にし、今や世界は俺の力で支配されていった。
「この俺が持つ力に抗う愚かな国もあったが……全てねじ伏せてやった! これからどんな敵が現れようと、我々に敵う相手などいない! 俺は目的が達成できるならば、どんな手段でも使う!」
そして今に至る。
♢♦︎♢
エレクトの事を思い出しつつ、しばらくしてカルゴスは日記を読み終えた。
そして時の水晶に触れた。
しかし何も起こることはなかった。
「なぜだ!? まさか……」
カルゴスは時の水晶を見つめる。
「恐らくこの日記に記されているAIブロックがなんらかの影響で壊れたのであろう……これさえ直せれば時の水晶を扱える。しかし、この水晶と日記を取り返しにゴードンたちはこちらへ向かって来ているはずだ。うむ……時の水晶の修復には時間が掛かりそうだ。修復方法も分からずじまいだしな。仕方ない……今は修復作業を保留にして、奴らの始末を優先するとしよう」




